【電車ジャック】今どきの話題の作り方・広め方事例10選

キクコト 編集部

こんにちは。ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。

広告・マーケティングに“効く”コラム、今回のテーマは「電車ジャック」です。

コロナ禍を経て、OOH(Out Of Home)・交通広告が再び注目されています。街や駅を歩いていると大型のユニークな広告やサイネージを目にする機会が増えている印象です。実際、当社ジェイアール東日本企画にも昨年以上の申し込みをいただいており、交通広告市場は回復傾向にあります。

中でも車内の広告枠すべてを一社が独占して掲出する「電車ジャック(広告貸切電車)」は、SNSなどでもしばしば話題になっています。

電車ジャック広告自体は90年代から存在していますが、その当初は主に車内で完結する形で行われていました。しかし、近年ではSNSを駆使して、リーチを広げ、話題性を生み出すなど、立体的に展開する手法へと進化しています。

 ・周年記念で、自社だけの広告貸切電車を走らせたい
 ・電車ジャックとSNSを連動させた最新のキャンペーン事例が知りたい
 ・推し活ファンを巻き込んだ電車ジャック広告キャンペーンを実施したい

などの課題やニーズをお持ちの方に、おススメの内容です。

■電車ジャックとは?

「ジャック」は、「〇〇ジャック=乗っ取る、占拠する」といった意味から派生し、特定の広告メディアを一時的に貸し切る手法を指す名称として定着しています。通常、電車内には複数の企業の広告が並びますが、すべての広告枠を1社が独占するわけですから、広告業界においては、ある意味“事件”とも言えるほど強烈なインパクトを持つ広告施策です。

メディアジャックの一つである電車ジャックは、中吊りポスター、ビジョン、ステッカーなど電車内のすべての広告枠を1社で埋め尽くすことができるプランです。下の写真のように広告枠のカラーを統一するだけでも視線を集めやすく、広告主にとっても「わが社の広告が車両いっぱいに広がっている!」という高い満足感を得られる手法といえるでしょう。(写真はJR東日本の車両)

トレインジャックをした電車内

◎主な電車ジャック商品

 ・JR東日本:ADトレイン

 ・東京メトロ:Uライナー/Hライナー/Tライナー/Nライナー/レトロライナー(路線ごとの名称)

 ・都営地下鉄:メディアライナー

 ・東急電鉄:トークボックス

 ・小田急電鉄:イベントカー

 ・京王電鉄:アド・ギャラリー

 ・ゆりかもめ:ADトレイン

 ・名古屋鉄道(名鉄):マルチ

 ・阪急電鉄:sankyuトレイン

 ・近畿日本鉄道(近鉄):ADトレイン

 ・大阪メトロ:御堂筋プレミアムライナー

 ・JR西日本:ADトレイン

 ・西日本鉄道(西鉄):広告貸切(キャンペーン)電車

 ・JR九州:ADトレイン

各社それぞれ名称は異なりますが、いずれも電車内の広告枠貸切施策です。

その他オプションプランとして

 ・車体広告とのセットで車両の内外をまるごとジャック
 ・床面やドア面など、通常は設定のない場所も広告面として使えるジャック
 ・女性専用車両だけのジャック(女性向けの広告に最適)
 ・中吊りだけのジャック

など細かく設定されています。(各社により、プランが異なります)

また近年の電車ジャックは、企業の公式SNSを使って事前告知をしたり、投稿キャンペーンを行うなど、車内だけにとどまらずユーザーの参加や拡散を促す施策と連動させた事例がとても多くなっていることが大きな特徴です。

OOH・交通広告の効果的な活用法をまとめた教科書(全51ページ)

OOHメディアはじめてガイド

■電車ジャックのメリット

◎話題性を喚起できる

すべての電車内広告を1社が貸し切るため、通常とは異なる印象的な車内空間を作り出せます。乗客の目を自然と引き、注目度が高まるでしょう。企画や表現のユニーク性が伝われば、SNSでの二次拡散が期待でき、話題化につながります。

近年、気になる交通広告やOOH広告をスマートフォンで撮影し、SNSで共有する生活者が増えています。当社の調査によると、過去3年間でその割合は約2倍に増加しています。(詳細は下記グラフを参照)

OOH シェアラビリティのグラフ
引用:恵比寿発コラムより https://ebisu-hatsu.com/articles/?p=10287

◎表現の自由度が高い

電車ジャックは、通常の電車広告では実現できない表現が可能です(鉄道会社のレギュレーションにより自由度は異なります)。

・天藤製薬「ボラギノール」

天藤製薬は、新発想の便秘薬「ボラギノールスムース便秘薬」の便質改善によるスッキリ感を表現するため、「広告スッキリ車両」を東京メトロ銀座線・丸の内線で運行。

この広告では、電車内の広告を極力排除することで、「おなかも気持ちもスッキリできる」という特長を逆説的かつユニークに訴求しています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000125727.html

◎ブランドの世界観を醸成できる

電車ジャックの最大の特長は、1社の広告で車内を埋め尽くせることです。これにより、ブランドの世界観やイメージをリッチに表現できます。ブランドの世界観に乗客を引き込むことで、能動的に広告を見てもらえる可能性が高まります。

・正栄デリシィ「サク山チョコ次郎」

正栄デリシィは、チョコビスケット『サク山チョコ次郎』のキャラクターたちで埋め尽くされた電車ジャック「チョコ次郎がいつもの電車にやってきた!」をJR東日本中央線などで運行。車内全体で“毎日をチョっと明るくしてくれる”サク山チョコ次郎の世界観を展開し、いつもの移動時間に楽しい体験を提供しました。

トレインジャックの電車内風景

「JR東日本 交通広告グランプリ2024」空間プロデュース部門で優秀作品賞を受賞。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000042781.html

電車ジャックのデメリット

×費用が高い

電車ジャックは、すべての広告スペースを1社が貸し切るため、コストがかかります。例えば、JR東日本の山手線では、1編成を半月間掲出する場合の費用が1,500万円(税別・2025年1月現在)です。さらに、車体広告とセットで実施する場合は660万円(税別)が加算され、合計2,160万円(税別)となります。これに加えて、制作費や印刷費も発生します。

(※鉄道会社や路線によって料金は異なります)

×リーチ力に限界がある

広告ジャック電車は、通常1~2編成で運行されるため、乗客が乗り合わせる確率が低いのが難点です。例えば、山手線は全52編成が運行しており、特定の編成に乗る機会は限られます。そのため、OOH広告の中でも、広範囲にリーチする手法とは言えません。

ただし、近年はSNSでの事前情報公開やユーザーによる二次拡散が活発化しており、リーチ力を補うケースが増えています。話題化すれば、何百万人にも広告が届く可能性があります。

・福岡市「屋台列車」

福岡市は全国初の屋台基本条例の制定10周年を記念して、屋台文化の魅力をアピールすることを目的に、福岡市地下鉄で広告ジャック電車「屋台列車」を運行しました。車内を屋台街に見立て、天神・中洲・長浜の3大屋台街から45軒の店舗が参加。以下のようなユニークな広告演出を行いました。

・屋台の“のれん”をイメージした44種類の中吊り広告

・実際の屋台に置いているメニュー表で作ったドア横広告

・店主自身が撮影した料理写真による窓上広告

この「屋台列車」は、SNSでの拡散に加え、多くの全国メディアにも取り上げられ、電車ジャックのリーチの限界を超える高い認知度を獲得しました。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000099.000048792.html

電車ジャック 成功のポイント

●ユニークでインパクトのあるクリエイティブアイデア

電車ジャックを実施すれば必ず注目されるわけではありません。乗客が思わず見てしまう、SNSで拡散したくなるようなインパクトのあるビジュアル(自主視認性の高いデザイン)が重要です。前述の「屋台列車」は、その好例といえます。

・大阪海遊館トレイン

大阪の水族館「海遊館」は、開業30周年を記念し、近鉄で電車ジャックを実施。車体ラッピングを含め、車両全体を“海遊館”に変身させました。

車内には、イソギンチャクをイメージしたカラフルな中吊り広告や、窓枠・ドア面・床面に海の生き物たちを配置。まるで海の中にいるような空間を演出しました。【海遊館トレイン】のユニークなデザインはSNSでも大きな話題となり、「毎日乗りたい」「かわいすぎる」といった声が多数寄せられました。

さらに、コロナ禍による休館中という状況も追い風となり、社会的な関心を集めることに成功しました。引用:https://www.kaiyukan.com/press/200325_kintetsu_kaiyukan_wrappingtrain_pv.pdf

●ブランドの世界観を統一した空間演出

電車内の空間全体を、ブランドの世界観で統一するアートディレクションが求められます。

・明治ミルクアイス「Dear Milk」

株式会社明治は、国内初※の「乳製品のみ」で作られたミルクアイス「Dear Milk」の発売を記念し、真っ白い広告だけで東急東横線の電車をジャック。(※2023年3月 明治調べ)

商品の特徴である「シンプルな原材料」を強調するために、車内広告をすべて“真っ白”に統一。これにより、「Dear Milk」のピュアでリッチな世界観を表現しました。

この事例は、「あれもこれも伝えたい」と情報を詰め込みがちな広告とは対照的に、“引き算”のデザインによる統一感がブランドメッセージを強く伝える好例といえます。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000040840.html

・東京造形大学 「走る展覧会」

東京造形大学は、学生のアニメーション作品を展示する「走るアートミュージアム」を、JR東日本山手線で実施(車体広告とのセット)。

通常の広告枠を活用し、造形学部デザイン学科アニメーション専攻領域の学生76名による61作品を展示。電車内をまるごと展覧会場にするユニークな取り組みでした。

このプロジェクトは、在学生のモチベーション向上だけでなく、就職先企業、美術系大学を目指す高校生やその保護者など、多くのステークホルダーに対するブランディングの一環としても機能しました。

●時間・場所などの“モーメント”を捉える

電車ジャックは、ただ実施するだけではなく、「このタイミング」「この場所」だからこそ映える企画を立案することが重要です。

・ハッピーターン×京急黄色い電車“ハッピートレイン”とのコラボ

亀田製菓は、ロングセラー商品「ハッピーターン」の電車ジャックを5月29日(幸福の日)に「京急イエローハッピートレイン」とコラボして実施。

京急電鉄の「イエローハッピートレイン」は、“幸せを運ぶ電車”として沿線で親しまれている存在。この「ハッピー」の共通点を活かし、「ハッピーターントレイン」として展開しました。
引用:https://www.kamedaseika.co.jp/news/20240524_21582/

・ロート製薬×佐々木朗希×京成電鉄

ロート製薬は、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手(当時)を起用した電車ジャックを京成電鉄で実施しました。

千葉ロッテのオフィシャルスポンサーであるロート製薬と京成電鉄がタッグを組み、「試合観戦に向かうファンが乗車する電車」というモーメントを最大限に活用。

車内広告には、試合前の高揚感を盛り上げる要素をちりばめ、ファンの熱狂を引き出す構成となっていました。

●SNS連動による参加型の広告キャンペーン

せっかくの電車ジャックを単発で終わらせるのではなく、SNSと連動させるなど「ユーザー参加型」を意識することが重要です。オンラインによる拡散力と、オフラインならではのインパクトを掛け合わせたキャンペーンにすることで、効果を最大化できるでしょう。

・ハーゲンダッツ40周年記念

ハーゲンダッツ ジャパンは、創業40周年を記念し、「40年分のしあわせを運ぶ電車」をテーマにした電車ジャックを、東京メトロ・大阪メトロ・名古屋市営地下鉄で実施。

事前に公式SNSで「ハーゲンダッツの思い出エピソード」を募集し、投稿されたエピソードを電車内で公開。ハッシュタグキャンペーンによって“自分ごと化”されたことで、電車ジャックの注目度が大幅に向上しました。
引用:https://www.haagen-dazs.co.jp/company/newsrelease/2024/1213.html

■電車ジャックは”推し活”と相性が良い

●“推し活ファン”を意識したクリエイティブ&キャンペーン設計

電車ジャックだけにとどまりませんが、近年、人気のタレント・俳優・アニメキャラクターとコラボし、「推し活ファン参加型」のプロモーションを展開する広告が増えています。

当社ジェイアール東日本企画の調査によると、推し活ファンの行動傾向として、

 ・「推しが出演している商品を買う」……24.0%

 ・「推しが出演している広告を見に行く」……19.0%

というデータがあります。

ファンは、推しの広告で埋め尽くされた電車に乗り、写真を撮りSNSで共有・拡散するなど、電車ジャックは“推し活”と相性が良い広告手法といえます。

推し活に関する調査データのグラフ

キリンビバレッジ「午後の紅茶」×目黒連

キリンビバレッジ「午後の紅茶」の電車ジャックも、”押し活ファン”を意識した施策といえるでしょう(東京メトロ銀座線・丸ノ内線、大阪メトロ御堂筋線で実施)。

この電車ジャックはSNSでファンを中心に大きな話題となり、「午後の紅茶 ミルクティー」でも同様の「紅茶鉄道」を運行するほどの反響を呼びました。

上記のような”推し活ファン”を巻き込んだ広告手法「推し活マーケティング」についての、わかりやすいガイドブックを公開中です。興味がある方は、以下からダウンロードしてご活用ください。また不明点やご質問などはメールでお問い合わせください。

押し活マーケティングはじめてガイド

・集英社 「僕とロボ子」クラウドファンディング

集英社は、週刊少年ジャンプのアニメ化作品「僕とロボ子」のラッピング広告(JR東日本の山手線)を、クラウドファンディングにより実現。ファンが直接資金を提供し、「自分たちの手で推しの広告を実施する」という、前例のないプロモーションスキームを成功させました。

この事例は、推し活ファン参加型による「全く新しいプロモーションスキーム」と言えるでしょう。

当社専売!クラウドファンディングを活用したプロモーションで、山手線ジャックを実施しませんか?

当社ジェイアール東日本企画(jeki)では、ファンが資金を出し合い「推し」を応援する広告「応援広告」を支援するサイト「Cheering AD」https://cheering-ad.jeki.co.jp/を運営しています。

このサイトの支援サービスの一つである「クラウドファンディング機能」を活用して、山手線ジャックや車体広告を実施するプロモーションプランを企業向けにご提供しています。興味のある方は、以下から詳細資料をダウンロード、あるいはメールでお問い合わせください。

企業プロモーションにクラウドファンディングを活用するプラン

まとめ【電車ジャック広告】成功のカギは、創造性・世界観・参加性

本コラムでは電車ジャックとSNSを連動させた、さまざまな広告事例をご紹介しました。

成功事例に共通するポイントは以下の3つです。

・自由なアイデアと創造性

 乗客の目を引き、驚きや感動を生み出すことへの強いこだわり(クリエイティビティ)

・ブランドの世界観を統一した空間づくり

 電車内全体をブランドのメッセージで満たし、徹底的にこだわる姿勢(ディレクション)

・参加型の広告設計

 電車ジャックを単なる広告施策にとどめず、SNSなどを活用したユーザー参加型のキャンペーンを設計する
 (インタラクティブ)

次回の電車ジャックを企画する際は、ぜひこれらの視点を意識してプランニングすることをおすすめします。

「電車ジャック×SNS×推し活」プロモーションは、jekiにご相談ください

本コラムを執筆したジェイアール東日本企画(jeki)は、JR東日本グループの広告会社として、電車ジャックをはじめとするOOH・交通広告の企画・実施を得意としています。

また、当社は推し活ファンによる「応援広告」の申し込み・事務所許諾交渉・デザイン・印刷・掲出までをフルサポートするECサイト「Cheering AD」を運営し、これまでに数百件の実績を積み重ねてきました。

その豊富な経験を活かし、「OOH×SNS×推し活」を組み合わせた電車ジャックプロモーションを全面的にご支援いたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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