こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のテーマは「シニアマーケティング」です。
当社はJR東日本のシニア・プレシニア向け旅行会員組織「大人の休日倶楽部」の会員誌の編集や企画・運営を20年以上サポートしてまいりました。この長年積み重ねた業務の知見を活かして、シニアマーケティング実践のポイントをお話しします。
・これからシニア向け商材・サービスの展開を検討している方
・シニア向けプロモーションの打ち手にお悩みの方
・シニア層に効率的にアプローチする方法を探している方
に向けてマーケティング実践のヒントになるコラムです。
シニアの定義
シニアマーケティングをご説明する前に、まず「シニア」とは誰を指すのかを整理しましょう。
「シニア」の定義は非常に曖昧で、法的に明確な基準は存在しません。ただ世界保健機関(WHO)や厚生労働省が65歳以上を「高齢者」と定義していることから、最近ではこの65歳以上をシニアと捉えるケースが多くなっています。
よって本コラムでは65歳以上の人をシニアと呼ぶことにします。
※2024年5月の経済財政諮問会議にて【65歳以上】という高齢者の定義を5歳引き上げて【70歳以上】にすることを検討すべきとの提言が出されましたが、それを受けて厚生労働大臣が「年金支給開始年齢の引き上げ」や「介護保険制度の適用範囲の見直し」については明確に否定したことが話題になりました。
シニアマーケットの概況
3人に1人がシニアになる時代はすぐそこ
2023年9月時点で日本の65歳以上の人口は約3,623万人。
総人口1億2,442万人に対して占める割合は29.1%で、国民の4人に1人以上がシニアという状況です。この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には34.8%になると見込まれています。
つまりあと十数年で国民の3人に1人以上がシニアということです。
市場規模は100兆円
少し古いデータではありますが、旧みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)産業調査部によると2025年までにシニア市場の規模は100兆円を超える見通しです。
出典:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1039_03_03.pdf
今後日本全体の人口は減少し、多くのマーケットが縮小していくことが確実となっています。そんな中、人数も割合も増加を続けるシニアマーケットは、数少ない成長市場であり、多くの業界が注目しています。
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シニア市場に関してはこちらのコラムでも詳しく解説しています。
シニアマーケティングとは
シニアマーケティングとは、このシニア層(65歳以上の男女)にターゲットを絞ったマーケティング活動のことです。
近年拡大を続けるシニア市場を狙って参入してくる企業は後を絶たず、シニア市場はすでにレッドオーシャンになりつつあります。競合ひしめく中でターゲットに自社の商品・サービスを選んでもらうためには、シニア層の特性や本質、シニア層を取り巻く環境や現状を正しく理解する必要があり、このシニアマーケティングの重要性が増しています。
シニアマーケティング成功の4大ポイント
それではシニアマーケティングで成果を上げるためにはどうすれば良いのでしょうか。ここからはシニアマーケティング成功のために重視すべきポイントを4つご紹介します。
ポイント①:シニア層の価値観を理解する
近年「Z世代」について「こんな価値観を持っている、こういうことに興味を示しやすい、こんな消費傾向がある…」と、マーケティング視点から注目を集めています。それと同様に、シニア世代にもある程度世代特有の特徴がみられます。まずそれを理解することは重要なステップです。
◆興味関心を把握する
こちらはソニー生命が行った「シニアの興味関心事」の調査結果です。
「健康」「旅行」「お金・財産」「グルメ」が興味関心の上位にランクインしています。
身体の衰えを感じ始めるシニア層にとって、健康や体力維持に関心が高いのは当然と言えば当然ですし、時間とお金に比較的余裕がある人が多いので「旅行」が上位にくるのにも納得がいきます。
こういった興味関心の高いコト・モノに基づいてコンテンツの提供やプロモーションを実施することは、集客や商品購入への近道です。
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こちらのコラムでは、昨今のシニアトレンドを雑誌の特集から読み解いています。ぜひ参考にしてみてください。
◆消費に「納得感」「安心感」を与える
シニア層は消費行動に慎重な側面があります。
その背景には
・現役時代より収入が減り、年金や貯蓄で生活しているケースが多いこと
・「この歳になって失敗したくない」と失敗を避ける思考が働くこと
・長い人生経験で、商品・サービスを見る目が肥えていること
などがあるようです。
こういった価値観を持つシニア層の消費を促すためには、「この商品を買うことで具体的にどんなメリットがあるのか」という【納得感】と「この商品を買っても失敗することはなさそうだ」という【安心感】を与えることが重要です。
具体的には
・購入前に実際に商品・サービスに触れるトライアルやモニターの機会を作る
・口コミ・レビューなどを掲載することで第三者の意見を活用する
といった施策が有効です。
ポイント➁:シニア層をひとくくりにしない
みなさんは「シニア」と聞いてどんな人を思い浮かべますか?
足が不自由で、主に家でのんびりと老後生活をおくっている人でしょうか?
それとも夫婦で頻繁に旅行したり、登山したりすることが趣味のアクティブな人でしょうか?
現代においてシニアを一つのステレオタイプで表現するのは不可能と言えます。
65歳以上の人を「シニア」と定義しましたが、その数は3,600万人以上。
その中には、男性もいれば女性もいます。
年齢が60代の人もいれば、90代の人もいます。
現役で仕事をしている人もいれば、介護を必要とする人だっています。
それを一つにくくろうとすることに無理があるのは明白ですよね。
「シニア」という言葉でターゲットを絞り込んだつもりになってしまうこと=シニアを一つの属性と考えてしまう行為こそがシニアマーケティング失敗の一番の要因と言っても過言ではありません。
◆属性で分類する
いわゆる「シニア」の中には、さまざまなライフスタイル、健康状態、趣味嗜好を持った人々がいます。そのため年齢や性別だけで分類するのも正しい方法とは言えません。ここでは代表的な分類をご紹介します。
・アクティブシニア
アクティブシニアとは、身体的に健康で行動的、かつ意欲的に仕事や趣味の活動に取り組む活発な高齢者を指します。
自立意識が高い、健康に対する意識が高い、新しい価値観を柔軟に受け入れるといった特徴を持っています。
・パッシブシニア
パッシブシニアとは、日常的に家族や医療従事者、介護スタッフなど第三者の支えが必要な、要介護状態のシニアのことです。
高齢になればなるほどその割合は高くなります。 収入源は年金のみの場合がほとんどで、介護度合いにもよりますが、日常生活範囲が狭くなってくるのが特徴です。
・ノンアクティブシニア
アクティブシニアとパッシブシニアの中間に位置する層です。
身の回りのことは自分でできる程度に健康的ですが、アクティブシニアと比べると、在宅志向が強いのが特徴です。自身の健康や生活・経済面など、今後の人生に漠然と不安を抱えており、積極的に活動しきれない傾向があります。
※この分類は一例で、この他にも各研究機関がさまざまな分類を提唱しています。
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3分類の中でもアクティブシニアは消費ポテンシャルの高さから特に注目されているカテゴリーです。アクティブシニアについて、さらに詳しく知りたい方はこちらのコラムも合わせてご覧ください。
◆ペルソナを明確にする
「ペルソナ」とは、架空の顧客プロフィールのことです。年齢や性別、居住地、年収、家族構成といった個人の状況を示す一般的な情報だけではなく、価値観や性格、習慣やライフスタイルなど、生活にまつわる情報まで、人物像を細かく設定します。
具体的に自社の顧客像を描くことで、ターゲットの精度が上がり、マーケティング戦略に反映しやすくなるというメリットがあります。
プロモーションを行う上で、このペルソナ設定は欠かすことのできない工程です。
シニア全員に受け入れられようとするのではなく、その商品・サービスを誰に届けたいのかを明確にし、ペルソナをしっかり描くことが重要です。このペルソナを設定することで、的確にそのターゲットに対してアプローチできるようになります。
ポイント➂:メディア接触の固定観念を捨てる
◆メディア接触状況をデータで把握する
「お年寄りはインターネットなんてほとんど使わない」
「シニアにはオフラインのコミュニケーションだけで大丈夫」
こういったターゲットへの先入観を持っている方に時々出会うことがあります。しかしデータを見るとそれがただの思い込みであることが明白です。
総務省情報通信政策研究所の「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、60代のインターネット行為者率は年々伸びていることがわかります。
60代の78.5%がインターネットを利用しており、他のメディアとの比較でもテレビに次いで2番目に多くなっています。
さらに「趣味・娯楽に関する情報を得る」メディアという問いでは、60代でもインターネットがトップ(43.0%)となり、日々の情報収集に欠かせないメディアになっていることがよくわかります。
出典:総務省情報通信政策研究所 令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
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シニアのインターネット利用状況については、こちらのコラムで詳細に解説しています。
◆オンライン・オフラインを併用する
シニア世代においてもインターネットの影響力が増していることがよくわかりました。しかしその一方で、シニア世代においてはテレビ・新聞・雑誌といったメディアが未だに大きな影響力を持っていることも忘れてはいけません。
先のグラフを見ると、(テレビが大きなパワーを持っているのは言わずもがなですが)新聞や雑誌といったオフラインの紙媒体が一定のポジションを保っていることは注目に値します。
近年、紙媒体の広告価値低下が叫ばれていますが、60代では必ずしもそうとは言えないのが大変興味深いポイントです(今回の調査に含まれていない70代以上ではさらにその割合が高まると推測できます)。
他の年代とは全く違うメディア接触傾向を持つシニア層。このシニア層にアプローチするには、オフライン(アナログ)とオンライン(デジタル)を組み合わせたメディア戦略を策定する必要があります。
ポイント➃:デザインや表現に配慮する
◆UI・UXを意識したデザイン・言葉選びをする
続いて、広告の表現面でも大切なポイントが存在します。
それは高齢者に配慮したUI・UX設計※をすることです。
※UI:ユーザーインターフェースの略で、サービスやプロダクトとユーザーの接点を表す。例えば、Webサイトやアプリの場合、画像や文字、ボタン、入力フォームなど、ユーザーの視界に触れるすべての要素。
※UX:ユーザーエクスペリエンスの略で、製品やサービス、システムなどの利用を通じてユーザーが得る体験すべてを表す。商品の使用前、使用中、使用後まで、商品を通じて得た体験すべてが「ユーザー体験」。UIはUXを成す一要素。
具体的には
・読みやすくする(文字を大きく、行間を取る、シンプルな書体)
・判別しやすい色を使う(文字と背景のコントラスト、配色)
・わかりやすい言葉を使う(IT用語などの難しい単語を使わない)
などの工夫です。
シニア層の多くは視覚的な懸念を抱えています。老眼や視力の低下にとどまらず、周辺視野のぼやけ、光覚の減少、色彩判別能力の低下等、老化に伴ってさまざまな問題を抱えているシニアが存在します。
シニア向けサービスのデザインにおいては、こういった視覚的な問題に配慮したUIが何よりも優先されるべきです。
また言葉選びも重要な要素です。一般的には理解できる表現であったとしても、それがシニア層にとってわかりやすい表現かどうかは改めて意識するべきです。
例えば、IT用語やカタカナ言葉の中にはすでに一般用語化しているものが数多く存在します。しかし若年層や現役世代にとっては当たり前の用語がシニアにとっても当たり前とは限りません。無意識に使用している用語にも注意が必要です。
◆お年寄り向けの表現を使わない
表現面でもう一つポイントがあります。それはお年寄り向けの表現を使わないことです。
先ほどまでと真逆のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、先にお話ししたのは「高齢者への配慮」で、ここからお話しするのは「高齢者扱い」の注意です。
株式会社ハルメクが実施した「孫と敬老の日に関する意識調査」の結果を見ると、50~84歳女性の約40%が「敬老の日にお祝いされたくない」と回答、「お祝いされたい」(18.3%)の2倍以上となっています。お祝いされたいと思わない理由は「祝われる年齢ではないと思うから」「老人扱いされているように感じるから」が多く、60代・70代でもまだまだ現役意識がみられる結果となっています。
このように高齢者扱いされることへの抵抗感を持っていたり、そもそも自分をシニアだと思っていないシニアが多く存在します。そんな人たちに「お年寄りの方へ~」「高齢者向け~」と表現することは得策とは言えません。
その対応策として「高齢者向け」を表現する際のテクニックを一つご紹介しましょう。
それは「年齢=事実」をキーワードにすることです。
お年寄り扱いをされるのは嫌でも、年齢という数字(事実)なら受け入れてしまう傾向があるのです。
例えば「お年寄り向け」ではなく「70歳以上の方向け」「65歳からの~」のように年齢で括れば、それは「事実」なので、自分事として捉えることができるということです。
シニアマーケティングの成功事例
●JR東日本「大人の休日倶楽部」
「大人の休日倶楽部」はJR東日本が運営するシニア・プレシニア向け旅行会員組織で、50歳以上の累計会員数280万人を数えます。
シニア層の興味関心が高い「旅行」を軸とした会員サービスで、会員限定のお得な割引きっぷを購入できたり、限定イベントに参加できたり、さまざまな特典サービスを受けられます。「趣味の会」と呼ばれる会員向けカルチャースクールで、文化・暮らし・健康・音楽などさまざまなジャンルの講座が受けられるのも特徴です。
大人の休日倶楽部が成功した要因には、それまで主流だった「パック旅行」や「団体旅行」でお決まりのコースを回るのではなく、興味の趣くままに乗り降りできる、自由でアクティブな旅行スタイルがうけたこと。趣味の会を充実させて趣味を細分化させたことで、シニア層の多彩な興味関心に応えたことなどが挙げられます。
申し込み方法は、オンライン(インターネット)とオフライン(郵送・店頭)いずれからでも可能で、シニア層のライフスタイルに合わせた窓口を用意しています。
またキャッチコピーにもシニアの心をつかむ工夫があります。
「大人になったら、したいこと。」
本来の意味は「リタイアしたら、したいこと。」「年をとったら、したいこと。」なのですが、誰も不快にならないワードを使ってコミュニケーションしていることが大きなポイントです。
シニアアプローチにおすすめのメディア
ここでシニアへのアプローチにおすすめの広告メディアを一つご紹介します。
先ほどご紹介した「大人の休日倶楽部」は、日本最大級のシニア・プレシニア会員組織です。会員の方には月に一回自宅へ会員誌が送られてくるのですが、実はこの会員誌に広告を掲載することができます。
アクティブシニアだけにピンポイントでアプローチできるメディアは多くないので、50歳以上(半数以上が60歳以上)の、旅行を趣味とする活動的な方だけにターゲティングできるのは非常に魅力的です。
こちらに資料をご用意しているので、ご興味がある方はぜひアクセスしてみてください。
また期間限定で上記の「大人の休日俱楽部」会員誌広告とJR東日本が保有する顧客データを活用したWeb広告「JRE Ads」を掛け合わせた広告パッケージメニューもご紹介可能です。
「JRE Ads」はJR東日本グループが保有する、移動や購買などのユーザーデータを運用型広告に活用できるWeb広告で、特定の駅利用者への配信、指定の商品購入ユーザーへの配信など、独自のターゲティングが可能です。
なんといってもSuicaの移動履歴=確定データを用いた精度の高いエリアターゲティングができるのが大きな特徴です。
大人の休日倶楽部会員誌広告と掛け合わせることで、より効率的にシニア層にアプローチできるメニューです。ご興味のある方はこちらのページをご覧ください。
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シニア向け広告メディアについてまとめたこちらのコラムも参考にしてみてください。
まとめ:自社のターゲットを具体化して、シニアに合わせた戦略設計を
超高齢社会が進む日本において、今後もシニアマーケティングの重要性は増していくことが予想されます。他社に後れを取らないためには、思い込みではなくデータとノウハウに基づいて丁寧にマーケティング戦略を立てることが重要です。
本日お話ししたシニアマーケティングの4つのポイントはそのほんの一部ですが、まずは第一歩としてこれを意識して取り組んでみてください。
ポイント①:シニア層の価値観を理解する
→興味関心を把握する
→消費に「納得感」「安心感」を与える
ポイント➁:シニア層をひとくくりにしない
→属性で分類する
→ペルソナを明確にする
ポイント➂:メディア接触の固定観念を捨てる
→メディア接触状況をデータで把握する
→オンライン・オフラインを併用する
ポイント➃:デザインや表現に配慮する
→UI・UXを意識したデザイン・言葉選びをする
→お年寄り向けの表現を使わない
そして次のステップに悩んだら、本サイトの運営会社である当社ジェイアール東日本企画へお気軽にご相談ください。大人の休日倶楽部に限らず、貴社に合わせたシニアマーケティング戦略の策定をお手伝いさせていただきます。