こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のテーマは「ニューノーマルの観光を変える!? 観光型MaaSとは」です。
移動の新しい概念として「MaaS(マース)」という言葉をよく耳にするようになったので、今のうちにきちんと理解しておきたいですよね。今回はそんなMaaSの基本情報を押さえつつ、その中でも観光地の救世主になるかもしれないと注目されている「観光型MaaS」について詳しくお話ししていきたいと思います。
コロナの影響で観光に危機感を持たれている地域の方や、観光産業に携わる企業の方々に是非読んでいただきたい内容です。
そもそもMaaSって何?
「MaaS(マース)」は「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略で、日本語に訳すと「サービスとしてのモビリティ(移動)」です。
「サービスとしてのモビリティ」って言われても全然ピンと来ませんね。。
(毎度思うのですが、この日本語訳って逆に意味をわかりづらくしますよね。)
MaaSの概念を簡潔に説明すると…
ICT(情報通信技術)を活用して、複数の公共交通(鉄道、バス、タクシー、飛行機など)やその他の移動サービス(シェアサイクル、レンタカーなど)を統合して、検索・予約・決済などをワンストップで行う仕組みです。
例えば旅行をする時には、時刻表アプリで鉄道の時刻を調べて、駅でチケットを買って、飛行機のチケットは専用サイトで購入して、到着先で乗るタクシーを電話で予約して…と移動手段ごとに個別に検索や予約をする必要があり、結構面倒ですよね。
これが一つのサービスに統合されると、一つのサイト(アプリ)ですべての手続きが完結し、ユーザーの利便性は格段にアップします。
MaaSの形は一つではない
MaaSと一口に言っても、地域特性に合わせて様々な形があり、これまでは「都市型」「地方型」「観光型(観光地型)」の3モデルに分類されるケースがよく見られました。
●都市型MaaS
都市部では既に各種交通網が充実しており、どこへ行くにも交通の便に困ることはありません。
その一方で人口集中による慢性的な道路渋滞という問題を抱えています。
都市型MaaSに最も期待されるのは、この渋滞の解消と温室効果ガスの排出量削減のためにマイカー利用を減らすことです。
●地方型MaaS
地方では、都市部のように公共交通機関が充実しておらず、特にマイカーを持っていない住民にとってこの問題は切実です。
事業者にとっては採算が取れない路線でも、そういった利用者のために赤字路線の廃止ができない苦しい事情がある例も見られます。
地方型MaaSではこういったマイカーを持たない住民の足として乗合タクシーやデマンドバス※などが提供されることで、事業者にも住民にもメリットが生まれます。
※利用者の呼び出しに応じて、バスが利用者の場所へ寄り乗降するシステム。
●観光型MaaS(観光地型MaaS)
観光地において、観光客は効率的に観光スポットを巡りたいというニーズを持っていますが、地方の観光地の多くは二次交通や観光周遊になんらかの課題を抱えています。
観光型MaaSには、こういった課題を解決して観光客の満足度を上げることで、消費機会を増やし、地域全体を潤す効果が期待されます。
最近では上記の括り方以外にも課題の切り口に応じて、高齢者・要介護者向けの「福祉型MaaS」や「医療型MaaS」、鉄道を中心とした住民向けの「沿線型MaaS」など、様々なモデルが登場しています。
このように地域の特性によって、解決すべき課題や目指す姿が大きく違うことはMaaSの重要なポイントです。
観光地が抱える課題
そんな多種多様なモデルの中から、今回は「観光型MaaS」をもう少し掘り下げたいと思います。
私はこの5年ほどJR東日本の観光キャンペーンを広告会社の立場からサポートしてきました。
数々の素晴らしい観光スポットを紹介してきましたが、TVCMで取り上げた場所にはお客さまが大挙して押し寄せるけれど、周辺の観光スポットになかなか足が延びないという事象に遭遇しました。その原因のほとんどが、二次交通が十分に整っていないこと。
せっかく素敵なスポットがあっても、バスが一日数本しか無い、タクシーでしかアクセスできないのにタクシーがつかまらない…などの理由で観光客を逃してしまっているのは非常に勿体ないと感じました。
観光型MaaSで実現できること(TOHOKU MaaS事例)
観光型MaaSは、まさにこの問題を解決するのに最適な手段です。
具体的に観光型MaaSでどんなことが実現できるのか、JR東日本が地域と協力しながら現在実施している「TOHOKU MaaS(トウホク マース)」を例にご紹介します。
TOHOKU MaaSは、東北デスティネーションキャンペーンの開催期間に合わせて、東北6県で展開されている観光型MaaSです。
主な機能は以下の通りです。
(おでかけ前に)
・お好みの旅行プランを組み立てられる旅行プランニング
・周辺の観光メニューを滞在時間などに応じておすすめしてくれるリコメンド機能
(移動を便利に)
・乗合交通サービスを利用するためのオンデマンド交通の予約・決済
・フリーパスや一日乗車券など交通チケットの購入
(目的地で楽しむ)
・レストランや観光施設などで使える共通電子チケット東北MaaSチケット
・その他、高速バスやレンタカー、レンタサイクルの予約など
※TOHOKU MaaS公式サイト:https://lp.tohoku-maas.com/
ちなみに、このTOHOKU MaaSは弊社がサポートさせていただいている取り組みですので、更に詳しい話を聞きたい方はお気軽にお問い合わせください。
このように便利に観光地を巡れる仕組みを整えることは、観光客の満足度を上げるだけでなく、より広いエリア・より多くのスポットを周遊してもらうことに繋がり、結果として地域全体が潤うことになります。
観光客も地域も喜ぶ、Win-Winな仕組みですね。
観光型MaaSを活用したニューノーマルの観光の形
新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受けた業界の一つと言っても過言では無い「観光産業」。日本各地の自治体や観光に携わる人々が大きな打撃を受け、コロナ終息後にも不安を抱いているとの声を耳にします。
そんなアフターコロナ、ニューノーマルの観光において観光型MaaSは大きな役割を担う可能性を秘めています!
例えば、スマホの画面を見せるだけで電車やバスを利用できるデジタルパスは、対人接触を避けたい観光客のニーズに合致します。チケット購入や入場のために長い列に並ぶ必要も無くなります。
また駅や観光施設の混雑状況をリアルタイムにスマホに表示する機能は、密を避けるための情報収集に使えますので、混雑状況と併せて近隣の観光情報を紹介すれば、混雑回避のための時間潰しにもう一か所追加の観光を促すことができるかもしれません。
他には、季節や混雑状況に合わせて料金を変動させることで需要と供給のバランスを調整するダイナミックプライシングの仕組みを取り入れて、観光客を分散させるといった対策も考えられます。
さらにターゲットという面で見てみると
外国人観光客にとっては、会話の負担が無くスマホ一つで利用できるMaaSは非常に便利なサービスですので、コロナ禍で落ち込んだインバウンド需要の喚起にも有効な施策だと考えられます。
必要なプラットフォーム
先程ご紹介した「TOHOKU MaaS」以外にも、「ゆるりゆったり涼み旅 金沢」(石川県・金沢市)や「まるっと戸隠」(長野県・長野市)、「TOHOKU MaaS(仙台・宮城 trial)」(宮城県・仙台市)など、各地で実施されている実証事業の多くに、実は同じプラットフォームが使用されています。
それが「wallabee(ワラビー)」です。
スマートフォンのブラウザで交通機関や商業施設、イベントなどのチケットの購入・管理・使用ができる、アプリのダウンロードが不要な電子チケットサービスで、MaaSに必要な会員登録機能、チケット販売機能、決済機能、チケット認証機能などがすべて備わっています。
MaaS関連の実績が豊富なサービスですが、他にも民間イベントで利用されており、幅広くイベント等での活用が可能です。
昨年には東日本旅客鉄道株式会社が高輪ゲートウェイ駅前特設会場で開催した期間限定のイベント「Takanawa Gateway Fest」において、入場やコンテンツの体験予約などでwallabeeのQRコード認証機能を活用し、受付オペレーションの簡略化を図りました。
まとめ:ニューノーマル時代の観光は観光型MaaSで変わる!
観光型MaaSは、単に利便性を高めるだけでなく、安心して観光できる手段として、アフターコロナの観光産業と地域を活性化させる可能性を秘めています。
観光客にとっても地域にとってもメリットのある取り組みとして、観光型MaaSがこれからの観光産業回復の起爆剤になってくれることを期待せずにはいられません。
ちなみに、当社はTOHOKU MaaS をはじめ多くのMaaS実証実験に携わってまいりましたので、その知見を活かしてMaaSに興味をお持ちの方々のサポートが可能です。
詳しい話を聞いてみたいという方がいらっしゃいましたら、まずは当サイトの運営会社である当社ジェイアール東日本企画までお気軽にご連絡ください。