はじめに
こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回は「エリア広告」について解説します。
・エリア広告はどのような効果があるのか
・エリア広告を始めるために準備すべきことは何か
・エリア広告の媒体、手法
・エリア広告の事例
・効果測定の方法と資料
これらについて詳しく解説します。エリア広告の実施を検討している企業のマーケティング担当者の皆様に向けたガイドとなりますので、効果的な広告戦略を立てるためのヒントにしてください。
特定の手法についてさらに詳しい情報が知りたい方に向けた記事や資料も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
エリア広告とは?
エリア広告とは、特定の地域やエリアに焦点を当てた地域密着型のマーケティング戦略および手法のことです。
特定のエリアに強みを持つビジネスが、地元のユーザーに商品・サービスを利用してもらうため、認知・理解を得る目的で実施します。テレビCMや新聞全国紙などを使って日本全国に広く告知する「マスメディア広告」と対になる広告戦略と言えます。
限定的なエリアに対して広告を実施する手段は様々あり、地域の特性やニーズに合わせた効果的な媒体・手法を検討して選定します。
エリア広告のメリット
エリア広告の強みは、地域に密着したマーケティングが可能である点にあります。主に以下のようなメリットがあります。
ターゲットの明確化:
特定の地域に住むユーザーに絞って広告を露出・配信するため、無駄な広告費を削減できます。
当地におけるブランドの強化:
特定の地域に絞って広告を展開できるため、地域住民に対して強い訴求力を持ちます。地元のイベントやキャンペーンと連動させれば、さらに当地におけるブランドの認知度を高めることができます。
ユーザーとの信頼関係構築:
地域に根ざした広告は、ユーザーとの信頼関係を築きやすく、リピーターの獲得にもつながります。地域住民に信頼され、親しまれている媒体に広告を掲載することで、広告の信頼性は向上します。
エリア広告を活用するための準備
エリア広告を有効に活用するためには、実施前にいくつかのポイントを抑える必要があります。特に重要なものについて説明します。
◆ターゲット設定
エリア広告を効果的に活用するためには、まずターゲット設定が重要です。以下のポイントを押さえてターゲットを設定しましょう。
・地域の特性を理解する:
ターゲットとする地域の人口構成や経済状況、文化的背景などの情報を把握することが重要です。若い人が多いエリアなのか、ファミリーが多いエリアなのか、勤め人が多いエリアなのか、学生が多いエリアなのか、などを、自社ビジネスの内容と照らし合わせて確認しましょう。これにより、地域に適した広告内容の作成や効果的な媒体の選定ができます。
・データの活用:
地域のユーザーデータ・情報・資料を活用し、ターゲットの行動パターンや購買傾向を分析します。これにより、広告の配信タイミングや内容を最適化できます。
たとえば当社ジェイアール東日本企画では、交通系ICカードSuicaの統計データを活用した人流情報分析のレポート「駅カルテ」を販売しております。駅でSuicaを利用する人の属性や、駅の通勤・通学圏や商圏などの情報が分かる資料で、駅起点のビジネスを行う場合は大いにヒントになりますので是非マーケティング戦略の参考にしてください。
↓駅カルテの詳細はこちら↓
https://www.jreast.co.jp/suica/corporate/suicadata/eki-karte.html
・ペルソナの設定:
ターゲットとなるユーザーの具体的な人物像(ペルソナ)を設定します。年齢、性別、職業、趣味などを詳細に描くことで、より効果的なマーケティング戦略を立てることができます。
ペルソナを設定するマーケティング上のメリットや設定方法など詳細は、以下のコラムを参考にしてください。
◆効果的な広告デザイン
エリア広告に限らず、広告のデザインは、視覚的に訴求力があり、ターゲットに響くものである必要があります。以下のポイントを考慮してデザインを作成しましょう。
・シンプルでわかりやすい:
広告のメッセージは、あれもこれも伝えようとせず、訴求ポイントを絞り込み、シンプルでわかりやすくすることが重要です。つい、いろいろ書きたくなりますが、訴求ポイントを絞り込みましょう。
視認性を高めるために、文字数を抑え、重要な情報を強調します。
・地域性を反映する:
広告は、「それが自分に関係している」と思われるほど、見る人の印象に残ります。広告デザインに地域の特色を取り入れることで、親近感を持たせることができます。地元ならではの情報や風景や文化を取り入れると効果的です。
ただし対象や表現によっては、著作権や肖像権に問題がないか考慮すべき場合がありますので注意しましょう。
・行動を促す要素:
ビジネスの認知向上だけではなく、来店・購買のために広告を実施する場合、広告には、ユーザーに具体的な行動を促す情報(CTA:Call to Action)を含めましょう。例えば、「この広告を見た方限定!」「今だけ○○%オフ!」などのメッセージを加えると良いでしょう。
◆広告実施タイミングの最適化
エリア広告は、広告を展開する地域を絞ることで広告費の無駄を省くことができるマーケティング手法です。であれば、さらに効率を高めるべく、広告を展開する「タイミング」にも気を配りましょう。特にオンライン広告の場合は細かい時間指定が可能ですので、効果的なタイミングで広告配信しましょう。
・季節や気候を考慮する:
季節や気候に応じて広告内容や配信タイミングを調整します。例えば、飲食ビジネスであれば、夏には冷たい飲み物や食べ物の広告が効果的でしょうし、ジムや英会話などのスクール事業であれば、春の新生活開始時期に新規会員向けのお得なキャンペーン告知などが有効でしょう。
・ユーザーの行動パターンを分析する:
ターゲットとなるユーザーの行動パターンを分析し、最も効果的なタイミングで広告を配信します。例えば会社員をターゲットにする場合、通勤時間やランチタイムなど、ユーザーが広告を目にしやすい時間帯を狙います。
獲得効率の良くない時間帯や曜日は入札を弱めて予算を温存し、効率が良い時間は入札を強めて獲得を狙いましょう。
エリア広告の手法
代表的なエリア広告の媒体・手法を紹介し、それぞれのメリットを説明します。
大きく、インターネットを介さない「オフライン広告」と、インターネットを利用する「オンライン広告」に分けて、説明します。
◆オフライン広告
・新聞折込チラシ
各家庭に配達される新聞の朝刊・夕刊に折り込まれるチラシです。エリアを細かく指定して実施できるので、限定的な地域が商圏となる商材の広告に向いています。新聞は日々配達されるため、速報性がある情報が好まれる傾向です。
ただし昨今、新聞の購読者層は高齢化が進んでいますので、若い世代に向けたビジネスの場合は、別の手法を選んだ方が効率が良いでしょう。
・ポスティングチラシ
各家庭のポストに投函されるチラシです。投函するエリアを指定して実施します。
新聞折込チラシと似た性質の媒体ですが、新聞を定期購読していない家庭にもリーチ可能です。
・新聞広告
新聞の紙面に掲載される広告です。
全国紙の場合は大まかにしかエリアを指定できないため、エリア広告にあまり向いていませんが、地方新聞は地域を絞って販売されているため、掲載することで特定地域の人々に一気にリーチできます。新聞折込チラシと同様、高齢者層にリーチしやすいです。
・フリーペーパー
広告収入をもとに運営発行されることで、読者に無料で配布される紙媒体です。
駅のラックなどに設置されていたり、各家庭のポストに投函されたり、会社オフィスに配られたりするなど、多様な配布形態があります。エリア広告には、配布エリアが決まっている(もしくは指定できる)フリーペーパーを使用します。
・駅広告
駅に掲出されるポスターや看板、デジタルサイネージなどを使った広告です。
看板やポスターでは静止画の広告となりますが、デジタルサイネージでは動画を用いた広告表現も可能です。
駅を通勤・通学に利用する人の場合、行き帰りで、1日に最低2回広告に接触するため、接触頻度(フリークエンシー)は非常に高いです。反復訴求効果が高く、接触する移動者に対して情報・メッセージを刷り込むことができる広告媒体です。
・大型屋外看板、ビジョン
主要な交差点や高速道路沿いに設置される広告で、大型のものはビルボード広告とも呼ばれます。
広告効果を高めるためには、人通りが多く、かつ目立つ位置にあるものを選ぶのが重要です。大きなサイズで視認性が高い広告は、インパクトもあり注目されやすいので、多くの人々にリーチできます。
・電車広告
電車のトレインチャンネル(動画ビジョン広告)、中吊り広告、ドア横広告など、車両内に掲出される広告です。
特定路線に限っての掲出が可能なので、商圏となる沿線でビジネスを展開している場合に有効です。通勤・通学者に対して繰り返しリーチできる点は、駅広告と同様です。
・バス広告、バス停広告
公共交通機関である路線バスの車体や車内に掲示される広告が「バス広告」、路線バスの停留所スペースに掲出される広告が「バス停広告」です。
地域内の移動者にリーチでき、特に通勤・通学で路線バスを利用する人に効果的です。
◆オンライン広告
ここでは特に、オンライン広告における「エリアを指定した広告配信方法」について説明します。
・地域ターゲティング広告
ユーザーの位置情報を基に特定の地域に限定して広告を配信する、Webターゲティング広告の手法の一つです。
代表的な Web 広告である Google 広告やYahoo!広告、LINE・Facebook などの SNS 広告では、配信地域を「地域名」や「北海道、東北、関東などの9地方」で指定することができます。その他、媒体によって、「市区郡単位」での指定や、「選択した地域からの半径」を指定することが可能です。
地域ターゲティング広告について詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
・ジオターゲティング広告
ジオターゲティング広告とは、ユーザーのスマートフォンやパソコンから得られる位置情報(IPアドレス、GPS情報、通信基地局、Wi-Fi、Bluetoothの接続情報など)のデータを収集し、任意のエリアにターゲティングして広告配信するオンライン広告手法です。ジオターゲティング広告以外にも、位置情報広告、エリアターゲティング広告などとも呼ばれます。
例えば、「最近1年間に、北海道に2回以上行った人」、「最近半年間に、球場で3回以上野球観戦をした人」など、特定の日時と場所と位置情報を照らし合わせることによって、ユーザーの外出行動履歴を読み解き、それに応じた広告を投下することが可能です。
前述した「地域ターゲティング広告」は、半径 1km~地域をターゲティングできますが、ジオターゲティング広告では、数メートルからのより細かく切り分けたエリアをターゲティングできるソリューションもあります。
居住圏内の新店舗・サービスの認知向上施策や、まさに今イベント会場にいる顕在層へのアプローチなど、状況やニーズによってさまざまな活用ができる広告手法です。
・JRE Ads
位置情報を利用したマーケティング手法の最新バリエーションとして、当社ジェイアール東日本企画にて提供しているWeb広告サービス「JRE Ads」があります。
JR 東日本グループが保有する顧客データを活用したターゲティング広告で、JR 東日本の首都圏+東北エリアの約 600 駅の乗降、JRE POINT(JR 東日本グループのポイントサービス)や JRE MALL(JR 東日本グループの EC サイト)の利用履歴など、JR 東日本グループが保有する膨大な顧客データを、エリア・性別・年齢などさまざまなセグメントで掛け合わせターゲティングできる、運用型 Web 広告です。
一般的なジオターゲティング広告は、端末や提携アプリのGPS情報を基にした「推定データ」でターゲティングを行いますが、JRE Adsでは、交通系 IC(Suica)の乗降履歴、つまり「確定データ」を基に配信を行うため、駅利用者へのWeb広告としては非常に精度が高い施策となります。
JRE Adsについて詳しく知りたい方は以下のサイトまたは資料をご覧ください。
エリア広告の実施事例
交通広告を中心とした、エリア広告の実施事例を紹介します。
・アース製薬 JR神田駅ジャック広告
JR神田駅のホーム駅名標や、駅舎駅名標などが、「JR神田駅(アース製薬本社前)」という名称になりました。
加えて、山手線(内回り・外回り)ホームの発射メロディが、「モンダミン」のCMソングメロディになり、各出口にある改札口入り口標などにはアース製薬の商品名が追加されました。また、広告開始から一週間は、駅構内にメッセージ広告も掲出しました。
JR神田駅を利用する一般の方々に向けて、アース製薬の神田エリアへの愛着をアピールするとともに、アース製薬社員のインナーモチベーションをアップさせた施策です。
・新江ノ島水族館 小田急町田駅「くらげ」ジャック
https://universal-ooh.jeki.co.jp/case_study/0095/
2024年9月9日(月)から9月15日(日)までの7日間、新江ノ島水族館の人気のクラゲたちが小田急線町田駅コンコースを広告ジャックし、期間限定で「くらげ駅」仕様となった例です。
駅名標を模したポスターや、これまで新江ノ島水族館で展示してきたクラゲたちが駅名となった架空の「くらげ電鉄」路線図が登場。
さらにカフェ「FORESTY COFFEE」のガラス壁面にもクラゲの装飾が施され、期間中カフェ利用者には、各日先着でクラゲステッカーのプレゼントも行いました。
同年7月には小田急線2編成の車両内をジャックした「くらげとれいん」施策も行っており、小田急線ユーザーに新江ノ島水族館をアピールしました。
・横浜Fマリノス 東急線・みなとみらい線横浜駅 順位表広告
https://universal-ooh.jeki.co.jp/case_study/0051/
2023年の明治安田生命J1リーグの終盤、同リーグの首位を争っていた横浜F・マリノスが仕掛けた交通広告です。
「順位表広告」をクラブのホームタウンである東急線・みなとみらい線横浜駅に掲出しました。スポーツニュースをタイムリーに伝える象徴である新聞をモチーフとして、最終盤の試合結果とともに横浜F・マリノスの最新の順位を伝えています。
広告の更新方法は、写実画家に新聞紙面デザインの写真部分を試合後にライブペインティングで描いてもらうというユニークなもの。
横浜の街から優勝に向けて終盤戦に挑む横浜F・マリノスの機運を盛り上げる後押しとなりました。
エリア広告の効果測定について: オフライン広告の効果測定は難しい?
マーケティング予算の最適化のため、広告を実施したら、その効果を確認し、引き続き広告を実施するべきか、あるいは別の戦術をとるのか判断する必要があります。そのために必要なのが広告の効果測定です。
オンライン広告では、広告のインプレッション数やクリック率など様々なログデータから、どの施策にどのような効果があったのかを測定できますので、そこから反省・改善が可能です。
しかし、オフライン広告ではそのような効果測定が難しい媒体が多く、どのような成果を出したかを検証するには工夫が必要です。
【オフライン広告の効果測定の例】
・クーポンコードの利用:
各広告それぞれに専用のクーポンコードを掲載することで、どの広告が効果的だったかを測定します。クーポンの利用状況を追跡することで、広告の効果を具体的に把握できます。
・アンケート調査:
特定エリアの一定数の人々に対し、広告を見たかどうか調査をします。あるいは、広告を見たユーザーに限ってアンケートを実施し、広告の認知度や印象を調査します。これにより、広告の改善点を見つけることができます。
・来店計測:
特定の広告を見たユーザーが実際に来店したかどうかを計測する方法。例えば、店舗でのアンケートや、上記のクーポンコードを利用したかどうかを確認します。
(オンラインを含む来店計測の詳細については以下のコラムを参照してください)
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ただし、上記の例におけるオフラインでの効果測定手法には課題があります。
まず「クーポンコード」の例では、成果はCV(コンバージョン。成約・獲得・購買などの最終成果)の計測に限るものになるため、「どれくらいの人が見ることが可能だったか=インプレッション」などは分からないということ。
また「アンケート調査」は、その信憑性を高めるためには、「広告を見た」というアンケート回答者がある一定量出現する程度には広告を投下する必要があります。更に調査費用も大きくかかるうえに、調査の性質上どうしても「推計」になります。
このようなマーケティング上の問題解消のため、当社ジェイアール東日本企画の「効果が見えるOOH」では、交通広告の効果計測ソリューションを提供しています。
交通広告、OOHでは他のオフライン広告と同様に、効果測定が課題になっていましたが、このサービスは、交通広告の延べ広告接触者数をViewableベースのインプレッションでリアルタイムに算出し、測定します。
これまでOOHの効果は駅の利用者数などから接触人数を推定するしかありませんでしたが、Web広告のimp数と同様の基準で測定でき、媒体を横断して効果を測定することができるようになりました。
OOH広告の効果測定にお悩みの方はぜひ資料をご覧いただき、お問い合わせください。資料では効果測定の事例も紹介しています。
まとめ
エリア広告の手法や効果測定や関係資料について説明・紹介しました。
エリア広告は、地域に密着したビジネスのマーケティング戦略において強力なツールとなります。
ターゲット設定や広告デザイン、配信タイミングと情報の最適化など、効果的な活用方法を理解し、実践することで、地域のユーザーとの信頼関係を築き、ビジネスの成長を促進するマーケティング戦略となります。
また、成功事例を参考にしたり、効果測定を行って常に広告戦略を見直し、改善を続けることが重要です。
当社ジェイアール東日本企画ではエリア広告の提案・実施・効果測定についてワンストップでプロデュースが可能です。エリア広告の実施を検討されている方はぜひ当社にお問い合わせください。ご紹介した各種資料についてのご質問もお気軽にお寄せください。
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