
こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のコラムのテーマは「ファンエンゲージメント」です。
2025年現在、ファンエンゲージメントは多くのブランドにおいてマーケティング戦略の中核を成す重要な要素となっています。
ブランドや企業がファンと積極的に関わり合い、信頼関係を築くことで、ブランドロイヤリティの向上や口コミ効果の拡大といった多くのメリットを享受できます。
本コラムでは、ファンエンゲージメントの基本からトレンド、そして実際の施策までを網羅的に解説します。
具体例やデータを交えながら、ファンエンゲージメントの効果的な方法を紹介していきますので是非参考にしてください。
1. ファンエンゲージメントの基本
・ファンエンゲージメントとは?
ファンエンゲージメントとは、ブランドや企業がファンや顧客と積極的に関わり合うことで築かれた信頼関係、およびその関係構築に関する活動のことを指します。
単にSNSでのフォロワー数や「いいね!」の数が多いかどうかではなく、ファンがブランドに対して強い愛着や忠誠心を持つ状態を、「ファンエンゲージメントが高い」と言います。
ファンエンゲージメントが高いと、ファンはブランドのプロモーターとなり、口コミで宣伝をしてくれたり、リピート購入をするようになります。
・ファンエンゲージメントの重要性
ファンエンゲージメントは、現代のマーケティング戦略において非常に重要です。主な理由は以下の通りです。
ブランドロイヤリティの向上:
現代は多くの業種・分野でコモディティ化が進んでおり、商品・ブランドの消費される周期が非常に早くなっており、ブランドの寿命を延ばし、活力を与えるマーケティング施策が求められています。ブランドのエンゲージメントが高いファンは、ブランドに対して強い忠誠心を持ち、競合他社に移る可能性が低くなります。
フィードバックの収集:
ファンとの対話を通じて、製品やサービスの改善点を直接聞くことができ、顧客満足度の向上に繋がります。
この情報を活かすことができれば、改善された商品が、既存のファン・ユーザーだけでなく、結果的に新たなユーザーを獲得することにつながります。
口コミ効果の拡大:
エンゲージメントが高いファンは、自発的にブランドを他人に勧めることが多く、自然な口コミ効果が期待できます。
メディアを利用した大規模な広告による認知だけでは生み出せない効果です。
「推し活」の発生:
近年、個人が特別に愛好する商品やブランドや作品やキャラクターや人物のことを「推し」と呼ぶことがあります。またその「推し」に対して積極的な応援行動や消費行動を行うことを「推し活」と呼びます。
この「推し活」は、もっともファンエンゲージメントが高まっている状態で発生します。
推し活を行うファンはブランドやコンテンツを購入・愛好するだけでなく、「応援広告」などの積極的な応援行動を取るようになります。(応援広告の詳細については後述します)
当社ジェイアール東日本企画による、15歳~69歳を対象にした調査によると、
何らかの「推し」がいる人は51.1%、
何らかの「推し活」を行ったことがある人は37.2%となっています。


非常に規模が大きく、ブランドにとって経済的にも大きな影響を及ぼす存在ですので、彼らを増やすことがファンエンゲージメント向上施策の一つのゴールと言えます。
2.ファンエンゲージメント向上の基本戦術
ファンエンゲージメントを高めるためには、以下の基本戦術が有効です。
あくまで基本であり、ブランド個々のコンディションに応じたバリエーションが重要になります。
情報発信の頻度を高め、コンテンツの質を高める:
ファンが興味を持つコンテンツを提供することが重要です。ブログ記事、動画、インフォグラフィックなど、多様な形式で価値ある情報を発信しましょう。
一過性ではなく、継続的に情報を提供し続けられるかどうかがポイントになります。
ソーシャルメディアの活用:
Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなどのソーシャルメディアを活用して、ファンと直接コミュニケーションを取ることが効果的です。情報発信や話題化のスタート地点として非常に有用ですし、コメントやメッセージに迅速に対応することで、ファンとの距離を縮めることができます。
インタラクティブな施策・イベントの開催:
オンライン・オフラインを問わず、イベント・プロモーションを通じてファンと直接交流する機会を設けましょう。ウェビナー、ライブQ&A、ファンミーティングなどが有効です。
3. ファンエンゲージメントの測定方法と指標
ファンエンゲージメントの高低は数字で表せないところがありますが、目安となるいくつかの指標はあります。以下は代表的なエンゲージメント測定方法および指標です。
エンゲージメント率:
SNSやYouTube動画投稿に対し、どれくらいの人が反応したかを測定する指標です。エンゲージメント率の計算方法は各SNSやメディアによって異なり、例えばX(旧Twitter)の場合は、「エンゲージメント数(リポスト、返信、フォロー、いいね以外にツイートのクリックなども含む)をインプレッション数で割った値」となります。投稿がどれだけファンに響いているかを測定でき、一つの施策がどれくらいの成果を出したかを評価できます。
クリック率(CTR):
リンク付き投稿に対するクリック数を測定します。ファンがどれだけ興味を持ってリンクをクリックしたかを示します。
Google Analyticsの利用:
Webサイトのトラフィックやユーザー行動を分析するために、Google Analyticsを活用しましょう。ページ内のリンククリックまでにどのような経路をたどったか、どのページがどのくらいスクロールされたかなど、成果を上げたページや施策が確認できます。
ファンエンゲージメントの観点からは特に、ソーシャルメディアからのトラフィックを追跡することが重要です。
アンケート調査の実施:
上記のエンゲージメント率やGoogle Analyticsでの分析で測定できないファンエンゲージメント施策については、ファンに対してアンケートを実施し、直接的なフィードバックを収集することも有効です。定量的・定性的両方でファンのニーズや期待を把握できます。
アンケートを実施することで、一つの施策の成果の良しあしだけでなく、ブランド全体のコンディションも確認できます。
4.ファンエンゲージメント向上のため考慮すべきトレンド、キーワード
ファンエンゲージメントを高めるマーケティング施策を考えるとき、意識すべき概念やキーワードについてご紹介します。
・UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活性化
UGCとはユーザーが自発的に作り上げた、ブランドやキャラクターの情報を発信するコンテンツのことです。最も分かりやすいのが個人によるYouTubeでのブランド紹介動画やゲーム実況などで、第3者の立場からの情報発信となるため、企業が発信する情報とは異なり、ユーザーに説得力を持って受け入れられやすいです。
UGCは、SNSやYouTubeなど個人が情報発信する仕組みが広まった現在、ブランドにとって非常に強い影響力を持ちます。企業側としては、ファンが自ら楽しんでUGCを生み出しやすくできるような環境を整えたり、UGCを公式アカウントでシェアしたりすることで、さらにファンエンゲージメントを高めることができます。
・パーソナライゼーションの進化
パーソナライゼーションとは、顧客の属性や行動履歴などのデータをもとに、個々の顧客に合わせた情報やサービスを提供するマーケティング手法です。「One to Oneマーケティング」ともほぼ同義です。
顧客それぞれに対して商品やサービスの提案をすることで、ファンエンゲージメントは高まり、愛着とともに長期間のブランド利用につながります。AIを活用したコンテンツの最適化や自動生成は今後ますます発展していき、それに伴ってパーソナライゼーションも進化していくものと思われます。
・エシカルマーケティングの意識
エシカルマーケティングとは、単に売り上げ至上主義的ではなく、社会・環境にとって倫理的な態度・方針を執るマーケティング戦略のことです。企業の社会的責任や倫理観は、投資家からも注視されていますし、ユーザーが商品・サービスを選ぶ際の根拠においても重要になっています。
ファンエンゲージメントの観点からも重要な概念で、このようなブランディングに成功した商品・サービスはファンの信頼を得ることができます。
社会に対して透明性のあるコミュニケーションや、環境に配慮した取り組みや、社会貢献活動が重要になります。
5.ファンエンゲージメント施策の成功事例
ファンエンゲージメントの向上に成功しているマーケティング施策の例をいくつかご紹介します。
様々な手法がありますので、ぜひ参考にしてください。
カゴメ株式会社「&KAGOME」コミュニティ
カゴメ株式会社は、ファンコミュニティサイト「&KAGOME」を運営しています。
「ファンを知る」「ファンに伝える」「ファンと一緒に体験する」の3つを目的に、2015年4月に開設され、「トマコミ」や「レシピのーと」などユーザーとカゴメが共に発信するコンテンツがならび、ユーザー同士のコミュニケーションも活発に行われています。
また、全国に広がるユーザーと一緒になって新商品などを形にする共創の場としても重要な役割を果たしており、企業サウンドロゴの開発やチューブ型のトマトペースト開発などの実績があります。近年は&KAGOME上でオンライン栽培相談会やオンライン料理教室など、オンラインでファンと繋がる機会を積極的に増やしています。

ザ・コカ・コーラ・カンパニー「Share a Coke」キャンペーン

コカ・コーラのボトルにブランドロゴではなく人名がプリントされたものを販売した「Share a Coke」キャンペーンは、2010年代に実施された、大型のマーケティング施策です。2011年にオーストラリアで実施されると大きな反響を起こし、その後ヨーロッパ、アメリカ、日本で展開されました。
ユーザーは自分の名前や友人の名前が入ったボトルを探し、SNSでシェアすることでエンゲージメントを高めました。このキャンペーンは、個々のファンにパーソナライズされた体験を提供し、大きな成功を収めました。
コカ・コーラという巨大ブランドが自社ブランド名を消してユーザー体験のためのスペースに利用することで、かえってブランディング向上に貢献したこの施策は、デ・ブランディング施策(あえてブランドを消すマーケティング施策)とも呼ばれます。
ヤッホーブルーイング「よなよなエールの超宴」

クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングは、ファンイベント「よなよなエールの超宴」を定期的に開催しています。
ビールに加え、オリジナルアクティビティやフード、ステージでの音楽などを楽しむイベントで、「ビールでピースな大人の超文化祭」をコンセプトに2015年に初開催して以降、徐々に規模の拡大を続け、2018年には5,000人を集客しました。
このイベントでは、ファンがビールを楽しみながら、同社のスタッフや他のファンと交流することができます。ファンコミュニティを強化し、ブランドへの愛着を深めることができる施策です。
アニプレックス「Fate/Grand Order(FGO)」公式生放送

iOS / Android用ゲーム「Fate/Grand Order」は、定期的に公式生放送「カルデア放送局」を通じて、YouTube他配信サイトで新イベントやキャンペーン情報を発信しています。声優や開発スタッフが出演することで、ファンにとって親しみやすいコンテンツとなっています。
「Fate/Grand Order」に限らず、「モンスターストライク」、「グランブルーファンタジー」、「ウマ娘 プリティーダービー」など、多くのユーザーを抱え、ゲームコンテンツの更新頻度が高いスマートフォンアプリゲームのほとんどは、この「公式生放送」という手法を利用しています。
ヘビーユーザーの注目を集め、コミュニケーションを取り、運営方針に対する理解を得ることができるこの手法はファンエンゲージメントにおいて非常に有効で、スマートフォンアプリゲーム運営における必須手法となっています。
集英社「僕とロボ子」クラウドファンディング応援広告
宮崎周平による人気漫画『僕とロボコ』のTV アニメ化を記念した、クラウドファンディングを活用した施策です。
原作キャラクター「ロボコ」のキャラクター性を活かし、「自分自身で応援広告を出したい」とファンへ協力を呼び掛ける形でクラウドファンディングをスタート。 支援金に応じて「ロボコからのラブレター」「宮崎周平先生に会えるサイン会」「僕とロボコ生原画」などファンが喜ぶ様々なリターンを用意し、868名の支援者を集め、目標金額を達成。 TV アニメ放映期間中に、2週間の山手線車体ラッピング広告を実施しました。
この施策は、ファンが愛好するキャラクターや作品や芸能人などの「推し」を応援するための広告をファン自身が出稿する「応援広告」の一形式となります。
「応援広告」は基本的にはファンが自発的に行うものですが、昨今はこのような企業側とファンが協力した施策も生まれています。ファンを一方的に利用するような施策は反感を呼ぶため逆効果ですが、企業側がファンに対して誠意を尽くし、相応の特別な返礼をすることで、ファンエンゲージメントを高めるプロモーションとすることが可能です。

当社ジェイアール東日本企画では、応援広告の豊富な実績に基づき、このようなファンエンゲージメントを高める施策を「推し活マーケティング」と称し、支援・プロデュースしています。

上記施策のようなクラウドファンディングを利用した応援広告施策だけでなく、ファンに応援コメントを直接記入してもらえる「付箋広告」など、「推し活マーケティング」施策の資料は以下からダウンロードしていただけますので是非ご覧ください。
まとめ
ファンエンゲージメントは、ブランドとファンとの間に強い絆を築き、ブランドを長期間成長させるための重要な観点です。
・情報発信の頻度を高め、コンテンツの質を高める
・ソーシャルメディアの活用や、インタラクティブな施策・イベントを通じてファンとコミュニケーションをとる
・できるだけ個別のファン・ユーザーに対してケアをする
ファンエンゲージメントの醸成にあたってはこれらのことが基本となりますが、実際に行う施策はブランドの状況・コンディションによってそれぞれ異なります。
当社ジェイアール東日本企画にはファンエンゲージメント向上のための様々な施策実績がありますので、課題をお持ちの方はぜひ以下よりお問い合わせください。