こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
デジタル広告の運用が当たり前となった一方で、実店舗を持つ企業のマーケティング担当者からは、次のような声を多く耳にします。
「Web広告の成果が来店や売上にどうつながっているのかわからない」
「より効率的に来店しそうな潜在顧客へ広告配信を行いたい」
こうした課題を持つ企業におすすめなのが位置情報マーケティングです。本記事では、位置情報マーケティングの基本的な考え方から、実店舗マーケティングで成果を出すためのポイント、そして具体的な活用例までを紹介します。

位置情報マーケティングとは?
位置情報マーケティングとは、顧客の移動や行動といった位置情報データをもとに、来店につながるマーケティング施策を設計する手法です。
単に潜在顧客が「今どこにいるか」を把握するだけでなく、
・どんな人(年齢・性別・趣味嗜好)がどのような行動をしているのか
・どのエリアに、どの時間帯に人が集まるのか
・どのような場所を経由して移動しているのか
といった行動データを分析・活用できる点が特徴です。
これにより、従来のオンライン広告では見えにくかった実世界での顧客行動(来店・回遊)を指標として捉えられるようになります。
この情報をマーケティング施策に活用することで、特定のエリアにいる人に限定して広告を配信し、無駄を減らしたり、店舗付近でリアルタイムにクーポンを配布したりするなど、より効率的にユーザーと接触できるようになります。
■主に利用される位置情報データの種類
位置情報マーケティングでは、GPSやWi-Fiなど複数のデータを組み合わせることで、生活圏や回遊パターンを立体的に捉えることができます。
位置情報の取得には、次のような技術が活用されます。単にユーザーの行動履歴だけでなく、特定の個人や集団が「いつ・どこに・どれくらい滞在したか」を分析し、生活圏や回遊パターンを把握することが可能です。
・GPS(衛星測位)
屋外での精度が高く、数メートル単位で位置を把握できる仕組み。スマートフォンの基本機能として広く利用されています。
・Wi‑Fi
アクセスポイントの位置情報を利用することで、建物内などGPSが苦手な環境でも安定した位置推定が可能です。
・Bluetooth Beacon(ビーコン)
数メートル以内の細かい位置検知ができるため、来店計測や店内での行動把握に向いています。
・通信基地局情報
広い範囲の移動や人流を把握する際に利用され、大まかな位置の把握に適しています。
なぜ今、位置情報マーケティングが注目されているのか
Cookie規制やOMOの進展を背景に、オンラインとオフラインをつなぐ行動データとして、位置情報の重要性が高まっています。
サードパーティCookieの利用制限が進み、従来のWebトラッキングだけではユーザーの解析が難しくなっています。本人の同意を得て取得する「位置情報」というオフライン上での行動データは信頼性の高い顧客データとして注目されています。
ECの普及により、ほとんどの企業がオンラインで情報発信できるようになり、オンライン施策だけでは差別化が難しくなっています。口コミやレビューなどの比較情報をもとに顧客は事前に十分検討できるようになり、広告だけで購買を後押しすることは難しくなりました。
こうした状況の中、実際に商品を見て体験し、すぐに購入・利用できる実店舗ならではの体験価値が改めて注目されています。
その結果、来店客数やリアルな顧客接点をどう創出するかが、多くの企業に共通するテーマとなっています。
オンラインとオフラインを分断せず、一気通貫で顧客体験を設計するOMO(Online Merges with Offline)において、位置情報は両者をつなぐ重要なデータとなります。
OMOマーケティングについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
位置情報マーケティングが向いている企業・業界
位置情報マーケティングは、来店・来訪といったリアルな行動を重視する業界と特に相性が良い手法です。
具体的には、以下のような企業・業界で活用しやすい特徴があります。
■実店舗・施設を持つ業界
・商業施設(駅ビル、ショッピングモール)
・小売業(特にアパレル、雑貨、化粧品など自社店舗があるもの)
・飲食店・外食チェーン
商圏や人の流れを前提に、来店可能性の高いエリア・時間帯で接点を持つ施策設計が可能です。
■観光・レジャー関連の業界
・観光施設・テーマパーク・ミュージアム
・宿泊施設(ホテル・旅館)
・自治体・観光協会による観光プロモーション
観光客の移動や滞在エリア、曜日・時間帯による行動傾向を踏まえた情報発信ができるため、観光動線に沿った集客や混雑緩和を目的とした回遊施策などと高い親和性があります。
■エリア・立地が重要な業界
・不動産(分譲・賃貸・ショールーム集客)
・クリニック、サロン、スクール、ジムなどの来訪型サービス
位置情報マーケティングは「どこに住んでいるか」ではなく、「どこを日常的に利用・通過しているか」という視点でターゲットを捉えられる点が特長です。そのため、エリア性・移動・来訪行動が意思決定に影響する業界において、位置情報マーケティングは特に効果を発揮します。
■位置情報マーケティングが向いていないケース
一方で、以下のようなケースでは、位置情報マーケティングの重要度は低くなります。
・EC完結型で、来店や来訪を想定しないビジネス
・全国一律で同じ訴求を行う商材・サービス(コンビニやスーパー等全国的に広く販売する食品や日用品など)
・エリアや行動文脈よりも、価格訴求・即時CVを重視する施策
位置情報マーケティングは、「誰に」「どこで」「どのような行動の流れの中で」接点を持つかを設計する手法であるため、リアルな行動との結びつきが弱い場合は効果が限定的になる点に注意が必要です。
位置情報マーケティングのメリット
位置情報マーケティングを活用することで、商圏理解にもとづいた効率的な実店舗集客が可能になります。位置情報データを用いることで店舗周辺や特定エリアの人の流れを可視化し、以下のようなことがわかるようになります。
・どのエリアから来店しているのか
・競合施設との位置関係はどうか
・曜日や時間帯別の人の動き
これらの情報から、商圏の理解にもとづく販促効率の改善が可能になります。
商圏分析から、競合との比較が可能
位置情報マーケティングを活用することで、店舗周辺の商圏分析に加え、競合店舗との比較分析も行うことができます。
来店頻度や回遊傾向といった位置情報データをもとにユーザーの行動特性を把握し、自社と競合の違いや自社店舗の強みを可視化できます。
例えば、競合店舗の利用者がどのような行動パターンを持っているのか、平日と休日で来訪傾向がどのように変化するのかといった点を把握できます。これにより、日々の販促施策だけでなく、店舗運営の改善や出店戦略の検討など、中長期的な意思決定にも活かせる示唆を得られます。
広告の無駄を減らし、効率を最大化できる
位置情報データを用いるとユーザーの現在地や行動傾向をもとにターゲットを絞り込めるため、広告の無駄を抑えた効率的な配信が可能です。
従来の属性データでは居住地などの大まかな情報は把握できても、「実際にどのエリアで生活・移動しているか」までは捉えにくく、配信範囲が広くなりがちでした。
位置情報を活用すれば、「通勤・通学で平日に特定エリアを利用している人」など、行動ベースの精度の高いターゲティングが可能になります。また、商圏分析の結果をもとに、Web広告だけでなくOOH広告やポスティングなどのエリア設計にも活用でき、オフライン施策を含めた広告効率の最大化につなげることができます。
「生活動線」から来店に繋がる施策設計を考える
位置情報データは活用の幅が広い一方で、目的や視点が定まっていないと分析が複雑になりがちです。実店舗マーケティングで成果につなげるためには、闇雲にデータを見るのではなく、来店につながる行動を軸に分析の切り口を整理することが重要です。
そこで鍵となるのが、顧客の行動を「生活動線」という視点で捉える考え方です。
店舗集客を考える際、「店舗の近くにいる人(点)」だけに注目しがちですが、実際の来店はその前後の移動や行動の流れ(線)の中で発生します。例えば、「通勤・通学の途中で店舗に立ち寄っている」など、どのタイミングでどの場所で接点を持つかを考えることで、来店につながる施策設計が可能になります。
来店につながるおすすめの施策設計の3ステップ
生活動線をつかんだあとは、「来店までの行動プロセス」を設計することが重要です。
① 既存顧客・来店者の生活動線を仮説立て
まずは、自店舗に来店しているユーザーが「どのような行動の中で来店しているのか」を仮説として整理します。位置情報データをベースに、以下のような視点で分解していきます。
・どのエリアから来ているのか(居住地・滞在エリア)
・どの駅・路線を利用しているのか
・来店前後に立ち寄っている施設はどこ
・来店が多い曜日・時間帯はいつか
この段階では、完璧なデータがなくても問題ありません。
会員情報、現場の感覚、購買データなども含めて、「来店のきっかけとなる生活動線」を複数パターン仮説立てすることが重要です。
例:
・通勤途中に立ち寄るビジネスパーソン
→ 朝・夕の移動時間帯に接点を設計
・休日にまとめて買い物をする層
→ 商業施設周辺や週末の滞在エリアで接点を設計
・目的来店ではなく“ついで買い”が多い商材
→ 他施設からの回遊動線上で接点を設計
このように、「誰に・どのタイミングで・どの文脈で接触するか」を整理することで、来店につながる現実的なシナリオを描くことができます。
次に、仮説にもとづいて位置情報広告をテスト配信します。
位置情報広告(ジオターゲティング広告)とは、ユーザーの現在地や行動エリア、移動傾向といった位置情報をもとに、配信対象やタイミングを最適化する広告手法です。生活動線を前提に設計することで、不特定多数への一律配信ではなく、実店舗への来店につながる可能性が高いユーザーに対して効率的にアプローチすることができます。
また、Web広告は配信設定の変更やクリエイティブの差し替えをリアルタイムで行えるため、検証・改善のサイクルをスピーディに回せる点も大きな特長です。
例えば、反応の良いエリアや時間帯に配信を寄せたり、成果の高いクリエイティブに予算を集中させたりといった調整が即時に可能です。これを繰り返すことで、①で立てた生活動線の仮説をより具体化していきます。
例えば、
・特定の駅利用者(通勤動線)
・商業施設周辺の滞在者(買い物動線)
・週末に特定エリアへ訪れるユーザー(レジャー動線)
といった形でターゲットを分け、それぞれに対して広告配信を行います。
また、配信の際は以下のような軸でテストを行うと効果的です。
・エリア
・時間帯(朝・昼・夜)
・クリエイティブ(訴求内容)
なお、テスト配信を行う際は、比較がしやすいように変更する要素は1つに絞ることが重要です。例えば「エリアのみ変更」「時間帯のみ変更」といった形で検証を行うことで、どの要因が来店に影響したのかを明確に把握できます。
▶ABテストに関しては、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
③ 来店傾向を分析し、ターゲットを拡張
テスト配信の結果をもとに、来店につながったユーザーの傾向を分析します。
具体的には、
・どのエリア・駅のユーザーが来店したか
・どの時間帯の接触が効果的だったか
・どのクリエイティブが反応したか
といった観点で成果を整理します。
その上で、効果の高かったセグメントを中心に配信を強化しつつ、類似した行動を持つユーザーへターゲットを拡張していきます。
例えば、
・来店率の高い駅利用者 → 同一路線の他駅へ拡張
・特定施設の来訪者 → 類似施設の来訪者へ拡張
といった形で、精度と配信ボリュームの両立を図ることが可能です。
このように、「仮説→検証→拡張」というサイクルを回すことで、来店につながる施策の精度を継続的に高めることができます。
また、位置情報広告によって得られた来店傾向や行動データは、Web広告の最適化にとどまらず、OOH広告や店頭施策などオフライン施策にも活用することが可能です。
例えば、来店率の高いエリアや駅を特定することで、OOH広告の掲出場所を選定したり、来店が発生しやすい時間帯にあわせてDOOHの掲出タイミングを設計したりすることができます。さらに、来店前後の行動データをもとに、店頭販促や売場設計の改善につなげることも可能です。
このように、位置情報広告は単なるデジタル施策にとどまらず、オンラインとオフラインをつなぐマーケティング基盤として機能します。
Suica の移動履歴という“確定データ”によるターゲティング広告「JRE Ads」
位置情報広告の中でも、より生活動線を正確に捉えた広告施策を実施したい企業に向けた選択肢として注目されているのが「JRE Ads」です。JRE Adsは、JR東日本グループが保有する顧客データや、Suicaの乗降データを活用した広告配信サービスです。

駅での買い物や通勤通学での移動といった“生活者のリアルな行動”を軸に、ターゲットを捉えた広告施策を設計できます。
一般的な位置情報広告とJRE Adsの違い
位置情報マーケティングでは、GPSやアプリの位置情報をもとに「特定エリアにいた可能性が高い人」を対象とする推定ベースの位置情報が一般的です。
対してJRE Adsでは、Suicaの利用履歴や定期券データにもとづく“確定データ”を活用できる点が大きな特徴です。「実際にどの駅を、どの時間帯に利用したか」という事実にもとづくため、
生活者の行動をより確度高く捉えることができます。

JRE Adsを用いた来店施策例
位置情報を活用した広告施策では、「そのエリアにいる可能性がある人」と、「実際に毎日利用している人」とでは、ターゲットの的中率に大きな差が生まれます。
この違いは、実店舗集客の成果を左右する重要なポイントです。
例:新宿駅が最寄りのジムの場合
一般的な位置情報広告やリスティング広告では、ユーザーの検索キーワードや年代などの条件とあわせて、エリアの半径指定による配信が行われます。Google広告における位置情報の半径指定は最小でも1kmからとなっており、場合によっては隣駅の利用者まで含まれてしまう可能性があります。一方で、エリアを過度に絞り込むと、配信ボリュームが不足し、十分な広告配信ができなくなるケースもあります。
一方、JRE Adsでは、新宿駅の通勤・通学定期券保有者など、「確実に新宿駅を日常的に利用しているユーザー」に絞った広告配信が可能です。推測ではなく、Suicaの利用履歴にもとづく実際の行動データを活用するため、ターゲットの精度が高く、来店につながる可能性の高いユーザーにアプローチできます。
さらに、こうした確定データを起点に、類似行動を持つユーザーへの拡張配信も行えるため、精度と配信ボリュームの両立が可能です。

JRE AdsではさらにJR東日本の持つ駅ビル利用やJREモール上での買い物から実際のユーザー行動も絞り込みが可能です。
例:やや単価が高いコスメ商材を新規層に販売したい
一般的なWeb広告の場合は、性年代やエリアのほかに興味関心を絞ることができますが実際に普段一定額以上の化粧品を購入しているかどうかまでは判断できず、広告配信が広くなりがちです。

一方JRE Adsを用いることで、普段から駅ビルなどに入るブランドものの化粧品を購入する感度の高いユーザーへの広告配信が可能です。
JREAdsでは、「新宿駅での乗降履歴がある」などといった移動行動だけでなく「駅ビル内でビューカードを利用して化粧品を購入した履歴がある」などの購買行動でもターゲティングが可能です。
他にも、「大人の休日倶楽部」会員データを利用してアクティブシニアを狙ったり、ビューカードのゴールドカード保有者で富裕層を狙ったりなど様々なターゲティングを位置情報とかけ合わせて行うことが可能です。
より具体的に、Suicaの移動履歴にもとづく「JRE Ads」でどのような広告施策が可能なのかを知りたい方は、資料をご覧ください。
狙っているエリアや現在の課題感などを教えていただければ、貴社に合わせたJREAdsでのターゲティング方法をご提案いたします。
まとめ
本記事では、来店や来訪といった実世界での行動を軸に施策を設計する「位置情報マーケティング」について解説しました。位置情報を活用することで、オンライン施策では見えにくかった人の移動や滞在、商圏の実態を捉えることができ、実店舗集客や販促効率の向上につなげることが可能です。
成果を出すうえで重要なのは、ユーザーの現在地を点で捉えるのではなく、通勤・通学や週末といった生活シーンの中でどのように行動しているのかを理解する「生活動線」の視点です。
どのタイミング・どのエリアで接点を持つべきかを整理し、位置情報を活かした広告や施策を設計・改善していくことで、来店につながるマーケティングを実現できます。
当社ジェイアール東日本企画では、「JRE Ads」などの広告配信にとどまらず、移動者データの研究を行う専門チーム「Move Design Lab」を有し、人々の生活動線への知見を活かしたマーケティング支援を行っています。
来店施策や商圏分析、位置情報を活用したマーケティングに課題や関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

■このコラムを読んだ人におススメ!


.png)










