
こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
近年、アニメや漫画、映画の舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」が、新たな観光スタイルとして注目されています。このブームは、ファンを全国各地、さらには海外からも呼び寄せ、地域経済の活性化や地方創生に大きく貢献しています。
本記事では、聖地巡礼がもたらす経済効果や、成功事例を詳しく解説します。
☑聖地巡礼の経済効果について知りたい
☑聖地巡礼ビジネスの成功事例を知りたい
☑アニメや漫画・映画などのIPコンテンツと地域のコラボを行いたい
など、地域の活性化のために聖地巡礼やIPコンテンツコラボを取り入れたいと考えている方におすすめのコラムです。
聖地巡礼とは?
聖地巡礼とは、アニメや漫画、映画などの舞台となった場所やゆかりの土地を訪れることを指します。
本来は宗教的に特別な意味を持つ「聖地」を参拝することを意味していましたが、現在では作品を愛するファンにとっての特別な場所を巡る、オタクカルチャーや「推し活」の一環として浸透しています。
弊社の調査では、一都三県の推し活実施者のうち、44.8%が聖地巡礼を目的とした遠征経験があると回答しています。約半数ものファンが、作品への愛情を原動力に実際に現地を訪れているのです。

株式会社ジェイアール東日本企画 jeki応援広告事務局「Cheering AD」 推し活・応援広告調査2023
ファンにとって聖地巡礼は、作品の世界観を実際に触れることで、キャラクターがその場に存在しているかのような感覚を味わうことができる特別な体験です。
また、地方自治体や地元ビジネスにとっても聖地巡礼は、新たな観光客を呼び込む絶好の機会となっています。「コンテンツツーリズム」や「アニメツーリズム」として多くの地域で積極的に取り組まれており、作品を通じて多くの観光客に地元の魅力を広めるきっかけになっています。
聖地巡礼の種類と特徴
聖地巡礼には、いくつかの種類があります。最も一般的なのは、作品の舞台となった実在の場所を訪れるロケ地の聖地巡礼ですが、著者の出身地やキャラクターのゆかりの地など様々な「聖地」の形があります。
代表的な種類とその特徴について具体例を交えながらご紹介します。
◎舞台・ロケ地
アニメや映画の舞台となった実在の場所を訪れるものです。アニメや映画の主要な舞台だけでなく、登場人物が旅行で訪れた場所や短いシーンに登場した場所が「聖地」として注目されることもあります。
例:『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』埼玉県秩父市、『君の名は。』長野県立石公園や岐阜県飛騨市など
◎作者やキャラクターのゆかりの地
作者やキャラクターの出身地が「聖地」となる場合もあります。記念碑やモニュメントが設置されることが多く、観光資源として注目されています。
例: 作者の出身地熊本県に設置された『ONE PIECE』のルフィ像や、『名探偵コナン』の作者の出身地鳥取県 にある青山剛昌ふるさと館など
◎好きなものや名称繋がり
作品やキャラクター名とのつながり、またはキャラクターの好きな食べ物や趣味にちなんだ場所でコラボキャンペーンを実施することも近年増えています。
例: 兵庫県有馬温泉とアニメ『推しの子』のキャラクター『有馬かな』をメインにしたコラボキャンペーン など
◎歴史/文化的なつながり
歴史的背景や文化的要素を持つ場所も聖地巡礼の対象となります。特に、歴史を題材にした作品や伝統文化を活用したケースが多いです。
例: ゲーム『刀剣乱舞』に登場する刀剣が展示される美術館や神社など
他にも、コラボイベントを記念して観光地にキャラクターが訪れるオリジナルエピソードや書下ろしイラストを新たに制作することもあります。作品の舞台になっていない場合でも、アニメや漫画などのコンテンツを活用して観光客を誘引する方法は十分にあります。
聖地巡礼による経済効果
観光客の増加・経済効果
聖地巡礼により、アニメや漫画・映画のファンがその地域を訪れることで観光客数が増加し、宿泊や飲食などを通じて大きな経済効果がもたらされます。
例えば、当社出資映画である『君の名は。』に登場する飛騨市は、映画公開の2016年には前年よりも観光客が3.5万人増加しました。
また、十六総合研究所(岐阜市)の調査によると、2016年には『君の名は。』に加え、岐阜を舞台にしたアニメ映画『ルドルフとイッパイアッテナ』や『聲の形』が公開されたことで、聖地巡礼による経済効果は約253億円に上ったとされています。
参考:飛騨市 平成28年 飛騨市観光客入込数等について
https://www.city.hida.gifu.jp/uploaded/attachment/15695.pdf
十六総合研究所 岐阜県ゆかりのアニメ映画3作品の聖地巡礼による経済波及効果
https://www.16souken.co.jp/assets/202108/6da08e087c15e9674eaf24dc3a046f8abfdefbb0.pdf
地元ビジネスの活性化
聖地巡礼は、地元ビジネスの活性化にもつながります。観光客の増加に伴い、地元の飲食店、宿泊施設、観光施設が賑わい、多くのビジネスチャンスが生まれます。
さらに、聖地巡礼をきっかけに地元の特産品や工芸品が注目されたり、コラボイベントの開催や関連商品の開発・販売が行われたり、新たな収益源が生まれる可能性も広がります。
インバウンド効果
日本のアニメや漫画・映画のファンは日本国内にとどまらず、海外でも「クール・ジャパンコンテンツ」として高い人気を誇ります。
2023年に観光庁が行った訪日外国人消費動向調査によると、2023年に訪れた外国人のうち7.5%(約187万人※)が「映画・アニメゆかりの地を訪問」しています。さらに、10.9%が次回訪日時に聖地巡礼を希望しており、今後も外国人観光客の増加が期待されます。
※2023年に訪れた訪日外国人約2,500万人から計算
参考:観光庁 訪日外国人消費動向調査 2023年 年次報告書
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001742979.pdf
聖地巡礼の成功事例
日本にはさまざまな作品の聖地があります。その中でも、ファンの心をつかむプロモーションを行い、聖地巡礼スポットとして親しまれている地域をいくつかご紹介します。
久喜市鷲宮『らき☆すた』
聖地巡礼の火付け役ともいえるのが、2007年に放映されたアニメ『らき☆すた』の舞台である久喜市鷲宮です。
もともとは観光名所と呼べるものが少ない土地でしたが、作品内に登場する鷲宮神社を訪れるファンが増えたことをきっかけに、商工会が中心となってコラボグッズの販売やスタンプラリーなどのイベントを実施しました。
アニメ放送終了後から15年以上たった現在も、キャラクターの誕生日イベント、新年のコラボグッズ販売、商店街でのフラッグ設置などが行われています。この長期間にわたり「聖地」として愛され続けている背景には、地元商店街や住民が作品やファンに対する理解を深め、信頼関係を築いてきたことが大きく影響しています。
静岡県沼津市『ラブライブ!サンシャイン!! 』
『ラブライブ!サンシャイン!!』は、大ヒットアニメ『ラブライブ!』の第2弾として、2016年と2017年に放映された作品で、静岡県沼津市を舞台としています。沼津市駅周辺では、ラッピングバスや商店街のフラッグ設置など、街全体で作品を盛り上げています。

恵比寿発、 【MDLスペシャルインタビュー】SCRAP×jekiで聖地巡礼を語り尽くす(前編)https://ebisu-hatsu.com/articles/?p=2217
「リアル脱出ゲーム」は株式会社SCRAPの登録商標です。
©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
また、当社では「リアル脱出ゲーム」を手掛ける株式会社SCRAPと協力し、【リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」】を実施しました。このイベントでは、ファンが作品内のキャラクターたちと協力して謎を解きながら、物語の世界に入り込む体験ができるようになっています。
さらに、このイベントには日本全国からだけでなく、海外からも多くのファンが参加し、大きな盛り上がりを見せました。
■リアル脱出ゲーム×ラブライブ!サンシャイン!!「孤島の水族館からの脱出」 イベント公式サイト
https://realdgame.jp/lovelive_sunshine/
茨城県水戸市『刀剣乱舞-花丸- 』

水戸市では、「水戸の梅まつり」の時期に合わせて、ゲーム原作のアニメ『刀剣乱舞-花丸-』とJR東日本 水戸駅を中心としたコラボキャンペーンを実施しました。『刀剣乱舞』は、刀を擬人化したキャラクターが登場し、その中でも主要キャラクターである「燭台切光忠」の実刀が水戸の徳川ミュージアムに所蔵されていることをきっかけにアニメとのコラボが実現しました。
キャラクターを装飾した特別列車「快速 燭台切光忠」の運行や、装飾展示、限定グッズの販売、コラボカフェなどファンが喜ぶ施策を行いました。もともと「聖地」として訪れるファンが多かったこともあり、このコラボはファンの間で大きな話題となり、SNSでは関連ワードがトレンド入りするなど大きな反響を呼びました。
当社事例として、以下のページにてさらに詳しく紹介しています。
愛知県豊橋市『負けヒロインが多すぎる! 』
『負けヒロインが多すぎる!』は、2024年放送のアニメの中でも特に「聖地巡礼」に力を入れている作品です。作品の舞台となっている愛知県豊橋市や鉄道会社とのコラボだけではなく、市が中心となり聖地巡礼マップの公開や、出演声優による聖地巡礼動画の公開などファンが聖地巡礼をしやすい環境づくりをしています。
■負けヒロインが多すぎる! 聖地巡礼マップ https://makeine-anime.com/special/map/
■豊橋市役所での垂れ幕装飾
■アニメ「負けヒロインが多すぎる!」聖地巡礼企画
豊橋市は、ロケ地勧誘やコンテンツでの町おこしに力を入れており、ドラマ『陸王』(2017)などでも舞台として登場しています。『負けヒロインが多すぎる!』もアニメ放映前からコラボを進めていたこともあり、作品放映と同時に複数のコラボ企画を展開し、ファンが巡礼しやすい環境を整備したことが成功の鍵となっています。
聖地巡礼ビジネスの成功のポイント
アニメや漫画・映画の舞台になったからといって、必ずしも「聖地」として盛り上がるわけではありません。聖地巡礼ビジネスに成功した地域では、必ずファンの心をつかむプロモーションが行われています。
以下のポイントを意識しましょう。
①ファンの心をつかむコンテンツの提供
まずは訪問の動機を作り、ファンの期待を超える体験を提供することが重要です。ファンが楽しめるイベントや展示、限定グッズの販売、オリジナルの動画や音声コンテンツ、撮影スポットなどを提供することで、観光客の満足度を高めることができます。
訪問後も思い出を共有したくなる体験を提供することで、口コミ効果も期待できます。
②地域全体での連携
地域全体で「聖地巡礼」を盛り上げる意識を持つことが最も重要です。具体的には、聖地巡礼マップの作成や地域全体に撮影スポットを設置するなど、訪れる人々に地域全体を楽しんでもらえる工夫が求められます。
一方で、地方自治体が単独でイベントやキャンペーンを進め、急激に観光客が増えると、地域住民から反感を買ってしまう恐れもあります。そのため、観光協会や商工会などと連携し、地域住民にも作品を好きになってもらう取り組みを行うことが非常に重要です。
③持続的な観光の推進
聖地巡礼を、作品が盛り上がっている間だけのブームと捉えるのではなく、地域の魅力を知ってもらうきっかけとして考えましょう。
聖地巡礼スポット付近の観光地への回遊の提案や、地域の文化に触れてもらうきっかけを作るなど、地域の他の観光資源と掛け合わせて地域のファンになってもらう工夫をすることが重要です。
コンテンツとのコラボの進め方
アニメや漫画・映画などのIPコンテンツとコラボして、イベントやキャンペーンを実施する場合は販促使用契約、グッズを販売する場合は商品化契約が必要となります。コラボの際は作品権利元の監修が必要なため、通常のプロモーションや商品製作よりもスケジュールに余裕を持ちましょう。
IPコンテンツとのコラボを検討しており、進め方がわからないという場合は、ぜひ当社にお任せください!当社では、成功事例で紹介したプロモーション以外にも、IPコンテンツとのコラボ商品や販売促進・大型イベントを多数手がけてきました。
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まとめ
聖地巡礼は、アニメや漫画・映画といった作品ファンに特別な体験を提供するだけでなく、地域にとっても大きな経済効果をもたらす重要な観光資源です。
しかし、適切なプロモーションを行わなければ、作品の放送終了後には観光客が徐々に減少してしまいます。そのため、作品(アニメや漫画・映画)に依存したプロモーションではなく、聖地巡礼を通じて地域の魅力を広く伝えることが重要です。地域全体で聖地巡礼を盛り上げる取り組みを行い、何度も訪れたくなる地域づくりを目指しましょう。
