【図解・事例で解説】OMOマーケティング入門

キクコト 編集部

こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。

今回は近年小売業界で注目されている「OMOマーケティング」についてお話ししたいと思います。
近年のデジタル化でOMOマーケティングの推進を掲げ始めたという企業も多いのではないでしょうか。しかし、OMOマーケティングはデジタル化への費用がかかることはもちろん、綿密に計画を立てないと失敗をするケースも多く、すぐに実践できるものではありません。

今回コラムでは、OMOの基本的な考え方や国内での事例を紹介し、OMOマーケティングを始めるにあたり重要なポイントについて解説していきます。

☑OMOマーケティングについて詳しく知りたい
☑OMOマーケティングの具体的な事例を知りたい
☑OMOマーケティングを行う上で、何から取り掛かればよいのかわからない
といったお悩みがある方にぜひ参考にしていただければと思います。

OMOとは?


OMOとは「Online Merges with Offline」の略語で、「オンラインとオフラインの融合」という意味です。オンラインとオフラインの区別をせず最適な顧客体験(UX)を提供することを目的としたマーケティング手法です。

OMOマーケティングでは、オンラインとオフラインどちらで商品購入やサービスを受けるのか、どちらで情報を受け取るかなどを区別することなく、顧客にオンラインとオフラインをシームレスに行き来できるようにして購買を促します。

ほとんどの人がスマートフォンを持ちデジタルシフトが進む現代では、このように必要に応じてオンラインとオフラインそれぞれの最適な手段を提供することが不可欠となります。

オンラインを活用するマーケティング用語として、OMOと混同されやすいO2Oやオムニチャネルとの違いを紹介します。


O2Oとは、「Online to Offline」の略語で、オンライン上で顧客と接点を作り、オフライン(実店舗)での購入を促すマーケティング手法です。



OMOマーケティングとの違いは、オフラインの店舗での購買を軸としてオンラインは集客のための手法である点です。例えばO2Oマーケティングでは、ECサイト利用者に実店舗で使用できるクーポンを配布するなど実店舗へ来客してもらうためのアプローチをオンライン上で行います。

それに対して、OMOマーケティングの場合は、オンライン・オフラインどちらでも購入しやすくしたり顧客データを共有したりなど、オンラインとオフラインの境界をなくす施策で顧客満足度を高めます。

例えば、実店舗でもECサイトでも共通で使用できるクーポンを配布し、顧客にはどちらでも好きな方法で購入してもらいます。さらに、顧客データをECサイト・実店舗で共有することにより、ひとり一人へおすすめの商品へのクーポンを配布するといったアプローチや、ECサイト・実店舗どちらで商品を購入してもポイントを貯めることができるシステムの構築ができます。こうすることで来店の可能性も高まります。


オムニチャネルとは、実店舗やECサイト、SNSやメールマガジン、自社アプリ、チラシなどさまざまな方法で顧客と接点を持ち、アプローチを行う販売戦略のことをさします。「オムニ」とは「すべて」という意味で、「チャネル」は集客のための「流入経路」のことです。

OMOとの違いは、企業目線でさまざまなチャネルを区別して使用している点です。

例えばメールマガジンではECでの購入クーポンを配布、アプリでは実店舗で使用できるクーポンを配布のように、それぞれの役割を区別して各チャネルを使用しています。顧客の利便性のためにオンラインを活用するのではなく、企業が顧客にアプローチする接点を増やすためにさまざまなオンラインを活用しています。そのため、オムニチャネルでは、オンラインとオフラインの行き来は顧客が自由に決められるものではありません。

一方、OMOマーケティング施策では実店舗で商品の受け取りをする場合、実店舗で購入をするか、オンライン上で注文をして受け取りだけを実店舗でするかなど顧客がオフライン・オンラインの使い方を自由に選択することができます。OMOは、顧客体験の向上のために複数のチャネルを行き来することができるマーケティング施策であり、オムニチャネルをさらに応用させた考え方といえます。

OMO・O2O・オムニチャネルのそれぞれの違いをまとめると下記のようになります。

OMO・O2O・オムニチャネルの違い



オンラインとオフラインをともに活用するという点では近い言葉ですが、O2Oやオムニチャネルは「企業視点」、OMOは「顧客視点」であり根本的な目的が異なります。OMOは、O2Oやオムニチャネルをさらに進化させた新たなマーケティング手法であり、これから重視するべき考え方です。

■OMOマーケティングが浸透してきた背景

OMOという単語は、Google中国法人の元CEOの李開復(リ・カイフ)氏が提唱し、その後『The Economist(エコノミスト)』で発表されたことで広まったものです。下記の4つの発展から、今後はO2Oではなくオンラインとオフラインが融合した環境になっていくと言われています。

インターネットの普及でさまざまなことがデータ化できるようになったこと
②モバイル決済の浸透でどこでも支払いができるようになったこと
③センサー技術の進化、高品質なセンサーが安価で手に入る環境になったこと 
④ロボットやAIの普及で対応の自動化ができるようになったこと

この4つが合わさることにより、常にオンライン上でオフラインと同じ体験ができるようになりました。中国の都市部ではほとんどの決済がモバイルペイで支払い可能であり、小売市場全体に占めるECの割合は45%とオンラインを用いた購買が主流となっています。小売りだけでなく、オンライン問診からECサイトで薬の処方・購入が可能など医療分野でもOMOが浸透しており、生活の中でOMOが当たり前になっています。

日本国内でも、新型コロナウイルスの影響で、顧客が非対面での情報収集や購買を求める傾向が強くなったことが転機となりました。

2023年に発表された経済産業省の調査によると、2022年の物販系のBtoC-EC市場規模は13兆9997億円とコロナ前の2019年から約1.4倍の市場規模に成長しています。BtoC 市場のEC化率も9.13%まで上がり、今後も増加傾向にあります。



しかし、ECサイトの成長により実店舗が減るというわけではなく、直接商品に触れたり、試したりしてから購入したいというオフラインならではの体験へのニーズはなくなりません。実際、ECサイトやSNSで情報収集をして店舗での滞在時間をなるべく減らしたり、逆に店舗では商品のサイズ感や質感を確認するのみで、その後ネット上で一番安い値段で購入をしたりとオンラインとオフラインの両方を活用して買い物をしている方も多いのではないでしょうか。

そのため、単純なデジタル化ではなくOMOマーケティングの推進を実施する企業が急増しています。

■OMOマーケティングの具体的な事例

ここからは、OMOの具体的な施策を日本国内の企業の事例とともに紹介します。


顧客がショップのアプリなどからあらかじめ注文・決済し、受け取り時間にあわせて店舗に出向くことで商品をすぐに受け取ることができるモバイルオーダー。マクドナルドやスターバックスなどで利用したことがある方も多いのではないでしょうか。

マクドナルドでは、テイクアウトの場合のみならず、店内のテーブルからモバイルオーダーで注文し指定のテーブルでの受け取りや、ドライブスルー・駐車場での受け取りもできるサービスを行っています。

顧客は、レジに並ぶことなく注文することができるため、待ち時間のストレスがなくなります。店舗にとっても、レジの人員削減や、口頭での注文やり取りよりミスを減らすことにつながり効率的なオペレーションができるようになります。


Amazon社が新しい試みとして2018年にオープンした完全無人店舗「Amazon Go」が有名ですが、国内でも同様の無人コンビニエンスストアが増加しています。

高輪ゲートウェイ駅の開業とともに1号店をオープンした無人コンビニ「TOUCH TO GO」。2020年3月の高輪ゲートウェイ駅直営店舗のオープンから4年、すでに全国100ヶ所で導入されています。

無人のセルフレジはこれまでも存在しましたが、無人コンビニでは商品をスキャンする必要がなく、自動的に商品が認識されます。店内に設置したカメラや赤外線と商品棚に設置した質量パネルのデータを組み合わせ誰が何を購入したかをデータ化しているのです。そのため商品を直接自分のバッグに入れてもよく、出口を出る際に購入内容の確認がタッチパネルに表示されてまとめて会計をすることができます。

従来型の店舗で使用していたPOS端末のシステムでは、売れた商品名や時間、個数などはわかりましたが、OMO化により今まで得られなかった「顧客が何を買わなかったか」というデータを取得することができます。
例えば、「TOUCH TO GO」のサラリーマン層顧客は、一度ハム入りサンドイッチを手に取るものの、棚に戻してもっと安い商品を買う傾向が高いといいます。どの棚を見てどの商品を購入検討したかという顧客のオフラインの店内行動をデータ化することで、これまで以上に顧客のニーズを理解することができます。


オンライン予約というとレストランや美容室などの予約をイメージしますが、試してから購入したいというニーズが多いアパレル店や家具店などで接客予約を導入する店舗が増えています。ECサイト上で商品を探す顧客へ、店舗での試着や相談のオンライン予約を誘導することでシームレスにオンラインからオフラインに誘導しています。

オンライン予約の成功事例として、ファッションブランドの「ナノ・ユニバース」では、ECサイト上で気になった商品があれば、店舗・日時・販売員を指定して試着のオンライン予約をすることのできるサービスを行っています。ECサイトの顧客情報とつながっているため、店頭スタッフはあらかじめ顧客の趣味・嗜好を把握して接客することができ、通常の接客よりも顧客満足度を上げることができる仕組みになっています。

OMOによって登場した新しい店舗の形として、実店舗をショーイング中心にして、ECサイトでの販売と融合させたメディア型店舗も近年注目されています。

渋谷PARCOの5Fフロア「PARCO CUBE」では、出店する店舗は従来の売場面積の約半分の10坪程度で展開されています。店舗ではショーイングが中心でECサイトでの販売に重きを置いています。戦略アイテムや限定商品を中心に展示を行い、購入はECサイト「ONLINE  PARCO」へ案内をします。店舗内や共用スペースにはECサイトで実在庫を絞り込むことのできるサイネージを設置し、気になった商品の在庫をストレスなく検索や商品情報をスマートフォンに転送できるようになっています。

顧客は、購入するかどうかゆっくり検討したり、購入後に商品を持ち帰らず手ぶらで帰宅できるというメリットがあります。企業側にとっては、店舗の省スペース化・在庫管理の省力化につながっています。


LINEの公式アカウントでの情報提供やポイントを貯める機能は多くの店舗で実用化されている例ですが、メガネブランドの「Zoff」では商品の購入がより便利で簡単になるようにLINEアカウントで複数の機能を活用しています。

店舗で受付後のメガネ完成通知、保証書の保存、視力や購入したメガネなど顧客情報の保存などをLINEアカウントに連携しています。1本目の購入の顧客体験の向上だけでなく、アフターフォローや2本目のメガネを購入することへのハードルを大幅に下げ、販売機会を増やすことに成功しました。

■OMOマーケティングのメリット・デメリット

これまで紹介した具体的な施策からわかるようにOMOの推進には下記のようなメリットがあります。

顧客満足度のアップ
店舗運営の効率化
顧客データ統合で今までわからなかった顧客のニーズを理解できる
販売機会を増やす/販売機会の損失を抑えることができる

インターネットの普及により顧客がさまざまな情報を見て吟味ができるようになった現代では、ただ良い商品やサービスを提供するだけでは差別化が難しい時代になってきました。今後はOMOマーケティングの実施によって、商品やサービスにプラスして顧客体験の価値を上げ、顧客ロイヤリティを高めることが重要になっていきます。

OMOマーケティングは、今後取り組みが必須になっていく施策である一方、デメリットも多く存在します。


顧客向けツール開発や店内設備の導入などコストがかかる
・売り上げにすぐ直結するわけではない
自社に合わせたOMO施策を行わないと成果が出にくい

すぐに事例に挙げたような施策が行える企業は多くありません。まずは失敗しないために、顧客視点に立ってどのようなOMOツール(自社アプリや店内の行動計測システムなど)が必要かを見極める必要があります。

実際、OMOマーケティングはしっかりと戦略を立てないとコストや時間をかけたにもかかわらず失敗に終わってしまうケースも非常に多いです。成功事例として紹介した無人コンビニは、中国では多数店舗が閉店という結果になりました。システムにコストをかけた結果、商品の価格が高くなってしまったことや、入退店時に使用するアプリの操作性が悪くOMO化でかえって顧客のストレスが増えてしまったことが原因です。

■OMOマーケティングを始めるうえで重要な点

OMOマーケティングは、下記のような準備を行うことからスタートしましょう。


まずは、顧客が自社の商品やサービスを購入するまでにどのような行動をするかの整理を行いましょう。顧客体験は、ビジネス上都合の良い理想的なシナリオを描いてしまいがちですが、顧客の目線に立って、購入までの行動でストレスを感じる点はないか、どのような体験を提供したら満足度が上がるかを考えましょう。

店舗やECでの購買時の行動だけでなく、認知や検討段階、購入後の行動までのカスタマージャーニーマップを制作するのがおすすめです。顧客の購買行動プロセスのAISCEAS(アイシーズ)モデルに沿い、各フェーズでのチャネル(街頭看板、電車、モバイル、PCなどの接触媒体)やタッチポイント(CM、検索、SNSなど)を記載するとOMOマーケティングの理想的な顧客体験が見えてきます。


購買行動に沿った戦略の立て方については、「クロスメディア戦略」解説コラムで詳しく紹介しています。




顧客体験の設計をするうえで最も重要なのは顧客理解です。自社の顧客を憶測で推定するのではなく、顧客の行動データを用いて分析を行い明確な顧客像を持ちましょう。この時使用する行動データは、オフライン・オンラインそれぞれの行動データがあることが重要です。

顧客像の作り方や活かし方については、「ペルソナマーケティング」のコラムで解説しています。




OMOとはオンラインとオフラインの垣根をなくして、一番良い顧客体験を提供しようとする概念です。そのためOMOを推進する上で、チャネルを複数用意することやチャネル同士のデータ連携が重要です。すでに自社で顧客データを持っている場合は、オンライン・オフラインバラバラで集約していた顧客データの統合や、顧客理解のために現場の担当者が必要な顧客データを確認できる仕組み作りをしましょう。

■顧客データの分析に!「JRE Adsテストマーケティングパッケージ」がおすすめ

まだ自社で扱えるデータが少なく、OMOマーケティングの実施前に想定している顧客像があっているのかの確認や、顧客がどんなタイミングで商品の購入やサービスの利用をしているのかを分析したいという場合におすすめのソリューションを紹介します。

「JRE Ads」は、SuicaなどJR東日本グループの持つさまざまな顧客データを活用したWebターゲティング広告です。通常のWeb広告よりもエリアや購買行動を詳しくターゲティングできるため、Web広告に反応すると思われる顧客像を明確に知ることができます。



JR東日本グループが保有する、移動や購買などの顧客データをWeb広告に活用できるソリューションが「JRE Ads」です。Web広告メディアの既存セグメントと、特定の駅利用者への配信、指定の商品購入顧客への配信などJR東日本グループならではのさまざまなデータによるセグメント設定を掛け合わせた、独自のターゲティングが可能になります。
なんと Suicaの移動履歴=確定データを用いた正確なエリアターゲティングができるのが大きな特徴です。



「JRE Ads」では、交通系 IC(Suica)の乗降履歴に配信を行うため、駅利用者へのWeb広告としては非常に精度が高い施策となります。通常のWeb広告でセグメント可能なエリア設定はGPSのデータであり、そのエリアに住んでいるのか勤務しているのかなどはわからない「推定データ」です。
しかし、JRE Adsでは時間帯や利用回数、定期券の種類などの「確定データ」を用いるため、例えば下記のようなことがわかります。

・その駅の利用回数が月1回程度→たまたま来た
・その駅の利用が休日のみ→買い物や習い事などで駅を利用している
・通勤定期を利用して乗降している→その駅の近くで働いている

このように、今までは「そのエリアを訪れた人」という抽象的だった人物像を具体的に絞り込むことができます。

JRE Adsで絞り込みができる行動の例

このようなデータを確認することにより、自社の広告に興味を持った顧客が今まで想定していた顧客像とあっているか確認することが可能です。


「JRE Ads」では、エリア別にテストマーケティングを行い、反応の違いを調査することも可能です。各エリア・駅利用者にアプローチし、反応の良いエリアやクリエイティブを割り出すことで実際の顧客像を明確化することができます。

さらにテストマーケティングの結果から、ターゲットに効果のあるOOH媒体を併用して最適な認知拡大の広告を打つこともできます。

「JRE Ads」を用いたテストマーケティングについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。


■まとめ

・OMOとはオンラインとオフラインの区別をせず、顧客にとって最適な顧客体験を提供することを目的としたマーケティング手法
・OMOマーケティング成功のカギは、顧客目線に立って顧客体験の整理、顧客理解を行うこと
・OMOを始める前に、自社の顧客の行動データの分析を行うのがおすすめ

当社ジェイアール東日本企画は、JR東日本グループの広告会社であり、グループが保有するオンラインデータ・オフラインデータなどさまざまな情報に精通しています。

今回ご紹介した「JRE Ads」を用いたテストマーケティング以外にも、データ分析による集客プロモーションの実施も可能です。この強みを活かして、貴社ビジネスに最適のセグメントをカスタマイズし、ご提案します。その他不明点などお気軽にお問い合わせください。

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