こんにちは、ジェイアール東日本企画クリエイティブ局です。
私たち広告会社のクリエイティブスタッフは、広告主のマーケティング課題を、
広告クリエイティブのチカラでどのように解決できるか、日々模索しています。
今回はそのような仕事の中から、
具体的な事例を通して課題解決へのアプローチ手法を解説します。
◎自社や商品の認知を上げるために広告を出したい。
◎商品のブランドリフトなどに効果的な広告クリエイティブを作りたい。
◎広告クリエイティブの評価方法を知りたい。
◎SNSなどで拡散される広告クリエイティブの事例を知りたい。
上記のような課題や疑問をお持ちの広告担当者さまに、参考になれば幸いです。
■広告クリエイティブ事例「かにを食べに北陸へ。」キャンペーン
クライアント:JR東日本
実 施 :2018年〜
媒 体 :交通広告 Web広告 新聞広告
目 的 :「秋・冬は北陸のかにのシーズン」の認知度をアップする広告クリエイティブを作り
かにを旅行目的の一つとした秋・冬期の北陸新幹線の利用促進につなげる
◎オリエンテーション
クライアントからの要望は「秋・冬=北陸のかに」ムーブメントの醸成でした。
2017年から当キャンペーンを始めたのですが、関西に比べて首都圏では
まだ認知が低い「秋・冬は北陸のかに」。
まずは、「11月6日のズワイガニ漁解禁日から、かにシーズンが始まる」
事実を知ってもらえるような広告クリエイティブを作りたい。
オリエンでは、「ズワイガニ漁解禁日」にも、ボジョレーヌーボーの解禁時
のような盛り上がりが欲しいなあ」というお話もいただきました。
◎戦略を決める
①11月6日のズワイガニ漁解禁日=【季節のイベント×食】を
広告クリエイティブで伝えましょう
考えてみれば、我々日本人は「スキあらば季節のイベントにのっかって食を楽しもう!
という気持ちがかなり強いかもしれません。
たとえひと手間かかる作法やハードルがあってもキチンと踏襲しようとする律儀さ、
いやむしろその手間さえイベント気分をアップさせる大事な要素と言えそうです。
その視点を広告クリエイティブに反映させたいと考えました。
②ポジショニングの目標をつくりましょう
この【季節のイベント×食】カレンダーに「秋・冬は北陸のかに」も仲間入りして欲しい。
しかしいきなり節分や丑の日レベルのポジション獲得は難しい。
もっと近いめざすべきポジションのイベントはないかな、と探し気づいたのが
西日本を中心に季節のイベントとして根付いていた「夏は京都で鱧」。
2つのイベントを整理してみると共通項も発見できました。
そこで本キャンペーンがターゲットとするポジションを「夏は京都で鱧」と設定することに。
2017年時点の検索キーワードで「鱧 京都」「カニ 北陸」を比較してみると、
だんぜん「鱧が有利」。
一方、ここ数年かにも頑張っている、という状況でした。
このグラフで注目すべきポイントは、「鱧 京都」は毎年7月頃、
安定的に検索トレンドの大きな山を作っているということ。
これをお手本にして「カニ 北陸」も、11月の検索ニーズをもっと安定的に大きくしたい。
その目標に寄与する広告クリエイティブとは、どのような表現か?を深掘りしていきます。
以上の戦略を、広告主であるJR東日本に提案。
広告クリエイティブでSNSを中心に話題を喚起し、
季節のイベントとして根付いている「夏は京都で鱧」のように
「秋・冬は北陸でかに 」のムーブメントを醸成するという目標を
共有しました。(Googleトレンドで成果検証します)
■企画を考える① 2018年の広告クリエイティブ事例
何を大事にするか?
効果的な広告クリエイティブにするために、
何をポイントにして企画を進めていくべきかを考えます。
今回は「北陸のズワイガニ漁解禁日」という
「季節の食イベント」をユーザーに知ってもらうことが目的なので、
「何かが始まりそうな期待感」「ワクワク感」を大事にすることに。
ワクワクできる広告クリエイティブとは?
そこで「11月6日のズワイガニ漁解禁日を待ち望んでいたかに達が待ちきれず上陸してくる」
というアイデアをブラッシュアップしていくことにしました。
巨大かにが北陸の景勝地に上陸!
↓
今すぐ逃げるべき?
↓
でも、美味しそう。
↓
いますぐ北陸へ食べに行って迎え撃とう!北陸新幹線に乗って。
というストーリーをイメージ(妄想)し、クリエイティブのラフを作成します。
怪獣は太平洋から東京に上陸しますが、かには日本海から北陸に上陸するのです。
かにの独特な造形は「エンタメ怪獣映画」仕立てがぴったりハマりそうです。
さらに「スシ・ビーム」「カニノツメアタック」などの美味しい技も追加。
これで「ワクワク度」がさらにアップしたクリエイティブに。
またエンタメ映画の予告編は映画への期待感をとてもアップさせるので、
それを踏襲したティーザー編も作成しました。
【2018年完成クリエイティブ画像】
北陸にズワイガニ襲来。カニを食べに北陸へ出撃せよ!
さまざまな要素を詰め込み「エンタメ感」を出しつつ、
北陸3県ごとの「かにのブランド名」もキャッチコピーでしっかりアピールしました。
◎展開
★ 山手線ADトレイン(山手線の電車内広告を、1社で貸し切る広告展開の意味)
★ 駅ポスター・新幹線駅集中貼り・駅装飾・トレインチャンネル
★ Webバナー広告 (11月6日のズワイガニ漁解禁日に合わせて出稿)
★ 新聞・雑誌広告 (新聞広告は11月6日のズワイガニ漁解禁日に合わせて出稿)
◎SNSなどの反応
10月中旬から掲出開始。
どこか懐かしさすら感じる怪獣映画のようなビジュアルの反応は
非常に高く、Twitter、Instagram、FacebookなどSNSへの積極的な投稿も多々確認されました。
ズワイガニ漁解禁日に合わせてADトレインも運行。
襲来ビジュアルと、かにを紹介するポスター画像で埋め尽くされた特別車両の
インパクトは大きかったようで、SNSへの投稿が一気に跳ね上がりました。
ADトレイン車内のクリエイティブは、マルチで原稿展開。
シズル感あふれるかに料理の画像も効果的に組み込んで、行動促進を試みました。
この車両に偶然乗り合わせた人たちは、非常に困惑している人、スマホでポスターの画像を撮る人、
「CRAZY!」と大笑いしながら原稿を見る外国人観光客ファミリー、
「おいしそうねえ」「北陸行きたいね」とのんびり会話をかわすご夫婦など
さまざまな反応が見られました。
11月6日掲載の新聞広告
11月6日のズワイガニ漁解禁日に配信された、Yahoo!のバナー広告
「襲来」という広告コピーを引用したツイートが多々みられたことから、
訴求内容が消費者に届いていることがわかります。
11月6日の山手線出稿に合わせてのSNSへの投稿も数多くみられました。
■企画を考える② 2020年の広告クリエイティブ 事例
送客訴求ができない送客キャンペーン
2020年はコロナ禍の影響もあって、「北陸への送客」が目的なのに
「北陸に来てね」と大きな声では言えなくなってしまいました。
でも「秋・冬は北陸のかに」はしっかり記憶に残したい。
この矛盾する状況でのメッセージを「かに目線」で率直に表現することにしました。
「コロナでも解禁日はちゃんとやってくるよ!」
「本当は来て欲しいのに・・」
「北陸のかにを忘れないで・・」
「なんなら、こっちから会いに行っちゃう!!!!」
2018年には意気揚々と襲来してきたかにたちから、
そんな必死で健気な声が聞こえてきそうです。
「らしさ」を大切にした広告クリエイティブを
このキャンペーンでは、面白味を持たせる事で印象に残る
広告クリエイティブをめざしています。
たとえコロナ禍であってもその「らしさ」は大事にしたい。
そこでコピーは世相に合わせた健気なトーンでも、
ビジュアルはユーザーたちが一度見たら忘れられないような思い切ったものにして
「らしさ」を守ることにしました。
【2020年完成クリエイティブ画像】
会いたい北陸のかに 本当は、こっちから会いに行きたいくらい。
完成原稿は、アイデアスケッチからさらに面白味を持たせ、「らしさ」を追求した表現に。
メッセージは控えめでも、会いたい気持ちでいっぱいな北陸のかに達の行動は強引。
新幹線を乗っ取る、パソコンから現れる、ディスタンスからの解放、等自由にふるまってもらいました。
◎展開
★ 駅ポスター・駅装飾・トレインチャンネル
★ Webバナー広告
★ 雑誌広告
◎SNSなどの反応
2020年もSNSでの反応は早く、10月3日の広告立ち上がり日当初に、
投稿数・リツイート数が突出して増加。
まずこのツイートが「バズる」結果となりました。
Twitter、Instagram、FacebookなどSNSの投稿内容を見ていくと、
「今年もこの時期がきた」「北陸新幹線=かに」など、
本キャンペーン(秋・冬の北陸=かに)の定着ぶりがうかがえます。
また、ビジュアルのインパクトに対する反応とともに、コピーへの共感も多かったようです。
またネットニュースの記事でも取り上げられ、広く話題になったことが確認できました。
■Googleトレンドによる成果検証
作り手としては、SNSの反応など定性的な手応えは感じられたキャンペーンでしたが
実際のところどれくらいメッセージがユーザーに届いたのか?
そしてムーブメントに寄与できたのか?
客観的な定量データで、成果を検証してみました。
今回は、Googleトレンドによる検索ニーズの推移を指標にします。
(広告掲出の大部分エリアである東京都でのトレンド調査)
Googleトレンドとは?
Googleトレンドとは?
ある単語(キーワード)がGoogleでどれだけ検索されているかというユーザーのトレンドを
グラフで見ることができるツール(ウィキペディアより引用)です。
Googleトレンドのグラフにある0〜100の数値は、特定期間における検索数を表すのではなく、
検索キーワードやトピックの人気度を0〜100の範囲で相対的に数値化したデータです。
検索インタレスト(興味・関心)の人気度を最大100として、
100に近づくほど、より検索需要が高いキーワードと判断することができます。
まず、過去5年の「カニ 北陸」検索インタレストの推移グラフ(下図)を見ると、
2018年以降、若干のデコボコはあるものの、11月に検索キーワード「カニ 北陸」の
大きな山が作られており、広告による「秋・冬(11月)=北陸のかに」の
刷り込み効果が読み取れます。
また、「カニ 北陸」の検索インタレストは、広告キャンペーン実施前の2016年に比べほぼ倍増。
広告効果による「興味・関心」の高まりがうかがえました。
そして当初「めざすべきポジション」とした「鱧 京都」との数値を比較すると、
2018年、2020年共にわずかながらも上回るという結果になりました!
検証結果のまとめ
当初私たちが提案したクリエイティブ戦略
①11月6日のズワイガニ漁解禁日=季節のイベント×食」を伝える
②ポジショニングの目標を作る
は、定量的な成果を出すことができ、
広告キャンペーンの目的である
「秋・冬(11月)=北陸のかにムーブメントの醸成」にしっかりと作用したことが
データでも裏付けられました。
■まとめ:広告クリエイティブで、課題を解決するために大切な事
以上、当社で実施した広告クリエイティブ事例の一つをご紹介しました。
北陸新幹線の乗車実数は、コロナや外出制限の影響があるので、最終判断は難しいのですが、
検索ニーズの増加やSNS上の話題作りは成功。
広告キャンペーンの狙い通り、首都圏での
「北陸ズワイガニ漁解禁=11月上旬➡新幹線で食べに行こう」は
刷り込まれたと評価できるのではないでしょうか。
広告クリエイティブで成果を出すためには、
●広告施策の目的やターゲットを明確にし、
●めざすべき指標を選定する
そうすれば、広告クリエイティブの企画や表現の方向性はおのずと決まってきます。
■ジェイアール東日本企画のクリエイティブ局が、成果の出る広告クリエイティブをご提案します!
当社では、さまざまなマーケティング課題を解決した広告クリエイティブ事例を、
数多く蓄積しています。
当社のクリエイティブ事例集をご覧になりたい方はこちら➡ https://online-soudan.jeki.co.jp/works
■自社の課題を解決する広告クリエイティブを作りたい。
■自社の広告クリエイティブについて、プロのアドバイスが欲しい。
■広告クリエイティブの評価方法を知りたい。
■SNSなどで拡散される広告クリエイティブの事例を知りたい。
などの課題をお持ちでしたら、当社運営の広告施策ご提案サービス
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