【観光マーケティング解説】デジタル広告戦略と成功事例

キクコト 編集部

こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。

今回は「観光マーケティング」について解説します。

コロナ禍を経て、インバウンドを中心に観光需要が回復しつつある現在、地域の魅力を効果的に伝え、観光客を引きつけるための観光マーケティングが非常に重要になっています。

本記事では、観光マーケティングの基本から、ターゲット設定と市場分析、デジタル広告の活用方法、そして成果の測定と改善まで、具体的な戦略を詳しく解説します。

地方自治体のマーケティング担当者の皆様が、観光マーケティングで成功するためのヒントを得られるよう、当社独自のソリューションも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


観光マーケティングとは、観光地や観光サービスを効果的にプロモーションし、観光客を引きつけるための戦略や手法を指します。地方自治体にとって、地域の経済活性化やブランドイメージの向上に直結する重要な活動です。

観光マーケティングの重要性



観光マーケティングの成果は、地域経済に大きな影響を与えます。

観光客が増えることで、宿泊施設、飲食店、観光施設などの利用が増加し、地域全体の経済が活性化します。

また、観光客の満足度が高まることで、リピーターや口コミによる新たな観光客の獲得にもつながります。さらに、観光マーケティングは地域のブランドイメージを向上させ、他の地域との差別化を図るためにも重要です。

観光庁の調査データによると、2023年の旅行消費額は、28.1兆円となりました。日本人の海外旅行消費(0.9兆円)を除く日本国内旅行の総額は27.2兆円と見込まれます。

出典:国土交通省 観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(確報)」

また、下表のとおり、日本人国内宿泊旅行、日本人国内日帰り旅行、訪日外国人旅行、いずれも2022年から2023年にかけて大きく回復しており、日本人国内宿泊旅行消費額は過去最高となりました。

出典:国土交通省 観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(確報)」



活況を呈しているとともに、各観光地で観光客を呼び込むための激しい競争が起きています。このような状況下で自分たちの地域を観光先として選んでもらうために重要になるのが、観光マーケティングです。


成功するための基本要素



観光マーケティングで成果を出すためには、以下の基本要素を押さえておくことが重要です。

誰に向けてプロモーションを行うのかを明確にすることが重要です。ターゲットオーディエンスを特定することで、効果的なメッセージを効率的に届けることができます。


観光地の魅力を伝えるために、コンテンツを開発します。

ここで言う「コンテンツ」には、2種類あります。

・訪れてほしい地域の観光資源、観光スポットそのもの、という意味でのコンテンツ

・上記の魅力を伝えるためのホームページや広告物などのコンテンツ

このどちらも重要です。何が魅力的で、それがどう魅力的なのか、写真や動画、ブログ記事など、必要に応じて様々な形式で情報を発信する必要があります。


コンテンツをユーザーに届けるためにOOHや雑誌、テレビなどのオフラインメディア、SNSやウェブサイト、メールマーケティングなどのデジタルツールを活用して、ターゲットに向けて広範囲かつ効率よく情報を届けましょう。


上記3点それぞれについて、次項から詳しく解説していきます。


ターゲットの特定


およそマーケティングにおいて、ターゲットを特定することは非常に重要になります。

観光マーケティングにおけるターゲットとはつまり、プロモーションの対象となる観光客のことです。例えば、家族連れ、若者、シニア層など、観光地の特性に合わせてターゲットを設定します。

ターゲットを明確にすることで、効果的なメッセージを届けることができ、プロモーションの成功率が高まります。

このターゲット設定の精度が、観光マーケティングの成否を左右すると言ってよいでしょう。間違ったターゲットに対してプロモーションを行っても成果は出にくくなります。


市場調査の方法


「自分たちの地域の観光資源が何か」、を考えれば、ターゲットがファミリーなのか若年層なのかシニア層なのかという大きな傾向は、ある程度推測できることが多いです。

しかし、

・そのターゲット設定は正しいのか

・より細かい属性・性質は何なのか

・ターゲットは実際に何を望んでいるのか

などは推測で判断することは難しいです。

ターゲットを詳しく理解し、効果的なマーケティング戦略を立てるためには市場調査を行います。市場調査の方法としては、以下のような手法があります。

観光客に対してアンケートを実施し、ニーズや満足度を把握します。

観光客や地元の関係者にインタビューを行い、具体的な意見や要望を収集します。

SNSやウェブサイトのアクセス解析を行い、観光客の行動パターンや興味関心を分析します。

推測や勘だけに頼らず、これらの調査に基づいて戦略を立てることで、プロモーションの成果に大きな差が生じます。

上記の市場調査を含む、ターゲットの調査、検討、設定方法については以下のコラムでも詳しく解説しています。PEST分析、STP分析、SWOT分析などの基本的な戦略設計の手法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。



ペルソナ作成の重要性


ペルソナとは、ターゲットオーディエンスを具体的にイメージした架空の人物像のことです。ペルソナを作成することで、マーケティング戦略をより具体的かつ効果的に立てることができます。

例えば、30代の子育て中の母親をターゲットにする場合、そのペルソナの

・ライフスタイル

・価値観

・旅行の目的

などを詳細に設定します。これにより、ターゲットに響くメッセージやプロモーション方法を見つけやすくなります。

ペルソナの詳細設定については以下のコラムを参考にしてください。






観光資源の開発・発見・育成


観光マーケティングにおいて、「誰にどう伝えるか=広告物」は非常に重要ですが、「何を伝えるか=発信コンテンツ・観光資源」はさらに重要です。地域の観光資源の開発・発見・育成は、観光マーケティングにとって最も重要と言っていいでしょう。観光資源が無い、もしくは魅力的でなければターゲットが観光に来ることはありません。

歴史ある神社仏閣のような観光資源を今からすぐに開発することはできませんが、地元の名店を見つけ出したり、地元の人だけが良く知っている観光スポットを取り上げたり、既にある観光名所にもっと楽しめるようなコンテンツを用意したりするなど、地域の人々と連携した開発が欠かせません。

これには地道な努力・根気が要ります。

筆者が某県の観光関連部署とマーケティング業務で協業した際の担当者は、日々、県内のお店を自分の足で回り、観光名物やスポットの研究を行い、県を訪れる企業の担当者や著名人の対応などを行っていました。考えられる限りあらゆるコネクションを育て、大切にすることで、観光資源の開拓と、その後のプロモーションにつなげており、結果、県の観光消費額の持続的成長という成果を導いていました。

この記事をご覧の地方自治体関係の方々はおそらくすでに類似の活動をしていらっしゃると思いますが、観光マーケティングのスタートとゴールはこの「観光資源」となりますので、ぜひ引き続き育成に努めてください。


広告手法の解説


オフライン広告の活用


オフライン広告とはテレビ、新聞、ラジオ、OOHなど、インターネットを利用しない広告一般のことです。観光マーケティングにおいて効果的なオフライン広告の代表例を以下に紹介します。

瞬間的に話題化や認知向上を狙いやすいメディアで、大型のキャンペーン・プロモーションのローンチ時などの施策に適しています。

メディアとしてのテレビCMの特性は、以下の3つで言い表せます。

・Speed UP「素早く届く」

・Scale UP「広い範囲に届く」

・Interest UP「興味関心を喚起する」

この3つの特徴を持ち、広い範囲のリーチ力に非常に優れています。

欠点としては、上記の利点の裏返しですが、細かいターゲティングができないことです。顕在ターゲットだけに対してアプローチしたいという場合には、後述するオンライン広告の方が向いているでしょう。


OOHは「Out Of Home」つまり家の外で接触する広告の総称です。

代表的なものとして「交通広告」があります。電車の車内や駅のポスター、看板、デジタルサイネージなどの豊富なメニューがあり、視覚的な訴求力に優れています。

観光マーケティングにおいて交通広告の重要度が高いのは、かなりの頻度でターゲットが駅・電車を利用するからです。自分たちの観光エリア周辺の駅での広告が重要なのはもちろんですが、都市部から誘客したい場合、電車の出発点となるターミナル駅での広告が非常に有効です。

反復訴求が可能な媒体のため、長期間掲載することで該当地域での想起率を上げることもできます。

交通広告の詳しい効果は、以下のコラムでも詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。




週刊誌や月刊誌、会員誌など、定期的に発行される出版物に掲載される広告です。

・雑誌によってコンセプトやテーマが決まっているので、趣味嗜好を踏まえたターゲティングができる

・一定期間保存されることが多く、長期的かつ反復的な広告効果が期待できる

・広告ページの精読率が高く、読者が広告に興味を持ちやすい

・厳正な広告審査基準があり、情報に対する信頼性が高い

等の特徴があります。お金を払ってでも「その雑誌の情報が欲しい」という読者に対して、広告を通じて興味・理解を促進することができるので、広告接触後の行動喚起にもつながりやすいと考えられます。

当社で紹介しているJR東日本の旅行会員組織「大人の休日倶楽部」会員誌、「トランヴェール」は旅行マインドを持つターゲットにおすすめの媒体です。

ご興味がある方は以下から資料をダウンロードしてください。





新聞本紙のスペースを新聞社から購入し、広告主が作成した原稿を掲載する広告です。新聞社が取材・インタビューなどを行って宣伝記事を掲載する「記事広告」という広告もあります。

1ページの縦幅を15分割したブロックを「1段」と呼び、この1段あたりの金額(段単価)をもとに掲載料を計算します。

読売新聞、朝日新聞、日本経済新聞などの全国展開している新聞を「中央紙」といい、販売地域を限定した新聞を「地方紙」といいます。

社会的な影響力や権威があり、信頼度が高い媒体とみなされていることから、ブランディング広告に有効です。手元でじっくり読まれるという媒体特性から、旅行商品との相性も良いです。


オンライン広告の活用



インターネットを利用した広告であるオンライン広告(Web広告、デジタル広告とも呼ばれます)も、オフライン広告と同様にさまざまな種類があり、それぞれ特徴があります。観光マーケティングにおいて効果的なオンライン広告の代表例を以下に紹介します。

検索連動型広告とも呼ばれており、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、特定のキーワードに対して広告を表示します。観光地やイベント名など、具体的な検索意図を持つユーザーにアプローチできるのが特徴です。

出稿は検索キーワードを指定して行い、その指定したキーワードをユーザーが検索した時に、検索結果の広告スペースに広告文が表示される仕組みです。費用は広告をクリックされた時に発生し、表示されただけでは料金はかかりません。

「検索している=欲求が顕在化している」場合が多いため、比較的、広告閲覧後の行動につながる可能性が高いのが特徴です。

反面、観光に顕在的な関心がない層にはアプローチしづらいという弱みもあります。

 

ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリなどに設けられる広告枠に掲載できる広告のことで、バナー広告とも呼ばれます。

ディスプレイ広告はテキストだけではなく、画像や動画なども使うことができ、リスティング広告などと比べるとユーザーの目を惹きやすいという特徴があります。

ディスプレイ広告の費用相場は1,000回表示させるのに10円から数百円程度、ワンクリック型の課金形式でも、10円から数百円程度で収まる費用感で、比較的安価に出稿できるため、観光意欲が高まりきっていない潜在顧客に対して広くアプローチするのに適しています。


 

自分たちが運営するWebサイトに訪れたユーザーに対して、別のWebサイトやアプリ上で広告を表示させるWeb広告です。

実際に、前日に調べていた商品の広告が別のサイトで表示された、という経験がある方も多いのではないでしょうか。

Webサイトを訪れているということは、商品・サービスに一定の興味があるということですが、情報が溢れる現代において、1度のサイト訪問で行動に至るケースは多くはありません。

そういった「行動検討中」のユーザーをピンポイントにターゲティングし、広告によって再アプローチし「念押し」ができるため、リターゲティング広告は比較的購買につながりやすいWeb広告といえます。 一方、ユーザーに繰り返し広告を表示させるため、「しつこい」「追いかけまわされている」といったネガティブな印象を与える可能性もあるので、出稿の際は注意が必要です。


 

「YouTube広告」に代表される、動画を用いて広告を配信する手法です。

動画の場合、一度に伝えられる情報量が多い点や、画像やテキストに比べてクリエイティブ表現の幅が広い点などが強みです。また、ストーリー性や音楽などによって興味を持ってもらいやすいため、商品・サービスに興味のないユーザーに対してもアプローチしやすいという特徴もあります。

しかし、動画広告は画像やテキストに比べて制作費用が高くなることが多く、少ない予算だと十分な効果が期待できない可能性もありますので、制作費用と出稿費用を合わせながら検討する必要があるでしょう。


SNS広告とはFacebook・Instagram・XなどのSNSプラットフォームを活用した広告です。タイムラインにうまく溶け込ませることで、ユーザーに広告が受け入れられやすいというメリットがあります。

年齢、性別などに加えて、「フォローしているアカウント」などでもターゲティングできる点が、他のWeb広告にない主な特徴といえるでしょう。 現在さまざまなSNSが存在していますが、SNSによってメインユーザーの年齢層やライフスタイルなどが異なるため、SNS広告を出稿する際にはターゲットに合った適切なメディア選びが重要です。


その他、Web広告の種類について詳細は、以下のコラムを参考にしてください。

 

特にオンライン広告については、広告のパフォーマンスをデータとして測定することができ、その後の改善につなげることができます。そのためには適切な指標の設定が重要です。

以下のデータ指標を活用して、広告パフォーマンスを評価します。


・クリック率(CTR):

広告が表示された回数に対して、クリックされた回数の割合を示します。CTRが高いほど、広告がユーザーにとって魅力的であることを示します。

・コンバージョン率:

広告をクリックしたユーザーが、実際に予約や問い合わせなどのアクションを取った割合を示します。コンバージョン率が高いほど、広告の効果が高いことを示します。

・リターン・オン・アド・スペンド(ROAS):

広告費用に対して得られた収益の割合を示します。ROASが高いほど、広告キャンペーンの費用対効果が高いことを示します。


上記の指標を基に広告パフォーマンスを評価した後は、データ分析を行い、広告プランを改善しましょう。効果的な広告は引き続き実施し、そうでない広告は取りやめるか広告クリエイティブを改善します。

広告のABテストを実施することで、もっとも効果的な広告クリエイティブを見つけるというやり方もおすすめです。

ABテストの詳細については以下のコラムを参考にしてください。



観光マーケティングの施策例をいくつかご紹介します。是非参考にしてください。


福井県 TVアニメ「シンカリオン」タイアップ



北陸新幹線福井・敦賀開業を記念し、福井県は、テレビ放送中のアニメ『シンカリオン』シリーズ最新作『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』とタイアップして、福井県の魅力を発信・誘客促進を行いました。

2024年10月1日からは、県内29カ所を対象としたデジタルラリー第2弾を開催。

ラリースポットは、アニメの舞台や福井県内の観光地のほか、さいたま市、京都市の鉄道博物館とも連携し、誘客を図ります。ラリーの達成条件を満たすと、『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』の「オリジナル クリアポストカード」がもらえるほか、録りおろしボイス入りの「九頭竜リョータのおしゃべりアクリルスタンド」が30人に当たる抽選に応募できる、というものです。

『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』では、福井県出身のキャラクター・九頭竜 リョータが「シンカリオン E7かがやき」の運転士として登場し、 福井県も本編中の舞台となっています。

コンテンツに登場するキャラクターや地域にちなんで、該当の地方自治体がプロモーションを行う代表的な例となります。

これの類似例として、キャラクターコンテンツのファンが、そのキャラクターにゆかりのある地域を訪れる、いわゆる「聖地巡礼」という行動があります。これのプロモーション活用例については以下のコラムを参考にしてください。



川崎市×シティドレッシング

出典:PRTIMES 川崎市【報道発表資料】 市制100周年を彩る新たな「ビジュアル」を公開!


2024年に市制100周年を迎えた川崎市は、2024年10月から、100周年を機に、「まちで生み出される様々なアクションの一場面をビジュアルとして制作し、デジタルサイネージや駅でのシティドレッシング」を実施しました。

シティドレッシングとはPR・プロモーションのために大型ポスターやフラッグや横断幕や電飾などの広告物を大量に設置して、街中を飾る施策のことです。

市内に駅がある旅客鉄道5社(小田急、京王、京急、JR東日本、東急)が、事業者の垣根を超えてコラボレーションする様子を表現したビジュアルを作成し、電車の車両広告などで掲出。市内の主要駅においてラッピングで駅を装飾しました。


JR東日本データ活用広告「JRE Ads」による観光・移住誘引施策



当社ジェイアール東日本企画ではWeb広告ソリューション「JRE Ads」を利用した、地方自治体向けの観光・移住誘引施策を提供しています。

JRE Adsとは、JR東日本グループが保有する、移動や購買などのユーザーデータを運用型Web広告に活用するサービスで、JR東日本グループが管理・運営するポイントサービス「JRE POINT」に登録されたユーザーのデータを基点に、そのユーザーの鉄道や改札でのSuica利用データや、ECサイト「JRE MALL」での買い物履歴からユーザーのターゲティングが可能です。


これを観光・移住施策に利用します。

新幹線予約サイトのえきねっとや、50歳以上のみ入会可能な200万人規模の旅行会員組織「大人の休日倶楽部」のデータなどを利用し、旅好きユーザーへアプローチします。



観光・移住に関してマーケティング課題を持つ地方自治体の方々に実際にご利用いただいておりますので、ご興味のある方は是非以下の資料をダウンロードいただき、お問い合わせください。




観光マーケティングでの成功は

・ターゲット設定

・魅力的な発信コンテンツと広告物:

・オンラインおよびオフラインのメディア・ツール活用

が重要です。

広告キャンペーンの成果を定期的に測定し、データ分析を通じて改善策を導入することで、より良い成果を得ることができるでしょう。

当社には、ご紹介したJRE Adsの事例をはじめ、地方自治体の観光マーケティング・プロモーションの支援実績が多数ございます。

観光マーケティングに課題をお持ちの方は是非当社にお問い合わせください。

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