こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のテーマは「商品開発」です。
市場にモノやサービスが溢れかえる現代において、企業が継続的に収益を上げて成長していくうえで不可欠なのが商品開発です。とはいえ、競合他社に勝る商品やサービスを開発するのは容易なことではありません。
顧客のニーズを汲み取り、自社の強み・独自性を持った商品を開発するためにはどうすればいいのか? そんな悩みを抱えていらっしゃる開発担当の方も多いのではないでしょうか。
当サイトを運営するジェイアール東日本企画はマーケティング&コミュニケーションカンパニーとして、プロモーション領域だけでなく商品開発から企業のサポートをさせていただいています。
本コラムではそんな当社の知見をもとに商品開発に欠かせない基本的なプロセスやノウハウを解説します。ぜひ商品開発に取り組む際に役立ててください。
商品開発に取り組むにあたって
◎意義と目的
商品開発に取りかかる際に、いきなりアイデア出しから始めるのではなく、まずは開発の意義や目的を明確にすることが大切です。商品開発によって何を達成したいのか、顧客や自社にとってどんなメリットを創出しようとしているのかといったことです。
例えば、「潜在顧客のニーズを踏まえた商品・サービスを開発することで、新たな顧客を獲得し、収益拡大につなげる」ことが目的となるケースが多いでしょう。さらにそれをきっかけに「企業自体の認知やイメージアップが図られ、企業ブランディングにつながる」という可能性もあります。
また世の中の〇〇な悩みを解消したい、△△に困っている人をサポートしたい、といった社会貢献的な想いが意義となる場合もあるかもしれません。
それらを明確にすることによって、開発に関わるメンバーの意識を高め、一つの方向を向いて取り組むことができるようになります。
◎商品開発の種類
一口に商品開発といっても大きく分けて次の3パターンがあります。
・新規商品の開発
・ラインナップの拡充
・既存商品の改良
・新規商品の開発
既存商品とは違う新たなコンセプトの商品を開発することです。
市場や自社にないモノを新たに生み出すという意味で、多くの方が商品開発といえばこれを思い浮かべるでしょう。
・ラインナップの拡充
自社の既存商品シリーズのラインナップを増強するパターンです。
カラーや匂い、デザインなどのバリエーションを増やすケースが多く、シリーズ全体の商品コンセプトは維持したまま、より広い顧客ニーズに対応する方法です。
・既存商品の改良
すでに市場に流通している商品に手を加えることも商品開発の一つです。
顧客の反応・声、市場の動向を見て、より良い商品になるようにアップデートを加えます。市場導入当初に想定していた効果が得られていない場合には、商品イメージやコンセプトを大幅に変更するケースもあります。
商品開発の進め方 4ステップ
上記の通り、商品開発にはいくつかの種類があります。また開発するのが有形の商品なのか・無形のサービスなのか、それは食品なのか・はたまたソフトウェアなのか、といった条件によって開発のプロセスは一通りではありません。ただ一般的に成果が出やすいプロセスが存在するのは事実です。
ここでは成果が出やすい商品開発のプロセスについて、具体的に4つのステップに分けて解説します。
ステップ➀:現状把握
社会(市場)・自社・競合の環境観点から現状の課題を整理し、取り組むべき市場やターゲットを検討します。
商品開発プロセスを解説する記事の中には、いきなり「アイデア出し」の工程からスタートするプロセスを紹介しているものもありますが、私が考えるにそれは大きな失敗のもとです。現状把握が十分にされないままに感覚だけで検討を始めるというのはおすすめできません。必ず最初に現状把握に取り組むべきです。
◇把握するべき状況
具体的に把握するべきなのは以下の4つです。
・市場環境
【市場規模】【シェア】【成長性】を把握し、市場を深く理解することで自社が参入できる余地・機会があるのかを見極めます。規模が大きかったり成長が見込める市場であったとしても、参入ハードルが低くて競合企業が多いなどのケースもあるため慎重な判断が必要です。
・生活者
【顧客の環境】【インサイト】【カテゴリ利用実態】【ニーズ】などの把握に努めます。
商品開発の基本は「自社が作りたいもの」ではなく「顧客が求めているもの」を開発することにありますので、大変重要なファクターです。
・競合商品
【競合商品との比較】【販売戦略】を把握します。
競合商品と比べて自社商品が優れているところ・劣っているところを分析し、何が優位性になり得るのかなどを検討します。
また他社の販売戦略を分析することも大きな助けとなります。
・自社(商品)の状況
【企業戦略】【売上状況】【目標】など自社や既存商品の状況を把握します。
現在抱えている課題を洗い出すとともに、会社として何を目指すのかを整理し、ビジョンを明確化していきます。
◇把握の手法
これらを把握する方法としては、以下のような手法があります。
・既存データ分析
・各種統計データ
・外部協力会社の保有調査データ
・自社保有データ など
・定性調査
・グループインタビュー
・デプスインタビュー
・オンラインコミュニティ など
・定量調査
・インターネット調査 など
このステップで把握した情報をもとに、自社(商品)課題の整理まで行いましょう。
ステップ➁:コンセプト開発
➀で整理した課題を踏まえて、戦略ターゲットを設定しコンセプトを策定していきます。
◇取り組むべき市場や商品アイデアを決定
把握・分析した情報から、どの市場を狙ってどんな商品を開発するのが良さそうかアイデアを出していきます。考え得るアイデアをたくさん出したうえで、それをふるいにかけて絞り込んでいきます。
選別の基準としては
・実現性や成功確率が高いか
・同じような既製品がないか
・独自性や自社の強みが出せるか
・企業理念や目的と合致するか
などがあります。
◇戦略ターゲットの設定
取り組むべき市場や商品のアイデアが決まったら戦略ターゲットを設定します。
できるだけ詳細なターゲット設定を行うことでここから先の商品アイデアやコンセプトへの落とし込みがスムーズになります。
◇コンセプト開発
戦略ターゲットを設定したら、ターゲットのキーインサイト、商品の強みなどを洗い出し、「顧客に提供する価値(プロポジション)」を導き出します。
コンセプト開発で導出すべきこと
・キーインサイト
・新商品の強み
・ターゲットへの提供価値
・利用シーン/利用スタイル
これらをベースに商品コンセプトを策定します。
この商品コンセプトが顧客の購買理由となり、商品の市場価値を決定づけるものとなります。
また内部的には、製品化に向けた関係者全員の共通認識となり、製品化実現のための指針となるものです。ここで決定したコンセプトから大きくブレることがないように心掛けましょう。
ちなみにコンセプト開発の具体的な手法としては
・ワークショップ
・コンセプト評価調査
などがあります。
ステップ③:製品化
コンセプトに基づく試作品を作製。ターゲット目線でさらにブラッシュアップし、ネーミング・ロゴ・商品パッケージの開発・制作を行います。
◇試作品の作製
試作品を作る目的は、安全性や耐久性の確認、本格的な製造を前にリスクとなりそうなポイントを把握することにあります。
また試作品を用いて以下のテストマーケティングを行います。
◇テストマーケティング
テストマーケティングを行うことで、試作品のブラッシュアップに取り組みます。
テストマーケティングの方法にはいくつかの段階があります。
・モニターテスト
生活者を会場に集めたり、自宅に送付するなどの方法で商品を試してもらい、反応や感想を収集します。そこで得られた声を反映させて商品のブラッシュアップを図ります。
実際に生活者に手に取ってもらうことで得られるフィードバックは、想定とのズレを調整する手助けになる、とても有効な情報です。
・テスト販売
地域や販路を限定して実際に販売してみて反応を見るテストです。全国規模で販売する商品の最終調整として実施するケースが多く見られます。
範囲を限定することで、損失を回避する効果が期待できる一方で、競合にも新商品情報が漏れてしまうため販売までのスピード感などに注意が必要です。
◇ネーミング、ロゴ、パッケージの開発・制作
生活者に商品を手に取ってもらうためにネーミングやロゴ、パッケージはとても重要な要素です。どれだけ顧客ニーズに沿った素晴らしい商品を開発したとしても、それがネーミングやパッケージから伝わらなければもったいない結果となってしまうからです。
パッケージは、コンセプトや商品特性を体現するものであるとともに、パッと目を引くインパクトや工夫が必要です。ネーミングについても同様に商品の価値をアピールする重要なツールといえます。
ネーミングやパッケージも、モニターテストで生活者の反応を収集し、改良に活かしてみると良いでしょう。
ステップ④:市場導入
現状把握、コンセプト開発を経て製品化に成功したら、いよいよ市場導入へと至ります。
このステップにおいて、スピーディーにシェアの獲得を狙うために重要なのがプロモーションです。
生活者に商品のことを知ってもらうという重要な役割があるとともに、商品を販売してくれる流通各社に対して、「しっかりプロモーションする商品なので棚においてください」というアピールの側面もあることは頭に置いておきましょう。
◇プロモーション
生活者にとって市場に導入されたばかりの商品は、見慣れない未知の商品です。それを手に取ってもらうためにまずは商品を認知してもらう必要があります。
効果的なプロモーションを実行するためには、単にどのメディアで広告するかを検討するのではなく、コミュニケーション全体を設計することが大切です。
・コミュニケーションメッセージの策定
広告・プロモーションにおいて何を伝えていくかを決めます。
商品の魅力を端的に伝えるメッセージである必要があります。
・メディア戦略
ターゲットに対して効率的に情報を届けるために、使用するメディアやタイミング、活用方法などを計画します。
お金を払って広告枠を購入する「ペイドメディア」、自社が運営するHPやSNSなどの「オウンドメディア」、第三者によって発信される「アーンドメディア」の3つを組み合わせるのが一般的です。
※メディア戦略については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください ↓
・クリエイティブ制作
メディア戦略に沿って各種クリエイティブを制作します。
限られた秒数・スペースの中でコミュニケーションメッセージ(商品の魅力)を伝えるためにはプロの制作会社・デザイナーの力を活用することをおすすめします。
・CM
・キービジュアル
・オウンドメディア
・販促ツール など
・広報、プロモーションの実施
先述の広告だけでなくオウンドメディアでの発信やPRなど複数の施策を組み合わせることで相乗効果がもたらされます。
・SNSの運用
・プレスリリースの配信
・PRイベントの実施
など広報活動も積極的に取り入れましょう。
なお、プロモーションを行う目的は生活者に商品を知ってもらうという点にとどまりません。
流通各社に対してアピールすることで、棚の獲得を狙う=流通対策としての意味合いも色濃くあることは意識しておくべきです。
〇商品開発の3つのポイント
ここまで商品開発のプロセスについて解説してきました。続いてそのプロセスにおいて気を付けたいポイントを3つご紹介します。
◎生活者理解への投資を惜しまない
商品開発プロセスの冒頭でもお話ししましたが、商品開発工程の一番初めに現状把握を精緻に行うことは大変重要なことです。肌感だけに頼るのではなく、客観的情報を収集・分析したうえでそれを材料に検討を進めることは開発において間違いなくプラスになります。
中でも生活者を理解するための情報は特に貴重で、その情報を得るためには定性もしくは定量の調査が必要になるケースが珍しくありません。これらの調査には少なからずコストがかかるので、このコストを惜しまずに積極的に調査することをおすすめします(自社で十分なデータを保有できている場合は例外ですが)。
この考え方はステップ➀の「現状把握」に限らず、ステップ②の「コンセプト評価調査」、ステップ③の「モニターテスト」などにも該当します。
◎常に生活者視点を忘れない
商品開発の考え方は【マーケットイン型】と【プロダクトアウト型】に大別することができます。
マーケットイン型は市場/生活者の立場から必要とされているモノを提供していく【ニーズ】起点の商品開発の考え方です。
市場に受け入れられる可能性が高く、売りの予測を立てやすいというメリットがある一方、他社に類似品を出されるリスクがあり自社の優位性を打ち出しづらいというデメリットがあります。
プロダクトアウト型は、企業側が作りたいモノ・提供できる価値を重視する【シーズ】起点の開発の考え方です。
自社の技術力や強みを発揮できるというメリットがある一方、市場に受け入れられない場合に売り上げが伸び悩むというデメリットがあります。
この2つはどちらが優れていて、どちらが劣っていると一概に言えるものではなく、両面からアプローチできることが望ましいです。
ただプロダクトアウト一辺倒の考え方では失敗する例も多いため、少なからず生活者の視点に立ってニーズから発想することは忘れないようにしていただければと思います。
◎社外リソースを積極的に活用する
社内のノウハウやリソースのみで商品開発することにこだわらずに、社外のマーケティング支援サービスを積極的に活用することをおすすめします。
商品開発は試行錯誤の連続で、社内メンバーだけではどうしてもアイデアがジャンプしないということが起こり得ます。そんなときに社外のリソースを活用することで、新たなノウハウや発想を取り入れることが可能となります。
特に調査・分析やプロモーションには大きな労力がかかるうえに、専門的な知識が必要となる場面がありますので、躊躇せずに社外のサービスを頼ってみてはいかがでしょうか。
子育てファミリー向け商品開発ならお任せください
今回は商品開発プロセスの4ステップと3つのポイントについて解説しました。このプロセスがすべてのケースに当てはまるわけではありませんが、貴社の商品開発のヒントになれば幸いです。
なお、当社ジェイアール東日本企画(jeki)はマーケティング&コミュニケーションカンパニーとして広告領域のサポートだけでなくメーカーの新商品開発にも携わってまいりました。
その中でも特に子育てファミリー層をターゲットとした商品開発を得意としています。
◇なぜjekiが子育てファミリー層に強みを持っているのか?
当社には子育て家族専門のプランニングチーム「イマドキファミリー研究所」があります。イマドキファミリー研究所では、イマドキの子育て家族の実態・インサイトを捉える定期的な研究と、実際に共働き・育児経験のある研究員たちのリアルな知見をもとに商品やブランドのコミュニケーション全般を支援しています。
その知見をもとにターゲットのリアルな実態・意識を捉えた魅力ある商品開発をトータルサポートするソリューションが【新商品開発支援パッケージ】です。
新商品開発支援パッケージの詳細についてはこちらをご覧ください↓
◇商品開発の前に、まずは子育てファミリー層の実態を把握したい方には
企業向け「子育てファミリーマーケティング勉強会」
子育て層のインサイトやニーズについて詳しく知りたいというマーケティング・宣伝担当の方には、イマドキファミリー研究所のメンバーが講義形式でご説明する企業向け「子育てファミリーマーケティング勉強会」をご用意しています。
育児経験のある戦略プランナーが最新のノウハウや調査データを共有し、対象企業・商材の課題に落とし込んでお話ししますので、マーケティング戦略の策定に有効に利用していただけます。
勉強会は、プロモーション実施計画がある企業に対し無償で行っていますので、ぜひこちらから詳細をご確認ください。