こんにちは。ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回は「ペルソナマーケティング」についてお話ししたいと思います。
私たちは、商品を買ったりサービスを利用したりする時、なぜその決定をするのでしょうか?
「30代だから」
「男性だから」
「年収が600万円だから」
「東京に住んでいるから」
これらは確かに事実なのですが、単なる「値」でもあって、自分の身に置き換えて考えてみたとき、決定的な理由ではないように感じます。もっと理由は細かく、具体的で、血が通っている。あるいは細かすぎて、属性で表すことができるおおまかな言葉では表現できないかもしれません。
ペルソナマーケティングとはそうした、とても細かい個人の特殊性に注目したマーケティング手法です。詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
ペルソナマーケティングとは
マーケティング業務における「ペルソナ」とは、詳細に設定した架空の顧客プロフィールのことです。年齢や性別、居住地、年収、家族構成といった個人の状況を示す一般的な情報だけではなく、価値観や性格、習慣やライフスタイルなど、生活にまつわる細かな情報の集積で構成されます。「その人が本当のところはどんな人間なのか」までリアルにイメージできるような架空のプロフィールがペルソナで、これを用いたマーケティングをペルソナマーケティングといいます。
似た言葉に「ターゲット」がありますが、これが示すのは先に挙げた「東京に住む年収600万円の30代男性」の例の通り、年齢・性別・居住エリアなどの大きな区切りにより集団としてとらえることができる「見込み顧客の大まかな属性」です。ペルソナは見込み顧客の属性よりももっと細かく、たった一人の人間にフォーカスしたプロフィール設定です。
ペルソナは「個人」でターゲットは「集団」、と区別するとよいでしょう。
ペルソナマーケティングでは、この作り上げた架空のプロフィールの人物を、現実に存在するかのように取り扱うことがポイントです。この人物に向けて種々の広告プロモーションや商品開発・改善を行うことで、結果としてペルソナに類似の顧客を含むターゲットの多くを満足させる。それがペルソナマーケティングです。
なぜ「ターゲット」ではなく「ペルソナ」なのか
ペルソナマーケティングは、インターネット登場以前の、ユーザーの接触メディアが限られていた時代はあまり注目されることがありませんでした。テレビの番組視聴率が軒並み20%を超えていたような時代は、とにかくテレビCMを実施すればターゲットには接触しましたし、影響力=流行も作れ、個人の趣味嗜好を超えて商品購買に至ることが考えられました。
しかしユーザーの行動が複雑になり、接触するメディアも多様化した現在、商品・サービスごとにどんな広告宣伝・プロモーションをするべきか、細かく検討する必要があります。そして結果的に大まかなターゲットに対して広告宣伝を行う場合も、最終的になぜユーザーが反応したのか分からなければ、次回の改善に活かせないという問題があります。
そのような状況で、ターゲットの中の個人にフォーカスするペルソナマーケティングが注目を集めるようになりました。
現在は、多数のユーザーデータが取得でき、オートマチックなABテストによって当たる広告と外れる広告は判断ができる時代でもあります。一見、人間が考える必要がある領域は狭まったように見えます。
しかし豊富なデータにマーケティング的な価値を見い出すのは、結局のところ人間の想像力(仮説力)です。そのデータが何を意味しているのか、何のためにその商品を作り、何のために広告を実施するのかは人間が考える必要があります。そのための手法の一つがペルソナマーケティングです。
具体的なペルソナの例
ペルソナマーケティングのメリット、デメリット
ペルソナマーケティングによってもたらされるメリット=効果について、代表的なものをご紹介します。
・ペルソナマーケティングの主なメリット
1) 商品・サービスの戦略に一貫性が保てる
ペルソナマーケティングの最大のメリットがこれになります。すべての戦略・戦術が「それを実施することで、このペルソナが満足するか?」を基準に考えることになりますので、商品設計、Webサイトや広告、プロモーション施策のすべての内容に一貫性を保つことができます。そしてその内容が、ユーザーから乖離することもないでしょう。
これは商品・サービスに確固としたキャラクター(性格)を与え、ブランドとして確立させることにつながります。
2) ターゲティングの精度が上がる
先に説明した通り、ペルソナはターゲットの一部、代表者です。したがってペルソナを含むターゲットに対して各種の広告戦術設計やメディアプランニングを行うことで、確度の高い見込み顧客を狙い撃つことができます。
またその際のプロモーション施策や広告クリエイティブにおいても、どのような内容・表現がふさわしいのか検討しやすくなります。
3) 関係者間で共通認識を持つことができる
ペルソナは大変具体的で、実際に存在するかのようなものとして扱われます。
「東京に住む年収600万円の30代男性」といった粗い情報だと、人によって抱くイメージは異なりますが、細かな行動や心理が分かっているペルソナに対しては、そのブレが少なくなります。
商品・サービスは開発から販売、アフターケアまで多数のフェーズがあり、それぞれ多数の人々が協働することで成り立っています。その多数の人々の共通認識となる点で、ペルソナは大変有用です。
一方、デメリットとしては以下が挙げられます。
・ペルソナマーケティングの主なデメリット
1) ターゲットが幅広い商品・サービスには不向き
一般的に、ペルソナマーケティングはターゲットが規定可能=利用する人がある程度明確な商品・サービスに強いと考えられますので、その逆に、ほとんどの人が利用する可能性がある商品・サービス(ex.鉄道、日用品など)には強みを発揮しづらいです。
ただし、戦略ターゲットとして、特に商品・サービスを愛用してくれる中心ユーザーを設定する場合はその限りではありません。例えば即席カップ麺などは誰でも食べる可能性がありますが、一番購入するのは実は「家庭を持つ女性」です。このターゲットをコアとして広げていく戦略をとる場合、ペルソナマーケティングは十分機能します。
2) ペルソナ作成には時間とコストがかかる
実は、ペルソナ作成には時間と手間がかかります。プロジェクトの担当者が主観的に思い描くユーザー像を集積すれば効果的なペルソナになるかというと、必ずしもそうとは言えません。できるだけ多くのデータを集めて客観性を保持する必要があるので、一定の手間がかかります。
この「手間」については具体的な内容を次項で詳しく説明します。
3) ペルソナはメンテナンスが必要
ほとんどの場合ペルソナは、一度設定したらその後永遠に不動、というわけにはいきません。時代が変化し、人々の行動が変化し、メディアが変化し、商品・サービスが変化するのと同様に、ペルソナも変化します。定期的なチェック・メンテナンスが必要です。
ペルソナは商品を映す鏡ですから、定期的にチェックすることは、自社商品・サービスのコアとなる価値が何なのか、何を変えて何を変えるべきでないのか、を確認する機会にもなるでしょう。
ペルソナの活かし方
ペルソナ設定、そしてペルソナマーケティングは、大きなマーケティングの考え方でいえば、マクロマーケティングとミクロマーケティングの二つの手法のうち、後者の一部となります。
簡単に言うと、マクロマーケティングは市場全体、社会全体に対してアプローチする手法で、ミクロマーケティングは対象を特定の個人に絞った手法です。
この二つの手法はどちらかが正しくてどちらかが間違っているというものではなく、どちらもビジネスの状況に応じてうまく利用するものです。
典型的には、ミクロマーケティングは以下のような流れで進みます。
1) ユーザー選定条件を特定
何をもってユーザーと見なすか、を確認します。
実際に商品・サービスを購入・利用している人はもちろんですが
・サイトを複数回訪問している人
・セミナー参加者
・カタログ(資料)をダウンロードした人
など、商品・サービスによって、ユーザーと考えられる条件はさまざまです。
2) 対象ユーザー選定、経路分析
上記の条件に基づき、具体的なユーザーを取り上げ、そのユーザーがどのような経路をたどって購入や利用などのコンバージョンに至ったかを分析します。
3) 人物像の作成(ペルソナ・カスタマージャーニーマップ)
ユーザーがどのような人物か、これまでの情報と調査を基にまとめ、設計します。
そしてペルソナを設定したら、そのペルソナがどのような経路をたどってコンバージョンするかを検討するカスタマージャーニーマップを作成します。
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品やサービスを知ってから、興味を持ち、購入・利用に至るまでの過程を、ジャーニー(旅)に見立てて分析するものです。
4) 施策立案と実行
商品開発・改善、広告企画、営業活動の改善など、各施策を検討して実行します。
それぞれのフェーズにおける施策の決定基準は「それによりペルソナが満足するかどうか」です。
5) 実行後の効果検証
施策実施後に効果検証をします。
商品が改善されたかどうかはユーザーへのリサーチを行い、営業活動が改善されたかどうかはクライアントとの商談でアンケートなどを行って確認します。
Webサイトが商品・サービスの主要メディアとなっている場合は、その流入・滞在・回遊などの情報を分析することで改善結果が判別できるでしょう。
情報を収集し、仮説を立て、人物像を作成し、カスタマージャーニーマップを組み立て、実行、効果検証、という流れです。
再度確認しますと、ペルソナマーケティングは大きなマーケティング活動の一部なので、作ったペルソナをどう活かし、検証するかが重要です。
ペルソナの作り方
それでは実際にペルソナはどうやって作っていけばよいのか見ていきましょう。
重要なのはデータと、その分析です。原則的に、データは多い方が良いですし、分析する人間も多い方が良いです。
もちろんデータが多すぎれば何をどう分析すればよいのか分からないということもあり得ますし、分析する人が多すぎでもまとまりませんが、少ないデータとごく少数の人間で分析することは誤りの要因になります。
商品・サービスの性質によって異なりますが、ペルソナ分析のやり方や利用できる情報としては以下のようなものがあります。
1)既存顧客の属性
これがペルソナの基本になるでしょう。すでに商品・サービスを利用してくれている人に共通項があるとすれば、その共通項を有する別の類似の顧客も同様に利用してくれる可能性があります。年齢、性別、居住地、未既婚、職業など、基本的な属性の共通値を探ります。
2) 既存顧客へのアンケートや、営業ヒアリング
基本的な属性分析では顧客の表面的なことしか分かりませんし、商品の問題点や課題、あるいは何が評価されているかも分かりません。商品の購入理由や商品の満足点・不満点、商品を人に薦めたいかどうかなどを探れば、誰がロイヤルユーザーなのかが見えてきます。
営業がクライアントから直接ヒアリングした生の情報も大変重要ですので分析に利用します。
3)ユーザーインタビューを実施する
さらに顧客のことを詳しく知るためには、実際の顧客にインタビューを実施します。1)、2)でペルソナに近いと思われる属性の人々を抽出し、日ごろの生活や、興味関心、他の商品やコンテンツは何を利用しているかなど、心理を探るインタビューをします。
やり方としては、ファシリテーターをたてて数名ずつのグループインタビューを行う形が多いです。
4)SNSを参考にする
SNSはユーザーの生の声があらわになって集いますので、この情報はペルソナ作成に大変役立ちます。
ブランドの規模にもよりますが、最低1日1回は自社ブランド名での検索をお勧めします。筆者が長年取引したナショナルブランドのマーケティング担当者は、多忙を縫って1日に何度も自社ブランドの検索をしてブランドメンテナンスの参考にしており、私もそれに教わり頻繁にSNSを調べるようになりました。ブランドにとって良い事象も悪い事象も、SNSで最初に発生することが多いため、ペルソナ作成に限らずSNS検索は大変重要です。
以上のような方法を組み合わせて、「客観的なデータ」をできるだけ多く収集し、それを基にペルソナを作成します。
・基本情報
・行動情報
・心理情報
・(コンバージョンに至る)ストーリー
に分けると整理がしやすいでしょう。
ペルソナを作るときのコツ
その他、ペルソナ作成時のコツについてお話しします。
・細かく考える
最終的に出来上がるペルソナで重要なのは「ストーリー」です。種々の要素は、このストーリーを作り、またそれにリアリティを持たせるためにあると言ってもよく、そのために各種要素はたくさんあって構いません。
属性だけだとあまり効果はなく、本当に一人の人間として立ち上がるような細かい分析が有効です。細かく考えれば考えるほど、ユーザー像はリアルになり、それに対してどのような施策を行えばよいのかが明確になり、一人の人間として想像することが可能になります。
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』で有名な漫画家の荒木飛呂彦さんは、著書『荒木飛呂彦の漫画術』で、一人一人のキャラクターに細かい「身上調査書」を作成していると明かしています。60近くの項目で構成される「身上調査書」には、キャラクターの身長体重や生年月日といった一般的な情報から、好きな映画や香りや音楽や怖いもの、など、それだけでキャラクターの形が極めて鮮明に浮かび上がる情報をまとめています。
これはまさにペルソナ分析です。「身上調査書」を細かく設定すればするほどキャラクターが生き生きと動くのと同じように、ペルソナ設定を詳細にリアルにすればするほど、マーケティング活動のリアリティも格段に増すでしょう。
とは言え、最初から詳細なペルソナを作ることが難しいことも事実です。最初は粗くても構いませんので、実際に施策を推進して効果検証をする中で、ペルソナの細かい作りこみや修正を進めましょう。
・愛すべき人をペルソナにする
ペルソナは、できるだけ客観的に得られた情報で構成され、あからさまな主観や思い込みは排除すべきです。しかし最終的に細かく作りこんでいって出来上がるものは、組織としてチームとして、応援したい人、愛すべき人、推せる人になっているべきです。
ペルソナはチーム全員がめざす共通の目標です。たとえ売り上げや利益が最優先されるビジネスであろうと、いったい誰が、嫌いな人や興味がない人に対して一生懸命商品を作ったり広告宣伝をしたりするでしょうか。
商品・サービスは、個人や組織の課題解決や、願いを叶えるためにあるものが大半です。無理に意図して愛すべき人を捏造しようとしなくても、商品の良さとペルソナの課題を丁寧に考えていけば、自然とそのようなペルソナが出来上がるでしょう。
・BtoCとBtoBで作り方は変わる
BtoCのペルソナでは個人の趣味嗜好や心理などが重要ですが、BtoBのペルソナではビジネス上の決定に関わる属性が重要になります。
具体的には、BtoBでは対象の個人が組織においてどのような立場か、またその組織がどのような組織かが重要ですので、ペルソナを構成する情報に盛り込みます。
代表例としては以下のような情報です。
そしてカスタマージャーニーへ
ペルソナが出来上がったらカスタマージャーニーに落とし込んでみましょう。
ユーザーの購買行動プロセスのAISCEAS(アイシーズ)モデルに沿い、各フェーズの
・ユーザーインサイト
・設置コンテンツ
・使用メディア
を設計します。
ユーザー購買行動プロセスに沿った詳しい戦略の立て方については、以下の「クロスメディア戦略」の開設コラムで紹介しておりますので、こちらをご覧ください。
ペルソナを実際に広告に活かす手法・JRE Ads
こうして出来上がったペルソナは大変具体的で、ユーザーがいつどのような場所で何を求めているか、かなり細かくイメージすることができます。
問題は、そのイメージ通りにユーザーに情報を届けることができるメディアがあるかどうかです。
当社が提供できる新しい施策として、JRE AdsというWeb広告ソリューションがあります。
今回設定した上図のペルソナで見られるような、商談で全国を回っているビジネスユーザーは、しょっちゅう新幹線を利用していると考えられることから、品川駅や東京駅の利用者をターゲティングしたいところです。
JRE Adsを使えば、例えば、東京駅・品川駅・上野駅・大宮駅の新幹線改札の通過履歴、JR東日本のチケット予約サイト「えきねっと」の利用の確定データでビジネスユーザーへのターゲティング広告が実施できます。
・JRE Adsとは
JRE Adsは、JR東日本グループが保有する、移動や購買などのユーザーデータを運用型Web広告に活用するサービスです。
JR東日本グループが管理・運営するポイントサービス「JRE POINT」に登録されたユーザーのデータを基点に、そのユーザーの鉄道や改札でのSuica利用データや、ECサイト「JRE MALL」での買い物履歴からユーザーのターゲティングが可能です。
・JRE Adsのメリット
JRE Adsの主要なメリットは以下の2点です。
POINT 1 Suicaの移動履歴=確定データを用いた精度の高いエリアターゲティング
一般的なジオターゲティング広告は、端末や提携アプリのGPS情報を基にした「推定データ(通勤しているかもしれない、駅を使ったと思われる)」でターゲティングを行います。JRE Adsでは、交通系 IC(Suica)の乗降履歴、つまり「確定データ(通勤している、月~金で改札を通った)」を基に配信を行うため、駅利用者へのWeb広告としては非常に精度が高い施策となります。
POINT 2 JRE POINTと連携するJR東日本関連サービス利用履歴を活用した独自のターゲティング
JRE Adsはエリアターゲティングだけでなく、ユーザーの属性・行動履歴を基にしたターゲティングも可能です。
JRE POINTと連携するJRE MALL、えきねっと(新幹線などの乗車券・指定席ネット予約サービス)などのJR東日本グループのサービス利用履歴からユーザーをセグメントし、リアルなターゲットの行動に沿った広告施策が可能です。外部配信媒体のセグメントとの掛け合わせも、もちろん可能です。
これらの特徴を活かしたJRE Adsには、
・特定商圏を狙ったエリアマーケティング
・特定のニーズを狙い撃つターゲティング施策
・広告効果の最大化エリアを検証するテストマーケティング
など、さまざまな活用の可能性があります。
この項の冒頭の例のような、「新幹線利用の出張者」に対しては以下のようなセグメントで広告配信ができます。
この他、JRE Adsの活用の仕方や事例、各種の実施条件などの詳細は以下のダウンロード資料で是非ご確認ください。
まとめ
ペルソナマーケティングの設定のやり方、効果、施策の例についてご紹介しました。
ペルソナマーケティングはその使い方によって、大きな効果を発揮するか、期待外れの結果となってしまうか、が分かれることになります。
・データを広く集めること
・細かく分析すること
・アップデートを欠かさないこと
・実在の人間として取り扱うこと
など、当コラムで解説した作り方や使い方を参考にしていただければ幸いです。
当社ではご紹介したJRE Adsだけではなく、マスメディアからプロモーション、キャンペーンまでマーケティングにまつわるあらゆる施策をプロデュースいたします。
貴社のブランディング・プロモーションに際し、ペルソナマーケティングによる施策に関心がありましたら是非当社にお問い合わせください。