グランドジェネレーションを動かすマーケティング戦略

キクコト 編集部

こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のコラムのテーマは「グランドジェネレーション(G.G)」です。

日本は今、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。その中で、従来の「シニア層」という枠組みでは捉えきれない、新たな消費主体が台頭してきました。

それが「グランドジェネレーション(G.G)」です。

このコラムでは

・グランドジェネレーションとは何か
・グランドジェネレーションの消費行動とインサイト
・グランドジェネレーションを動かすマーケティング戦略
・グランドジェネレーション向け施策の具体例

について解説します。

グランドジェネレーションに対するアプローチを検討している方はもちろん、シニアマーケティングについて何らかの課題がある方の参考になるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

↓ グランドジェネレーション(G.G)を含むシニア全般について知りたい方はこちら ↓
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1-1. 「グランドジェネレーション(G.G)」の定義と背景

「グランドジェネレーション(G.G=Grand Generation)」とは、脚本家・プロデューサーの小山薫堂さんが2010年代に提唱した概念です。

「定年後の第2の人生を行動的、積極的に楽しむ人々」を指し、それまでの「リタイア層」、「シルバー世代」といった言葉からステレオタイプに想起されるイメージから、高齢世代をとらえなおしたものです。

一般的には、60代〜80代前半を中心とした世代が該当するとされますが、重要なのは年齢そのものではなく、ライフスタイルと社会的役割の変化です。この世代は、以下のような特徴を持っています。

・高度経済成長期〜バブル期を経験し、比較的安定した資産を保有
・定年後も「第二の人生」としてアクティブに活動
・孫世代との関係性が強く、消費への影響力が大きい
・健康寿命の延伸により「まだまだ現役」という意識が強い

特に日本では、総務省のデータでも、2024年の時点で65歳以上人口が総人口の約3割に迫るなど、超高齢社会が本格化しています。その中で、「支えられる存在」としてのシニアではなく、市場を動かす消費主体としてのシニアが重要視されるようになっています。



1-2. 従来のシニア層との違い

従来のシニア層とグランドジェネレーションの最大の違いは、彼らの消費行動を「守りの消費」から「攻めの消費」に捉えなおしたことです。

かつてのシニアは、しばしば以下のような特徴で語られました。

・節約志向が強い
・健康、介護といった限定的ニーズ
・新しいものへの抵抗感がある
・デジタル活用が苦手

しかし、現在のグランドジェネレーションはこれとは明らかに異なります。

■ アクティブで自己投資志向が強い

たとえば、旅行、趣味、習い事、フィットネスなど、自分の人生を豊かにする消費に積極的です。コロナ以降でも、回復が早かったのは国内旅行や高付加価値体験型消費と言われており、この世代の消費余力の強さが表れています。


■ デジタルとの距離が縮まっている

意外に思われがちですが、スマートフォンはこの世代にも普及しています。LINEやYouTubeを日常的に使う人も増え、「デジタル弱者」と一括りにはできない状況です。

もちろん、Z世代のようなネイティブとは異なりますが、「必要なら使う」「便利なら取り入れる」という実利重視型のデジタル活用が特徴です。

この世代のデジタル関連サービスの利用について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。



1-3. グランドジェネレーション(G.G)が注目される理由

このグランドジェネレーションが、企業のマーケティング担当者に重要視される理由は大きく3つあります。

① 市場規模の圧倒的な大きさ

前述の通り、日本は世界でも有数の高齢化社会です。しかもこの世代は、若年層と比較して貯蓄額・可処分所得が高い傾向にあります。

総務省の調査によると、

・世帯主が50歳以上になると、一般的に貯蓄が負債を上回る。
・60歳以上になると、貯蓄と負債の差額は2,000万円を超える。
・70歳以上の世帯の貯蓄額は2,425万円と最も多い。

という結果が出ています。

出典:総務省統計局「家計調査報告(2023)」

つまり、「人数が多く、購買力もある」極めて重要な世代なのです。

② 家族・周囲への影響力

グランドジェネレーションは、自分自身の消費だけでなく、家族全体の消費に影響を与える存在です。

例えば:

孫へのプレゼント・教育支出
子世代との旅行や外食
住宅購入・リフォーム・保険加入などの意思決定

複数世代にまたがる購買行動のハブになっている点が大きな特徴です。企業側から見れば、「1人の顧客が複数の市場に波及する」非常に効率の良いターゲットとも言えます。

③ 長期的な関係構築が可能

若年層に比べて、ブランドに対するロイヤリティが高くなりやすいのも特徴です。一度信頼を獲得できれば、長期にわたるリピートや口コミが期待できるため、LTV(顧客生涯価値)が高くなります。

特に医療、金融、住宅、旅行など、「安心・信頼」が重視される業界では、この傾向が顕著です。

上記の裏返しですが、ブランドチェンジは起こりにくいのが特徴です。既に「これ」と決めているグランドジェネレーションの気持ちを変えるには、かなりのコストが必要になるでしょう。

2-1. 購買行動の特徴と意思決定プロセス

グランドジェネレーションの購買行動を理解する上で重要なのは、「慎重だが、納得すれば動く」という意思決定の特徴です。

■ 比較検討のプロセスが長い

この世代は、衝動買いよりも情報収集と比較検討を重視します。特に高額商品やサービスにおいては、

店舗での説明を受ける
家族に相談する
ネットで口コミを確認する

といったプロセスを経ることが一般的です。

※当然ですが、グランドジェネレーションはネット利用を頻繁に行います。調べ物があるとき、60代の72.6%が「インターネット検索」で解決しています。

出典:総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」


■ 価格ではなく「納得感」で判断する

重要なのは、「最安値」ではなく「自分が納得できるかどうか」です。
もし多少価格が高くても、

アフターサービスが充実している
説明が丁寧で信頼できる
実績があり安心できる

といった要素が揃えば、購入に至ります。

■ 口コミ・第三者評価の影響が大きい

若年層と同様に、この世代も口コミを重視します。ただしSNSの「バズ」よりも、「実際の利用者の声」「専門家の評価」といった信頼性の高い情報が重視される傾向にあります。

2-2. デジタルとの関わり方と情報収集傾向

グランドジェネレーションのデジタル利用は、「使いこなす」というよりも目的志向型です。

■ よく使われるデジタルチャネル

特に利用率が高いのは以下です。
・SNSの利用(家族・友人とのコミュニケーション)
・情報検索(Google・Yahoo)
・電子メールの送受信

YouTubeなどの動画サイトの利用も多いものの、他世代よりは下回ります。

出典:総務省「令和3年版 情報通信白書|インターネットの利用状況



NTTドコモの調査によると、特にLINEの使用率は高く、60歳~79歳の4人に3人が利用しています。

出典:NTTドコモ モバイル社会研究所「シニアの生活実態とICT利用」



■ 検索行動が重要な接点になる

この世代も、他世代と同様、疑問や関心が生まれると「まず検索」します。そのため、SEO対策されたオウンドメディアや比較記事、解説コンテンツは非常に有効です。

例えば:

「60代 旅行 おすすめ」
「老後 資産運用 安全」
「健康維持 方法 シニア」

といったキーワードでの流入は、まさにこの層を狙ったものです。

■ オンラインとオフラインを行き来する

特徴的なのは、オンラインだけで完結しないことです。Webで情報を調べた後、最終的には店舗や対面で意思決定するケースも多く、「OMO(Online Merges with Offline)」的な体験設計が求められます。

2-3. 価値観・ライフスタイルに見る消費の本質

グランドジェネレーションの消費を理解するためには、その背景にある価値観を押さえることが不可欠です。

■グランドジェネレーションは、働いている人が多い。

まず前提として、日本では60歳以上の就業者が増えています。

65~69歳で52.0%、2人に1人が働いており(過去10年連続して上昇中)、70歳以上でも約5人に1人が就業しています(18.4%)。

60代以上を即リタイア層とみなすことは、明確に誤りとなっていますので、この層へのアプローチの際は、まずこれを前提としたターゲットマインドの整理が必要になるでしょう。

■ 健康と時間の価値が最優先

この世代にとって最大の関心事の一つが「健康」と「時間」です。
つまり、

健康寿命を延ばせるか
有意義な時間を過ごせるか

という観点が、商品選択の軸になります。

株式会社ハルメク・エイジマーケティングの調査によると、50~79歳が1年間で健康にかけている平均金額は全体で138,569円。
「運動サービス」や「サプリメント」や「健康食品」などにかけるお金は増えている傾向です。


■ 「安心・信頼」が最終判断を左右する

最終的な意思決定では、「信頼できるか」が非常に重要です。

企業の実績
口コミや評判
対応の丁寧さ

こうした要素が揃うことで、初めて購入に踏み切るケースが多く、逆にここを軽視すると、どれだけ良い商品でも選ばれません。

3-1. 「機能訴求」だけでは動かない──意思決定のトリガーを見誤らないように

グランドジェネレーションに対して、よくある失敗が「機能や価格を前面に出せば売れる」という前提です。
しかしこれは必ずしも当てはまりません。

もちろん、この世代も合理的に判断はします。ただしそのプロセスは、若年層とは決定的に違います。若年層の場合、

他商品・サービスと比較する
スペックを見る
価格で判断する

という比較的シンプルな流れで意思決定が進みます。

一方でグランドジェネレーションは、

情報を集める
内容を理解する
自分の中で納得する
最後に「信頼できるか」で決める

という、「自己納得型プロセス」で動きます。

消費者庁の「消費者意識基本調査」(2021年度)によると、「商品やサービスを購入する際、何をどの程度重視しているか」を聞いたところ、「品質・性能の良さ」について「重視している」(「とても重視している」又は「ある程度重視している」の計)と回答した人の割合は、全体が95.3%、65歳から74歳までが94.7%、75歳以上が89.5%という結果になりました。これは高齢者と全体の両方で、重視する人の割合が高いです。

一方高齢者は、「アフターサービスや保証の充実」を重視しています。「アフターサービスや保証の充実」を「重視している」と回答した人の割合は、全体が62.4%、65歳から74歳までが74.6%、75歳以上が71.2%で、ここに違いが出てきます。

また、「流行や話題性」もあまり重視しません。

以下は、消費者庁の「消費者意識基本調査」(2021年度)の、「商品やサービスを購入する際に重視しているもの」に関する回答の割合の差(65歳以上・65歳未満)を表したグラフです。

つまり重要なのは、「いかに他の人にとっても優れているか」ではなく「なぜ自分にとって意味があるのか」です。

この違いを無視して、

機能比較表
最安値訴求
過剰なスペック説明

といった訴求をしてしまうと、「よく分からないけど難しい」「そこまで必要ない」と判断され、静かに離脱されます。

逆に刺さるのは、

どんな人が、どう悩んで、どう変わったか
なぜこの商品・サービスが生まれたのか
どういう場面で役立つのか

といった「納得を導く情報」です。

「自分の判断として腹落ちする状態」を作ることが重要で、グランドジェネレーションのマーケティングは、「説得」ではなく「納得設計」から始まります。

3-2. 「接点の多さ」ではなく「接点の質」で勝つ

デジタルマーケティングの文脈では、「接触回数を増やす」「リーチを最大化する」といった発想が主流です。

しかし、グランドジェネレーションにおいては、この前提もそのまま当てはまりません。

むしろ逆で、重要なのは「どれだけ接触したか」ではなく、「1回の接触で何を感じたか」です。

ここでも消費者庁の「消費者意識基本調査」(2021年度)を見てみると、60歳代以上は「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べるか」という問いに対して、他世代に比べて「当てはまらない」という回答をしています。

「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」という問への回答の割合(年齢層別)

つまり商品購入時、他の世代が入念に、機能や品質を調べるため事前に何度も商品情報にアクセスするのに比べ、グランドジェネレーションとは何度もコンタクトを取ることができないので、逆説的ですが、1回1回の接点が非常に重要になります。

たとえば、

Webサイトの説明が分かりにくい
電話対応が事務的
店舗スタッフの説明が曖昧
デザインが見にくい

こうした小さな違和感が、そのまま「この会社は信頼できない」という判断に直結します。
逆に言えば、

説明が非常に分かりやすい
質問に対して丁寧に答えてくれる
不安を先回りして解消してくれる
デザインが見やすい

こうした体験は、それだけで「ここにしよう」という意思決定を後押しします。

特に、彼らとの接点の初手で、「デザインが見にくい」と躓かれてしまうと、リカバリーが難しくなります。

グランドジェネレーションも含めた「シニア向けのデザイン」については以下のコラムで詳しく解説していますので、参考にしてください。

東日本旅客鉄道株式会社「大人の休日倶楽部」

【目的】

50歳からの旅と暮らしを応援する、会員組織「大人の休日倶楽部」への入会促進を図ると共にターゲット世代の旅行需要を喚起し、鉄道の旅を促進すること。

【内容】

2025年3月よりメインキャストに新たに竹野内豊さんを起用し、「大人はみんな、旅の途中。」をキャッチコピーに広告を展開。竹野内さんが演じる主人公が、自分たちの世代らしい「大人になること」の答えを探していく旅のストーリーを描いています。

20年以上続く広告シリーズのリニューアルとなり、メインキャスト、キャッチコピーなどを一新しつつ、プレシニア・グランドジェネレーションの気持ちを捉える展開を継続しました。

ローンチ時には記者発表も行い、TVCM・交通広告をはじめ、新聞、ラジオ、バス、タクシー、WEB広告等、あるゆるメディアで話題化を図りました。

【参考】「大人の休日倶楽部」について

「大人の休日倶楽部」は、50歳からの旅と暮らしを応援する、JR東日本の会員向けサービスです。

<主な会員特典>

 1.JR東日本線・JR北海道線のきっぷが何回でも5%・30%割引
 2.「大人の休日倶楽部パス」など、会員限定の割引きっぷや旅行商品など
 3.使うほど貯まるポイントは、Suicaにチャージしたり、ステキな商品と交換可能
 4.会員限定の各種特典やイベント、地域の文化・歴史講座などの学びの場を提供

この「大人の休日俱楽部」には会員誌があり、その発行部数は100万部を超えます。

旅行や趣味に興味を持ち、消費意欲・行動意欲の強いグランドジェネレーションの読者が多いことが特徴なので、アプローチの手段として当誌への広告出稿は有効です。

「大人の休日俱楽部」会員誌の詳しい情報は、下記からダウンロードしてください。


グランドジェネレーションを動かすマーケティング戦略は、今のシニア層の正しい姿をとらえることで見えてきます。

本記事で解説してきたポイントを整理すると、重要な示唆は以下の通りです。

・「高齢者」という一括りではなく、価値観・ライフスタイル・消費意欲において多様でアクティブな存在。
・節約志向やデジタル弱者といった従来のイメージは必ずしも当てはまらない
・購買行動においては、価格と同様、納得感と信頼性が重視
・短期的な訴求よりも中長期的な関係構築が不可欠
・数少ない接点における「質」が重要

グランドジェネレーション市場は、今後ますます拡大し、同時に競争も激化していくことが予想されます。だからこそ今、表面的な年齢属性ではなく、「人としての価値観や行動」に寄り添ったマーケティングへと進化することが求められています。

当社ジェイアール東日本企画は、グランドジェネレーション・シニア市場に向けたプロモーション・コミュニケーションに関する多数の知見・経験を有しています。

グランドジェネレーションとのコミュニケーションに課題を感じている方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

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