
こんにちは。ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
広告・マーケティングに“効く”コラム、今回のテーマは「周年キャンペーン」です。
周年は、企業にとって単なる節目ではなく、成長と発展を促す重要な機会です。特に顧客向けに展開する周年キャンペーンは、既存顧客とのエンゲージメントを深めるだけでなく、新たなターゲット層へのアプローチにも最適な施策であり、確実に成功させたい取り組みの一つです。
帝国データバンクの調査(2024年12月発表)によると、戦後80周年にあたる2025年に周年を迎える企業は15万5,167社。そのうち上場企業は404社、創業100周年を迎える企業は1,685社にのぼります。
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241204-shunen2025/
このように、毎年多くの企業が周年を迎える中、ユーザーの記憶に残るキャンペーンをいかにして構築するか。10年単位で巡ってくる貴重な機会だからこそ、力が入っておられる担当者も多いと思います。
当コラムでわかること
・周年キャンペーンの定義
・周年キャンペーンの重要性
・周年キャンペーンの実行のポイント
・周年キャンペーンの参考事例
(特に「推し活」と掛け合わせた最新事例に注目!)
こんな人におススメ
・周年キャンペーンの担当者で情報取集中
・競合他社に負けない周年キャンペーンを企画したい
・周年キャンペーンの最新事例を知りたい
・周年キャンペーンの支援実績が豊富な会社を探している
■周年キャンペーンとは?
周年キャンペーンとは、企業が「創業年」や「ブランド・商品誕生年」などの節目(例:1周年、10周年、50周年、100周年など)を記念して実施する特別なプロモーション活動を指します。英語では「アニバーサリーキャンペーン(Anniversary Campaign)」とも呼ばれ、通常のマーケティング施策とは一線を画す、特別感のある取り組みとなることが特徴です。
企業はこの機会に大規模な企画を実施し、自社やブランドへの注目を集めて話題化・認知拡大を図るほか、既存顧客のロイヤリティ向上、新規顧客の獲得といった多様な目的で展開します。
本来、周年事業は
・社内(社員)向け
・ステークホルダー(取引企業、株主、地域社会などの関係各所)向け
・顧客向け
のような対象別に分類され、社史の編纂から新しいCIや PMVVの策定、関係者向けの周年パーティやイベント、顧客向けの各種プロモーションに至るまでに多岐に渡りますが、当コラムでは、顧客向けの周年キャンペーンにフォーカスして解説します。
■周年キャンペーンの重要性と効果
・メディア露出の増加による認知度向上
周年キャンペーンを実施することで、改めて注目を集め、認知の再獲得が期待できます。
周年をテーマにしたキャンペーンはメディアやSNSで話題になりやすく、新たな顧客に企業やブランドの存在を知ってもらう機会にもつながります。
・企業やブランドの世界観をより浸透させる契機になる
周年記念サイトやコンテンツを通じて、企業の歴史や価値観を顧客と共有し、信頼性やブランド理解を深めてもらうことができます。
・既存顧客のロイヤリティ強化
特別イベントへの招待や限定アイテムの提供により、顧客に感謝を伝えると同時にエンゲージメントの深化が図れます。
・新規顧客層の開拓
若者に人気のコンテンツと周年コラボを実施するなど、これまでアプローチできなかった潜在層を掘り起こすチャンスが生まれます。
・売上の増加が見込める
期間限定商品や特別コラボの販売により、購買意欲を刺激し、収益面でも好影響が期待されます。
■周年キャンペーン実施のポイント
・自社ブランドや商品の分析、現状把握
同じ周年でも10周年と50周年ではブランドの立ち位置が異なります。成長フェーズにあるのか、成熟・安定期にあるのかによって、施策の方向性が変わってきます。市場環境や競合状況、顧客のニーズなどを細かく分析し、現在のポジションを正しく認識することが不可欠です。
・目的の明確化
現状分析を受けて、周年を機に達成したい目的を明確に設定します。
目的例
・周年を機に、ブランドの認知拡大をしたい
・周年を機に、既存顧客のロイヤリティを向上させたい
・周年を機に、新規顧客を獲得したい
・周年を機に、新商品の訴求やブランドをリニューアルしたい
・周年を機に、新しい市場を開拓したい
など、周年事業を通して何を達成したいのかを明確化します。
・キャンペーンの企画・立案
周年キャンペーンには、以下のような代表的な形式があります。
・プレゼントキャンペーン
・応募(投稿)型キャンペーン
・投票型、コンテスト型キャンペーン
・イベント型キャンペーン
・異業種やIPコンテンツとのコラボ型キャンペーン
などが挙げられます。
特に近年の周年キャンペーンは、人気コンテンツや異業種とのコラボによる特別感の演出がトレンドになっています。話題性と訴求力を兼ね備えており、既存ファンを楽しませながら、同時に新規顧客層の開拓にもつながりやすいというのが大きな理由です。
また、特定のファンを抱えている知名度の高いキャラクターやアーティストと自社商品のコラボキャンペーンを導入することで、商品の認知度や魅力がアップし、購買層のさらなる開拓も見込まれます。
・参加型、体験型のキャンペーン設計
顧客が自ら参加し、体験できるキャンペーン構造にすることで、エンゲージメントが格段に高まります。参加者限定イベント、限定コンテンツ、キャンペーン専用SNS企画など、「自分ごと」として感じてもらえるような仕掛けが有効です。
■目的別の周年キャンペーン事例
1.既存顧客のエンゲージメント強化と、新規顧客への認知獲得を狙った周年キャンペーン事例
●ニベア花王
8×4(エイトフォー)発売50周年に、同50周年のハローキティとコラボキャンペーンを実施
ニベア花王株式会社の制汗デオドラントブランド「8x4」は、2024年に日本発売50周年を記念して、同じく2024年に50周年の節目を迎える株式会社サンリオのキャラクター「ハローキティ」とコラボレーションし「HELLO NEW8x4キャンペーン」を実施。
同キャンペーンでは、
・対象商品購入者に抽選で当たる50周年限定オリジナルぬいぐるみを全9種類用意
・応募者全員にプレゼンされる壁紙は、ハローキティ50周年限定のキャラクタービジュアルが描かれ
た特別仕様
・8x4パウダースプレーのハローキティデザイン缶を限定発売
など、「ハローキティ」推しのファンのコンプリート欲を刺激する内容で、既存顧客にも新規顧客にも訴求力のあるコラボレーションとなりました。

引用:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000006944.html
アニバーサリーイヤーが同じ商品が手を組んで、周年キャンペーンを実施することで、ニュースバリューの相乗効果を生み、話題を拡散させる手法の典型例といえるでしょう。
●バイオフィリア
「ハチ公生誕100周年」を記念して、フレッシュペットフード・ココグルメの広告を展開
フレッシュペットフードの「CoCoGourmet(以下:ココグルメ)」を開発・販売する株式会社バイオフィリアは、「ハチ公生誕100周年」の2023年、JR渋谷駅ハチ公口に「忠犬も待てないココグルメ」をテーマにした大型広告を掲出。企業の公式SNSでココグルメを食べる愛犬の写真を募集し、応募者の中から42頭の犬を紹介するという広告キャンペーンは、ハチ公生誕100周年の2023年11月1日(犬の日)を挟んだ一週間という節目に合わせて実施されました。厳密にはブランドの周年ではありませんが、この時と場所でしかできないモーメントを上手く活用した周年キャンペーンです。

引用:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000044537.html
同キャンペーンの広告掲出後、広告に使用されたワンちゃんの飼い主さんによるポスト「飼っている犬が駅前の広告になったと聞いて見に行ったらブレブレで笑ってしまった」のSNS投稿が、6万いいねを集め話題になりました。
「待てないほどおいしい」を表現したというこのペットフードの広告には「いい広告すぎる!」「ものすごいアイディア」など、絶賛するコメントが多数寄せられ、拡散される成果を生みました。
2.ブランドコンセプトの浸透と、新規顧客への認知獲得を狙った周年キャンペーン事例
●パルコ
「SPECIAL IN YOU.」10周年を迎えるコーポレートメッセージ広告に、VTuber「星街すいせい」を起用したキャンペーンを展開
パルコは2014年からコーポレートメッセージ「SPECIAL IN YOU.」を掲げ、若いデザイナーやクリエイターを発見・支援するインキュベーション活動を積極的に発信。10周年を迎える今回、ホロライブプロダクションに所属する「星街すいせい」を、VTuberとして初めて広告に起用しました。

引用:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001118.000030268.html
「SPECIAL IN YOU.」に込めた想い
パルコは1969年の池袋パルコ誕生以来、ファッションのみならず、音楽、アート、演劇など、様々なカルチャーを積極的に紹介し、新しい才能の発見と、自信を持って未来を切り開いていく才能のある人たちを応援してまいりました。2010年にスタートしたコーポレートメッセージ「LOVE HUMAN.」の想いを引き継ぎ、才能を発掘・応援するインキュベーション活動に、より強くフォーカスをあてるために、2014年より、新コーポレートメッセージ「SPECIAL IN YOU.」をスタートいたしました。
(引用:パルコSPECIAL IN YOUサイト)
1969年の誕生から50年以上が経過したパルコですが、常に時代の先端を切り取るメッセージを発信し続ける企業スタンスを、VTuberとのコラボに込め、若年層にアピールしています。
3.新規顧客(若年層)の認知獲得を狙った周年キャンペーン事例
●日清食品
チキンラーメン65周年を記念して、ヴィレッジヴァンガードとコラボした「裏バースデーパーティー」キャンペーンを実施

日清食品株式会社は、「チキンラーメン」の発売65周年を記念して遊べる本屋「ヴィレッジヴァンガード」とコラボした「裏バースデーパーティー」を開催。当キャンペーンは、”ひよこちゃん” がプロデュースしたオシャレでクールな限定グッズを「ヴィレッジヴァンガード」の全国65店舗で販売するというものでした。
ロングセラー商品に共通しますが、チキンラーメンも顧客の高齢化が進み、若年層への認知拡大、消費促進が課題でした。そこで今回の周年では若年層に的を絞った企画を立案。
これまでのバースデーにおける “キラキラ” “キャピキャピ” した雰囲気のお祝いにうんざりした “ひよこちゃん” が、自分好みの最高にオシャレでクールな「裏バースデーパーティー」をプロデュースします。”ひよこちゃん” をモチーフにした6種 (12品) の限定グッズを販売するほか、”ひよこちゃん” の顔をデザインした「ガーランド」や、”ひよこちゃん” の等身大パネルなどで店内をデコレーションし、「裏バースデーパーティー」を盛り上げます。
引用:日清食品ニュースリリース https://www.nissin.com/jp/company/news/11761
とのコメントにあるように、“ダークなひよこちゃん”を前面に押し出し、キャンペーンタイトルに“裏”をつけるなど、これまでとは違う刺激的な周年キャンペーンで若年層への認知拡大、消費促進を狙いました。
ティザーで画像やキャンペーン告知を投稿して、期待感を醸成。
「チキンラーメン」公式X(旧Twitter)アカウントでの告知は、480万インプレッション、5万エンゲージを獲得。各種SNSでは、「チキンラーメン×ヴィレヴァンのインパクトすご」といった反応も見られたりと、若年層への認知度向上につながった周年キャンぺーンとなりました。(引用:販促会議2024年4月号)
4.市場拡大戦略を強化するための周年キャンペーン事例
●伊藤園
「お~いお茶」35周年に、大谷翔平選手をグローバルアンバサダーに起用した世界キャンペーンを展開
伊藤園のロングセラー商品「お~いお茶」は、誕生から35周年を迎えた2024年、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手をグローバルアンバサダーに起用しました。
「世界のティーカンパニー」を目指す当社は、世界で活躍する大谷翔平選手と国内外で様々な企画を実施することで、お茶の価値を世界中で一層高めてまいります。

引用:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000111.000046014.html
同社のコメントにもあるように、大谷翔平選手の起用は、「お~いお茶」を世界ブランドとして確立させるという宣言でもあり、大きなミッションを帯びた周年キャンペーンです。
全世界の60紙に全面広告を掲載!
世界中のOOH広告を同時多発的に展開し、話題を集めました。
5.ファンとの新商品開発で、顧客エンゲージメントを強化した周年キャンペーン事例
●ケンミン食品
創業75周年を機に、ビーフンアンバサダーと共創した新商品を発売
ケンミン食品株式会社は、創業75周年を迎える2025年3月に、ビーフンファンと一緒に開発した新商品「XO醤香る牛肉と彩り野菜の焼ビーフン」を発売。このプロジェクトは、ファンコミュニティから選ばれた8人の“ビーフンアンバサダー”と同社冷凍食品開発メンバー4人が1年8か月をかけて商品のコンセプトから共創するというもので、創業以来初の試みでした。
引用:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000260.000027446.html

自分が「推す」企業の新商品開発に関われることは、ファンにとってこの上ない喜びであり、その体験により顧客エンゲージメントはさらに強まるでしょう。同時に顧客の声を大切にする企業姿勢を対外的にアピールすることにもなり、結果として新規顧客の獲得にもつながります。
6.推し活マーケティングによる新規顧客獲得を狙った周年キャンペーン事例
●青山商事
「洋服の青山」60周年企画で、『モーニング娘。’23』を『アオヤマ娘。’60』としてアンバサダーに起用したキャンペーンを実施
青山商事株式会社は60周年となる2024年に、『モーニング娘。’23』を『アオヤマ娘。’60』としてレディース商品のアンバサダーに起用。「洋服の青山 レディース部 プロモーション担当」の肩書きで、さまざまな周年キャンペーンを展開しました。

出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000115161.html
「洋服の青山」は、主に「男性向けのビジネススーツ」というブランドイメージが定着しており、レディース商品に対する認知度の低さが課題でした。そこで60周年を機に『モーニング娘。‘23』を起用し、これまでの顧客層ではない20~30代の女性ファンに向けてさまざまなキャンペーンを実施しました。
その結果、
「推しと同じ服で仕事ができるのがうれしい」など、推し活ファンによる応援購入で、『モーニング娘。‘23』が着用している商品が、施策前比30%増の売上につながった
とのこと。(販促会議2024年4月号より引用)
同社のビジネスウェアを着用してダンスパフォーマンスを披露し、着心地の良さや機能性を訴求した動画が、商品理解につながったのはもちろんですが、
一方で「推し」を通して
・知らなかった商品を認知し、自分事化される
・商品購入時の選択肢に入り、購入するきっかけになる
という「推し活マーケティング」の視点が、周年キャンペーンの成功に大きな役割を果たしたことは間違いありません。
■「推し活」を使った周年キャンペーンを、jekiがサポートします。
当コラムを執筆するジェイアール東日本企画(jeki)は、「推し活」と掛け合わせたプロモーションに数多くの実績を持ち、貴社の周年施策における新たな可能性をご提案できる広告会社です。
ファンが資金を出し合い「推し」を応援する広告「応援広告」の分野では、ECサイト「Cheering AD」https://cheering-ad.jeki.co.jp/を運営。広告の申し込みから、事務所との許諾交渉、デザイン、印刷、掲出までを一貫してサポートし、これまでに4,000件を超えるプロジェクトを支援してきました。
推し活を行うファン の心理に寄り添った豊富なノウハウを活かし、新しい形のプロモーションを、企画から実施までトータルでプロデュースいたします。
周年をもっと印象的に、もっと“推される”形で演出したい担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、上記のような”推し活を行うファン”を巻き込んだ広告手法「推し活マーケティング」について、わかりやすいガイドブックを公開中です。興味がある方は、以下からダウンロードしてご活用ください。
■まとめ
ここまで、周年キャンペーンについて具体的な事例を交えながら成功のためのポイントを解説してきました。特に重要な要素は、次の3点に集約されます。
1、客観的な市場分析、現状把握による課題抽出
2,課題に応じた周年キャンペーンの目的明確化
3,顧客参加型・体験型のキャンペーン設計
さらに、近年のマーケティングトレンドを踏まえると、
「推し活」や異業種・人気コンテンツとの「コラボ」を取り入れた企画立案
も、ぜひ積極的に検討すべき視点といえるでしょう。
そして最後にお伝えしたいポイントは、
周年キャンペーンは“ゴール”ではなく、“スタート”である
ということです。
周年を単年のプロモーションで終わらせず、そこで掲げた目標に向けて、翌年以降も継続的な施策を重ねていくことこそが、本質的な成功につながります。
広告・マーケティング担当の方は当コラムでご紹介した視点を活かして、ぜひ自社の周年を新たなビジネスチャンスに結びつけていただければ幸いです。