
こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のテーマは「地方自治体の移住促進|成功のポイント」です。
少子高齢化が進む日本では、多くの地方自治体が深刻な人口減少問題に直面しています。そのため、移住・定住の促進は自治体にとって重要な施策の一つとなっています。
一方で、近年の働き方やライフスタイルの多様化により、地方移住を希望する人も増えています。こうした動向を受け、多くの自治体が移住者を呼び込むための施策を展開しています。
本コラムでは、地方自治体が移住促進に取り組む際のポイントをマーケティング視点で詳しく解説します。
特に自治体関係者の方に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 地方自治体が移住・定住者を増やすべき理由
少子高齢化の進行に伴い、多くの地方自治体が人口減少という深刻な課題に直面しています。総務省のデータによると、2045年には全国の約80%の自治体で人口が減少すると予測されています。
参考:国立社会保障・人口問題研究所 「日本の市区町村別将来推計人口」(2018年)
こうした状況を受け、多くの自治体が移住・定住の促進に力を入れています。
1-1. 地域経済の衰退を防ぐため
人口減少により、地域の消費活動が低下し、商業施設や公共交通機関の運営が厳しくなります。特に、若年層の流出が激しい地域では、働き手不足が深刻化し、産業の衰退につながります。
例えば、過疎地域では 「人口減少 → 商店街の店舗数減少 → 地域経済の縮小」 という負の連鎖が起こっています。移住者を増やすことは、こうした負のスパイラルを防ぐための重要な施策です。
1-2. 労働力の確保と地域産業の活性化
地方の多くの企業は慢性的な人材不足に直面しています。特に、農業・伝統工芸・観光業などの地域密着型産業では後継者不足が顕著です。
例えば、「移住者向け農業研修プログラム」を実施し、若者の新規就農を支援。その結果、農業の担い手が増え、地域産業の再興につながっている自治体もあります。
1-3. 税収の安定化と行政サービスの維持
人口減少は自治体の財政にも大きな影響を及ぼします。住民税や固定資産税の減少により、行政サービスの維持が難しくなり、公共インフラの老朽化が進む という悪循環に陥る可能性があります。
移住・定住の促進により、税収を確保し、住民の生活の質を維持することが重要です。
2. 移住・定住を検討する人が増えている理由
近年、都市部から地方への移住を希望する人が増えています。
総務省の「地域おこし協力隊」や「ふるさとワーキングホリデー」などの制度を活用する人も増えており、その背景にはいくつかの理由があります。
2-1. テレワーク普及による働き方の多様化
コロナ禍を契機に、テレワークが急速に普及し、「必ずしも都市部に住む必要はない」という価値観が広まりました。
国土交通省の調査によると、2023年時点で約35%の企業がリモートワークを継続的に導入しており、特に IT・クリエイティブ業界ではその割合が高いとされています。
この変化により、地方に住みながら都市部の仕事を続けることが可能になり、移住を検討する人が増えています。
2-2. 生活コストの見直しと地方の住環境の魅力
都市部の 家賃や物価の高騰も地方移住を後押しする要因の一つです。
例えば、東京都内で 2LDKの賃貸マンションの場合、家賃は15万円以上になることが一般的ですが、地方では 同じ広さで5万円程度で住めるケースも少なくありません。また、庭付きの一戸建てを手に入れやすい点も地方移住の魅力です。
2-3. 自然環境や子育て支援の充実
地方には、豊かな自然環境とゆとりのある生活があります。。
特に子育て世帯にとって、広い公園・待機児童の少ない保育園・地域の支援ネットワークなどの整備は大きなメリットとなります。例えば、一部の自治体では 「子育て支援パッケージ」 を提供し、保育料補助や育児相談サービスを充実させています。
筆者の友人も「恵まれた環境で子育てをしたい」との思いから 長野県須坂市へ移住。結果として、都内よりも充実した生活を送れていると感じているようです。
3. 移住・定住者を増やすための代表的な施策
地方自治体が移住者を呼び込むためには、住宅や仕事の支援、地域との交流機会の提供が重要です。ここでは、代表的な施策を4つ紹介します。
3-1. 住宅支援制度の充実
移住希望者が地方への定住を決める際に、最も重要なのが 「住まいの確保」 です。そのため、多くの自治体では 住宅補助金や空き家バンク制度を提供しています。
住宅補助金にはさまざまな形があり、例えば以下のような制度があります。
・新築住宅の購入補助
・賃貸住宅の家賃補助
・住宅修繕の補助
・一定期間居住後に家や土地を無償で譲渡する制度
こうした制度は、特に若い世代の移住・定住促進に効果を発揮しています。
3-2. 仕事の確保と起業支援
地方での生活を安定させるには、雇用の確保が不可欠です。自治体は地元企業との連携を強化し、移住者向けの求人情報の提供や起業支援を行うことが求められます。
例えば、長野県では、移住者が起業する際に移住支援金とは別に最大200万円の起業支援金を受けられる制度を実施しています。これにより、移住者のビジネス立ち上げをサポートしています。
▼ 当社がサポートした長野県佐久市の事例
佐久市では、移住者向けに 副業創出支援やテレインターンシップを実施しています。
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※こちらの記事でさらに詳しくご紹介しています ↓
◆ワークテラス佐久実践型テレインターンシップ実施事業(リンク)

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3-3. 地域との交流促進やお試し移住プログラムの提供
移住者が地域に馴染むには、地元住民との交流の場が欠かせません。自治体が主導して移住者向けの交流イベントを開催したり、地域の自治会と協力して「お試し移住プログラム」を提供することで、移住希望者が「この地域で暮らしたい」と感じやすくなります。
例えば、北海道下川町では 「しもかわちょっと暮らし体験」というプログラムを実施。このプログラムでは、2~3泊程度の短期間で地域の生活を体験できるようになっていて、スーパーや病院、学校などの施設を巡るツアーや、地域住民との交流が含まれています。
このようなプログラムは、移住前に実際の暮らしを知る貴重な機会となります。
▼ 詳細はこちら(北海道下川町公式移住サイト)
しもかわちょっと暮らし体験【移住検討者向け】 | 【公式】北海道下川町移住移住情報サイト タノシモ(tanoshimo)
3-4. ワーケーションの誘致
「ワーケーション」とは、仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた新しい働き方です。
いきなり移住・定住するのはハードルが高いものの、「まずは数週間滞在してみる」ことで、地域の魅力を知ることができます。
自治体にとっても、移住促進の第一歩として「関係人口」 を創出する効果が期待できます。ワーケーションをきっかけに地方とのつながりが生まれると、リピーターとして何度も訪れる人や、将来的に移住を検討する人も増える可能性があります。
ワーケーションを受け入れるためには、以下の環境整備が求められます。
・インターネット環境の充実(Wi-Fi完備など)
・コワーキングスペースの設置
・地域の魅力を楽しめるプランの提供
▼ 当社がサポートしたワーケーション事例
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◆伊東市ワーケーション推進デジタルマーケティング業務(リンク)
→ デジタルマーケティングを活用し、伊東市のワーケーション誘致を支援。

→ 浜松市のワーケーション需要を喚起し、関係人口の拡大を推進。

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4. 移住・定住者を増やすためにマーケティング視点で取り組むべきこと
移住促進を成功させるには、マーケティングの視点を取り入れることが欠かせません。本章では、データ活用、地域ブランディング、デジタルマーケティングを中心に、効果的な施策を解説します。
4-1. データ活用によるニーズ分析とターゲット設定
■ニーズ分析
自治体が移住施策を効果的に展開するには、「誰が、どのような理由で移住を検討しているのか」を正しく把握することが不可欠です。そのために、以下のようなデータを活用できます。
・人口動態データ(年齢層・世帯構成・転出入の傾向)
・移住希望者のアンケート・ヒアリング(求める生活環境や仕事の条件)
・SNS・検索データの分析(移住に関する関心キーワードやトレンド)
これらをもとに、たとえば「都市部の30代子育て世帯は教育環境を重視する」「リモートワーカーはコミュニティ支援を求めている」といった具体的なインサイトを得ることができます。
■ターゲット設定
データ分析の結果と地域の強み・魅力をもとに、移住のターゲット層を設定します。
例えば、
・都市部の子育て世帯(教育環境・医療・住居支援を重視)
・リモートワーカー・フリーランス(Wi-Fi環境・コワーキングスペース・地域コミュニティとのつながりを重視)
・リタイア後のシニア夫婦(医療・余暇環境・気候の良さを重視)
このようにターゲットを明確にすることで、適切なプロモーションを展開しやすくなります。
4-2. 地域ブランディングの強化
地域ブランディングとは、地域の独自性や魅力を明確に打ち出し、移住のターゲット層に「住んでみたい」「訪れてみたい」と思わせる戦略です。これは単なる観光誘致や短期的なプロモーションではなく、長期的に地域の価値を高めることを目的としています。
移住・定住を促進するには、単に「住みやすい街」とアピールするだけでは不十分です。人々が移住を決断する際には、「その地域ならではの価値」や「自分のライフスタイルに合うかどうか」など、“街が持つ魅力”が重要な判断材料になります。
そのため、以下の3つの要素を意識することが重要です。
・地域のアイデンティティを確立する(他の地域にはない独自の魅力を明確に)
・地域の魅力をストーリーとして紡ぐ(実際の移住者の声や、地域の歴史・文化を伝える)
・統一性のあるメッセージで発信する(一貫したコンセプトでプロモーションを展開)
4-3. デジタルマーケティングの活用による情報発信強化
移住・定住者を増やすためには、デジタルマーケティングを活用した情報発信が欠かせません。
■長期的アプローチ:オウンドメディアやSNSの活用
まず、オウンドメディアやSNSを活用して、移住検討層との接点を増やすことが重要です。
・自治体の特設サイトやブログ で地域の魅力や移住者の体験談を発信
・SEO対策 を施すことで、移住に関心のある人の検索流入を増やす
・InstagramやTikTok で地域の日常や暮らしの魅力を発信
・LINE公式アカウント を活用し、移住支援情報を定期配信
特にSNSは、ターゲット層に合わせた最適なプラットフォームを選ぶことが重要です。
■即効性のあるアプローチ:Web広告の活用
短期間で移住検討層にリーチしたい場合は、Web広告が有効です。
・リスティング広告(「地方移住」などの検索キーワードに対してターゲット層へ直接アプローチ)
・SNS広告(年齢・興味・行動履歴などに基づいて精密なターゲティングが可能)
・動画広告(YouTube広告を活用し、移住者のストーリーや地域の魅力を伝える)
メディアごとにターゲットに合わせた配信セグメントが可能なので、上手にターゲティングできれば有効なアプローチ手法となります。
即効性のあるWeb広告と長期的に接点を増やすオウンドメディア・SNSを組み合わせることで、ターゲットの関心を高め、移住・定住促進につなげることができます。
5. 移住潜在層に即時アプローチするなら「JR東日本顧客データ活用広告 JREAds」
Web広告は即効性がある一方で、効果的なターゲティングが難しいという声を多くの自治体から聞きます。さらに、多くの自治体が同じターゲットを狙うため、競争が激化し、差別化が難しくなるという課題もあります。
このような課題に対し、当社では 「JRE Ads」 を活用した移住誘引施策をご提案しています。
JR東日本の顧客データ活用広告「JRE Ads」
「JRE Ads」は、JR東日本グループが保有するビッグデータを活用し、観光・移住ポテンシャルのあるターゲットにダイレクトにアプローチできるWeb広告ソリューションです。
この広告では、JR東日本の移動・購買データをもとにターゲティングが可能です。例えば、以下のようなデータを活用します。
・「JRE POINT」に登録されたユーザー情報
・Suicaの利用履歴(鉄道・改札通過データ)
・ECサイト「JRE MALL」での購買履歴
これにより、地域と関わりのある潜在的な移住者に向けた効果的な広告配信が可能になります。
■ターゲティングの具体例
例えば、以下のような 「関係人口」を狙った広告アプローチが可能です。
・高頻度で対象エリアを訪れる出張族
・長期休暇に対象エリアで新幹線を利用する帰省者
・ふるさと納税の返礼品を購入したユーザー
これにより、「単に移住に興味がある人」ではなく、「すでにその地域と何らかの接点がある人」に効率的にアプローチできるのが大きな特長です。

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6. まとめ
移住・定住促進は、単なる人口増加策ではなく、地域経済の活性化や持続可能なまちづくりの鍵を握る重要な取り組みです。自治体が適切な施策を講じることで、地域の魅力を最大限に活かし、新たな住民を迎え入れることが可能になります。
特に、データを活用したターゲット分析やデジタルマーケティングによる効果的な情報発信が重要です。
移住希望者にとって魅力的な環境を整えるだけでなく、それを適切に伝えることで、より多くの人々に「地方移住」という選択肢を認識してもらえます。
当社ジェイアール東日本企画は、JR東日本グループの広告会社として、各自治体と連携した観光送客キャンペーンの実績を多数有しています。またその関係性を活かした、自治体支援、地域活性化事業にも多くの実績があります。その経験を活かし、移住・定住施策に限らず、地域課題を抱える自治体の皆様をサポートいたします。
地域の課題解決に向けて、ぜひお気軽にご相談ください。