ターゲットマーケティングの基本を全解説! 手法と事例で学ぶ

キクコト 編集部

こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回は「ターゲットマーケティング」についてお話ししたいと思います。

人々が、日々メディアから受け取る情報量が膨大なものとなった現在、人々が接するメディアの種類もまた劇的に増加しています。その情報供給源の代表がスマートフォンですが、世帯における保有割合は90%を超えました。

(出典:総務省「通信利用動向調査」)

多種多様な情報を浴びた結果、顧客の消費スタイルは人それぞれ多彩になりました。
この状況に対応するための広告戦略として、ターゲットマーケティングがあります。

ターゲットマーケティングとはどのようなもので、どのように組み立て、どのように実施するのか、事例とともにご説明します。


ターゲットマーケティングとは

冒頭でお話ししたとおり、顧客の消費スタイルが非常に多様化している現在、商品・サービスが持続的に成長していくためには、その多様化した消費スタイルを理解し、誰が自社商品・サービスを求めているかを見定め、顧客が満足するものを提供する必要があります。そのために、市場から特定の層を切り出して自社商品・サービスのターゲットを設定する広告戦略が「ターゲットマーケティング」です。
あるいは単に「ターゲティング」とも表現します。

対義語として、「マスマーケティング」があります。顧客を絞るターゲットマーケティングに対し、市場全体に対してアプローチする戦略で、日本ではこのマーケティング手法が長年王道となってきました。
テレビCMを中心に、全国に向けて広告を打ち、あまねく人々に商品・サービスの認知度を上げてブランディングと売り上げ向上につなげる手法です。

マスメディアに大量の広告を投下すれば、日本人の大半が広告を見てくれた時代はそれで良かったのですが、今や競合となる商材もメディアも多様化して、顧客の選択肢が増加しました。ターゲットを絞って誰に何のために打つのかを考えなければ広告費が無駄となり成果が出なくなっています。

ただし、これまでもターゲットマーケティングが全く行われていなかったわけではありません。顧客のターゲティングはかつてから意識されていましたが、現在はマスマーケティングからターゲットマーケティングにますます比重が移ってきた、と見るのが正確なところでしょう。

例えば、以下はテレビ視聴率の集計時に利用される性年代別の階層区分です。

広告マーケティングにおいてはこの階層区分がターゲット検討時に長年利用されてきました。
人の性別と年齢によって、生活スタイルや好むものや必要とするものが、おおむねの傾向として合致していた時代はこの区分が機能したのですが、今ではこれでは不十分です。

結婚や出産などのライフステージの変化が人によって大きく異なって年齢で区別できなくなってきたり、趣味の変化は年齢よりも、個人の特性によって異なる傾向が強まっています。
例えばテレビゲームは以前は若者向けの娯楽でしたが、現在では子どもからシニアまでが楽しむ娯楽でしょう。

性・年代の区分だけではなく、顧客の各個人がどのようなメディアに触れ、どのような趣味嗜好を持っているのかなどを考える必要があります。


ターゲットマーケティングの手法

ターゲット顧客を検討するにあたっては、ビジネスフレームワークを利用すると便利です。
フレームワークとは、ビジネスで求められる、課題の洗い出しや分析、アイデアの共有など、必要な視点を漏れなく網羅的に整理することができる、物事を考えるうえでの枠組みのことです。

ターゲットを検討するフレームワークとして代表的なものに「STP分析」がありますが、実はいきなりこのフレームワークを実施してターゲットを検討するのは、難しいです。
ターゲット顧客は自社商品の強みや弱み、外的環境の整理や市場の状況など、あらゆるビジネス上の要因も併せて考慮したうえで導き出されるものだからです。

ここでは一例として、「PEST分析」と「SWOT分析」という分析を踏まえたうえで、STP分析に入るやり方をご紹介します。


・まず、PEST分析で外部環境分析


PEST分析とは、ビジネスを取り巻く外部環境を政治、経済、社会、技術の4つの要因に分類し、自社に与える影響を読み解く分析手法です。 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの頭文字を取ってPEST分析と呼ばれています。

これを整理しておき、自社が置かれている環境を確認しておくと、この後の分析で自社および自社商品・サービスの分析を間違えにくくなります。

・SWOT分析で市場機会の発見


自社事業のコンディションを、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの項目で整理して、分析する方法です。各項目で状況を整理したうえで、下の図のように「クロスSWOT分析」を行い、自社商品・サービスの戦略を策定します。

このSWOT分析およびクロスSWOT分析を踏まえると、事業が取るべき戦略、重点を置くべき戦略が明確になり、関係者間で共有しておけば、施策の検討時にも各部署・各個人でブレが生じにくくなります。
そして、これにより自社の商品・サービスの分析ができるので、自社商品が誰にとってメリットとなるのかが分かり、次のステップで、ターゲットを検討しやすくなるでしょう。

・STP分析でターゲット検討


さて、このSTP分析が、本コラムの本題となるターゲット検討に有用なフレームワークです。
マーケティング研究者のフィリップ・コトラーが提唱したフレームワークで、3つのワークを示す英単語の頭文字を取ったものです。基本的には、この文字の順番に分析を行いますが、STPの3要素は互いに関連しています。行きつ戻りつ分析しましょう。

S:セグメンテーション(Segmentation)
セグメンテーションとは「市場の細分化」を意味し、ターゲットを決める前に、まず市場に存在するユーザーの属性を分類していきます。

このセグメンテーションの分類がそのまま、次項の「ターゲティング」の構成要素になるので、正確な分類ができるかどうかが焦点になります。SWOT分析=自社事業分析を参考にして検討しましょう。

T:ターゲティング(Targeting)
本コラムの論点となる「市場の決定」であり、上述で分類したセグメンテーションからターゲットとするユーザーを決めていきます。通常、ターゲットはセグメンテーションで導いた分類の掛け合わせとなります。

どのターゲットに競合優位性や拡大可能性といったチャンスが最もあるか、を考えます。ターゲティングで絞った市場でマーケティング活動を行うことで、実施する施策内容が明確になり、費用や労力や時間というコストを効率的に活用でき、収益の最大化につながります。

P:ポジショニング(Positioning)
ポジショニングとは、自社やその商品・サービスの「立ち位置を明確化」することです。競合他社と比較してどこが優位なのかを見定めたり、あるいは比較競争に巻き込まれない独自の役割を見つけます。

検討の際は、データに基づく分析を行うのが良いでしょう。主観によるポジショニングは個人の見解によってブレてしまうのはもちろん、自社・他社・市場の状況が変わったときに対応しづらくなります。例えば「価格」と「品質」の2軸を設定し、自社がどのポジションにあり、競合がどのポジションにあるのかを確認します。


・6R分析でターゲットの妥当性検証


以上のSTP分析を踏まえ、ターゲットが判明したら、この中身を以下の「6R」という6つの要素に分解して検討し、定めたターゲットが妥当なものかどうかを検討するとより良いでしょう。

有効な市場の規模(Realistic scale)
自社事業を持続させるうえで、有効な市場規模かどうかを確認します。
市場が大きすぎると競合が強力になりすぎ、市場が小さすぎると収益が上がらず事業が維持成長できません。バランスの取れた市場規模かどうかを検証します。

成長率(Rate of growth)
成熟しきった市場では、自社事業も成長しづらいです。長期間事業を持続するためには、ターゲティングで策定した市場の成長率を予測し、将来にわたって成長可能性がある市場かどうかを確認しましょう。

競合(Rival)
STP分析のポジショニング分析でも明らかになっているはずですが、ライバルの状況を確認し、市場内にどんな競合がどれくらいいるかを確認します。
一般的には、強力な競合が多く存在すれば、事業参入しても収益が上げづらく成長もしづらいので、敵が少ないブルーオーシャンを狙うべきです。ただし今後、参入の余地が十分にあると考えられるほど市場自体がどんどん拡大していくのであれば、その限りではありません。

優先順位(Rank)
市場・ターゲットにとって自社事業の優先順位が高いかどうか(ターゲットにとって興味・関心度が高く、優先的に消費行動をする商品・サービスかどうか)を確認します。
これが優位とみなせるのであれば、マーケティング施策を実施した際にターゲットから多くの反応が得られることが見込めますし、結果、事業も成長する可能性が高いでしょう。

到達可能性(Reach)
ターゲットに対して、自社商品・サービスが到達しやすい(提供しやすい)かどうかを確認します。
優れた商品・サービスであっても、ユーザーの居住エリアや行動圏に存在しなければ事業成長は見込めません。

測定可能性(Response)
上記の到達可能性とセットで考えるべき項目です。実際にマーケティング施策や販売を行ったときに、ターゲットへの到達結果が測定できるかどうかをあらかじめ確認します。事業の成長のためには、どの施策に効果があったのか、あるいはなかったのかを都度確認して、次の施策検討に活かす必要があります。
到達結果の指標(結果を何で測るか)を検討することも重要です。最終目標は「売り上げの向上」だとしても、いきなりそれを指標にしても施策の効果が見えづらいこともあるでしょう。その場合は「来店数」や「Webサイト訪問数」などの中間目標を指標にします。


・ペルソナ設定でターゲットを具体的な存在にする


ここまでの分析を踏まえれば、自社商品・サービスのターゲットはかなり明確になります。それでも、具体的なマーケティング施策を検討する際には関係者間でターゲットの解釈にブレが生じる可能性があります。

その場合はターゲットのペルソナ設定を行います。
マーケティングにおけるペルソナとは、「自社の商品・サービスを使用する典型的な顧客像」のことです。ペルソナ設定では、性・年代や年収や居住エリアや家族構成や職業などのデモグラフィックデータだけでなく、趣味嗜好や行動パターンや価値観などのサイコグラフィックデータについても詳細に設定し、「いかにも自社商品・サービスを利用しそうで、実在しそうな一個人」を設定します。

これを作り上げることで、顧客が接触するメディアや、好む表現、購買に至るまでの思考などが想定できますので、マーケティング戦略を設計しやすくなります。

ペルソナとそれを活かしたマーケティングについては以下のコラムで詳しく紹介しておりますので、作り方や活用施策を知りたい方はぜひご覧ください。



ターゲットマーケティングのメリット・効果

ターゲットマーケティングのステップをご説明したところで、ターゲットマーケティングによるメリットと効果を解説します。

ターゲットマーケティングのメリットは多岐にわたるので、本コラムでは代表的な3つをご紹介します。

費用対効果の最大化
基本的にはこれがターゲットマーケティングの最大の価値であり目的でしょう。

自社商品・サービスに対して投資できる予算や人的リソースや時間は、常に有限です。
ターゲットを設定・明確にすることで、これが不明瞭な状態と比較して、あらゆるコストをカットし効率が良くなります。

顧客が商品・サービスを購買するまでに、「認知」し、「興味・関心」を持ち、「購買」を決定するという段階が必要だとすれば、この3段階で実施するすべてのマーケティング施策が高効率化します。


戦略・施策を明確にしやすい
アプローチをするべき顧客が誰なのかが判明していれば、そうでない場合と比較して、何をしてアプローチするべきなのかが格段に考えやすくなります。

商品のデザインや、店舗の内装、接客、広告のキービジュアルやキャッチコピー、広告を実施するメディアなど、商品・サービスに関わるありとあらゆるデザインや設計が検討しやすくなり、結果、上記の費用対効果の最大化につながるでしょう。


ブランドの強化
ターゲットを設定してマーケティング施策を実施し、それがターゲットから高評価を得られ、収益が上がる、などの良い結果につながった場合、売り上げ以外のさまざまな成果が得られることがあります。

ターゲット顧客に一つのブランドとして認知され、しかもそれが良いブランドとして認められるということになれば、その後顧客は繰り返し自社商品を購入し、競合商品は購入しないでしょう。この、「他の商品では代替できないと考えるロイヤルユーザー」は、ターゲットマーケティングによって発生しやすくなります。

また、このブランド認知・愛好が拡大すると、自社商品・サービスは社会的な影響力を持つ可能性があります。一商品の売り上げ向上だけではなく、企業としての存在価値を得ることにもつながるでしょう。


ターゲットマーケティングの事例

ここからは、当社ジェイアール東日本企画も携わったターゲットマーケティングの事例を紹介します。


・マルサンアイ株式会社「みそまかせ」


万能型のお料理専用液状みそ調味料「みそまかせ」のターゲットは、「働きながら毎日料理をするママ」です。

「家族に美味しいものを食べさせたいと思っているけれども、毎日仕事で忙しくて、メニューを考えるのが大変で、レシピを探す時間もない」。メインユーザーの状況をそのように分析し、彼女たちのニーズに応える商品設計を行い、広告まで一気通貫してプロデュースされています。

当社のマーケティングラボ「イマドキファミリー研究所」は、この商品の開発から広告施策全般の支援を行いました。「イマドキファミリー研究所」は育児経験のある戦略プランナーで構成された、家族の生活意識や実態を研究する組織です。

キッチンに置いておきたくなるようなシンプルであたたかみのある「パッケージデザイン」。覚えやすく親しみやすい「ネーミング」。メディア展開では、山手線などの首都圏の交通広告や、オレンジページをはじめとする雑誌計8誌に純広告を掲載するなど、働くママをターゲットにブランドコミュニケーションを行いました。

【商品開発支援】マルサンアイ×jekiイマドキファミリー研究所 共同商品開発事例
毎日忙しいママの想いが詰まったお料理専用の鮮度みそ「万能 みそまかせ」を共同で開発!


イマドキファミリー研究所では、こうした商品開発や、広告コミュニケーションのトータルでのお手伝いが可能です。
当社の子育てママ・パパやファミリーに向けたマーケティングソリューションについて詳しく知りたい方は、詳細を以下のページにて紹介していますのでぜひご覧ください。また、詳細資料も以下からダウンロードできます。



また上記に加え、イマドキファミリー研究所では、企業向けに「子育てファミリーマーケティングの勉強会」も行っています。
育児経験のある戦略プランナーが最新のノウハウや調査データを共有し、対象企業・商材の課題に落とし込んでお話ししますので、マーケティング戦略の策定に有効に利用していただけます。
勉強会は、プロモーション実施計画がある企業に対し無償で行っていますので、ぜひ以下のリンクからお申し込みください。


※広告施策の実施を前提とした企業様のみ、申し込みを受け付けております。
※マーケティング部門の責任者の方の参加が必須となります。
※こちらのサービスは広告主様限定です。広告会社様・制作会社様などへはご提供できませんのでご了承ください。


・バイセルテクノロジーズ「バイセル」


家庭にある品物を出張買取するサービス「バイセル」を運営する株式会社バイセルテクノロジーズは、ターゲット顧客を「50代以上のシニア・プレシニア」と設定し、37兆円以上といわれるその保有資産に注目して事業を運営しています。

切手や着物などを自宅に保有しているシニア・プレシニアに向けたコミュニケーションを行っており、この施策の一つとして、当社が編集支援する「大人の休日倶楽部」会員誌への広告出稿を行いました。

「大人の休日倶楽部」会員誌は、50代以上のみが入会可能な「大人の休日倶楽部」会員に送られる冊子です。発行部数は約107万部、読者のほとんどがアクティブシニアで、バイセルのターゲットに合致しています。この会員誌で、「売ったお金を旅行資金に」という大人の休日倶楽部会員のインサイトを捉えた切り口で広告訴求を行い、多くの顧客の問い合わせ獲得に成功しました。

「大人の休日倶楽部」会員誌について詳しく知りたい方は、以下からお問い合わせいただくか、資料をダウンロードください。




まとめ

以上、ターゲットマーケティングについてご説明しました。

顧客のニーズが細分化した現代ではターゲットマーケティングは戦略面でも戦術面でも細かな検討が必要になっています。

総合広告代理店の当社ジェイアール東日本企画では各ターゲットにフォーカスしたトータルのコミュニケーションプランニングとエグゼキューションが可能です。

ターゲットマーケティングに関わる課題がありましたら、ぜひともジェイアール東日本企画「キクコト」にお問い合わせください。

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