こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
広告・マーケティングに“効く”コラム、今回は「推し活ビジネス」を取り上げます。
「推し活」という言葉が一般的になり、「推し」の対象もアイドルやキャラクターだけでなく、モノや場所などさまざまなジャンルに広がり、今や幅広い年代の人たちが「推し活」を楽しむ時代です。
当社ジェイアール東日本企画の調査によると、15~69歳男女の約4割が「推し活」経験があると回答。多くの人が「推し」を応援する気持ちを、さまざまな(消費)行動で示すようになった結果、「推し活」そのものがビジネスとして大きな市場を生み、企業のマーケティング施策でも重要なトレンドになっています。
当コラムは、「推し活」をビジネスやマーケティングに取り入れる際のポイントについて、広告代理店の視点で解説する内容です。
このような方におススメ
・自社商品の広告キャンペーンに、「推し活」を取り入れたい
・「推し活」をする若者世代に向けた広告・プロモーションを企画したい
・自社商品を「推し」てくれるファンと一緒に、マーケティング施策を考えたい
推し活マーケティングの教科書
以下からダウンロードできます
推し活ビジネスとは?
推し活ビジネスとは、ファンが自分の好きなアイドル、キャラクター、アーティスト、スポーツチーム、ブランドなどを「推す(応援する)活動」を通じて発生するビジネス領域全般を指します。
ファンはグッズの購入、イベント参加(遠征)、SNSでの拡散、近年ではファン同士が資金を出し合い広告を掲出する「応援広告」など、様々な形で「推し」をサポートします。この文化が浸透し、個人の消費活動だけでなく、ビジネスとして拡大しているのが「推し活ビジネス」です。
企業の広告・マーケティング施策においても、この「推し活」は重要なビジネスチャンスとなっています。
推し活ビジネスの市場規模は?
冒頭でも触れましたが、推し活経験者は15~69歳の約4割を占めることから(当社ジェイアール東日本企画の「推し活」に関する調査)、その参加総数は千万人単位と推測されます。
15~29歳の女性が最も「推し活」実施率が高い(約60%)のは予想通りとしても、50代以上の男女約30%が「推し活」経験ありと回答しており、市場の裾野が広がっていることがわかります。
この流れは2010年頃から始まったとされ、それまで特定の層だった「オタク」「萌え」文化から誰もが参加できる「推し」文化へと広がっていく過程で、
・SNS普及による、ファンのコミュニティ化
・モノ消費からコト消費への消費トレンドの変化
・コロナ禍の在宅コンテンツ視聴の増加
・コロナ明け後、その反動としてリアルイベントの活発化
などのさまざまな要因が作用し、結果として「推し活」市場が拡大しました。
参考データ
●ぴあ総研によれば、
2023年のライブ・エンタテインメント市場規模は6,857億円となり、 2020年から続いていた新型コロナウイルス感染症の影響による市場の低迷を乗り越え、コロナ禍前の2019年の水準を上回り(対2019年増減率では8.9%増)、過去最高を更新しました。
背景には、推しを直接応援できる場を求めるファンのニーズも含まれていると推察されます。
https://corporate.pia.jp/news/detail_live_enta_market_20240618.html
●矢野経済研究所の調査では、2023年の「オタ活」市場は約8.000億円と予想されています。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3383
●「Pontaリサーチ」の調査によると、推し活に使う平均月額は、「1,000円~5,000円未満」が全体の32.7%で最も多い。年代別で見ると、20代~40代では支出額が上がり、約4割が月額5,000円以上使うことが確認されています。https://biz.loyalty.co.jp/report/102/
●消費者庁「令和4年版消費者白書」では、若者の消費行動に関する調査の一環として、「ライブ配信サービス(投げ銭)」や「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」人々についても調査を実施。
調査結果を受けて,
若者に特徴的な消費として、「トキ消費」に関連付けられる「今しかできない参加型の体験やコンテンツ」や「推し活」に関連付けられる「有名人やキャラクター等を応援する活動」にお金をかけていることが分かりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において、オンラインでのライブ配信や仮想空間でのフェス等、新しい生活様式にも対応する新たな「トキ消費」や「推し活」の機会が数多く試みられており、若者の新たな消費行動への参加機会は、今後も多様化していくものと考えられます。
と分析しています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2022/white_paper_132.html
推し活関連の経済効果を正確に算出することは難しいですが、各データが示す通り、「推し活」はさまざまなジャンルの市場を支える大きなエネルギーとなっています。
推し活ビジネスの主な形態
下のグラフは当社が実施した「推し活に関する調査結果」ですが、図に示されている通り、ファンは多岐にわたる「推し活」や「推し消費」を行っており、それに付随したビジネスが数多く生まれています。
●グッズ販売
ファンは推しの関連グッズ(アクリルスタンド、キーホルダー、フィギュア、公式コラボ商品など)を購入します。限定品やコラボアイテムは、特にファンの購買意欲を高めます。
●イベントやライブ
オフラインとオンラインのイベント、ライブ配信やファンミーティングは、ファンが直接「推し」と交流する機会を提供し、経済効果をもたらします。長距離を移動して地方のライブに「遠征」したり、コンテンツにゆかりのある地域への「聖地巡礼」をしたり、またファン同士で集まったり、期間限定のコラボカフェに行ったりと、多彩な推し活による消費行動(移動・宿泊・観光・飲食)が経済を回しています。
●応援広告
「推し」の誕生日や記念日を祝う目的で、ファン同士がお金を出し合って駅や街中に大型の広告を掲出する「応援広告」がトレンドになっています(もともとは韓国で始まった推し活スタイル)。クラウドファンディングを通じて数百万円を集め、大規模な広告を出すケースも見受けられます。
当社ジェイアール東日本企画は、応援広告専門のECサイト「Cheering AD(チアリング・アド)」https://cheering-ad.jeki.co.jp/を2023年に開設。アイドルやアニメなどの権利元との交渉や広告制作・掲出を支援し、これまでに数百件の「応援広告」を実現してきました。
●サブスクリプションやデジタルコンテンツ
有料ファンクラブやデジタル限定コンテンツ(動画、写真、ブログ記事、ライブ配信など)の提供も、持続的な収入源として拡大しています。
●SNSとエンゲージメント
SNSはファンが推しの情報をシェアし、リアルタイムで応援する重要な場です。ファン同士のコミュニティが形成され、推し活の熱量が拡大するという点では、「推し活ビジネス」に不可欠な要素と言えます。
広告・プロモーションにおける「推し活ビジネス」視点
このアプローチは、“ファンが「推し」に対して持つ熱意を、自社ブランドや商品に向けさせることで、エンゲージメントを高め、売上やロイヤリティの向上に寄与できる”という仮説に基づいています。主な根拠は以下の通りです。
●ファンの高いエンゲージメントが期待できる
代表的なプロモーション施策として、アイドルやキャラクターと商品・ブランドとのコラボキャンペーンがあります。推し活をしているファンは、ブランドや商品の広告に対して非常に感情的なつながりを持ちやすく、自分の「推し」が登場する広告やコラボキャンペーンは、ファンにとって「自分事」として感じられるため、一般的な広告に比べて効果が高い傾向にあります。
●インフルエンサー・マーケティングとの親和性が高い
推し活の対象は、アイドルやインフルエンサー・ライバーなど、ファン基盤が強固であることが多く、彼らを広告キャンペーンに起用することで、ファンの購買意欲を喚起でき、販促効果を得やすいという特徴があります。
●コラボ商品の限定感が、ファンの購買意欲を刺激する
推し活に関連するコラボ商品や体験キャンペーンは、限定性や希少価値を生み、ファンにとって強い購買動機となります。アイドルやキャラクターと企業ブランドのコラボレーション商品は、消費者に独自性をアピールする絶好の機会です。
「推し活」を広告・プロモーションに取り入れる成功ポイント
広告やプロモーションに推し活を取り入れる際、以下の点が重要です。ファンの動向やニーズを理解し、共感を呼ぶマーケティング施策を打ち出すことが成功のポイントとなります。
●ターゲット層の深い理解
推し活に参加しているファン層は、それぞれ異なるニーズや興味を持っています。彼らの価値観を深く理解し、共感できるメッセージやビジュアルを広告に反映させることが重要です。企業のブランドや商品がなぜ自分の「推し」とコラボするのか、ファンが納得できるストーリーやコンセプトの共通点を見出す ことが、コラボ企画の出発点となります。
●ファンコミュニティとの対話重視
推し活はSNSでの活動と非常に強く結びついています。ファンが自分の「推し」を宣伝したり、他のファンとコミュニケーションを取るためにSNSを活用することが一般的です。企業はその特性を理解して、ハッシュタグキャンペーンやSNS投稿を促すなど、ファン主導の参加型キャンペーンを重視する必要があります。
●限定商品や特典の提供
限定商品や特典など、消費者(ファン)の「推し」を応援する熱意を刺激する施策が有効です。特に限定版のコラボ商品やコレクション性の高いグッズは、ファンが熱心に購入したくなる要素を持っており、売上を大幅に増加させる可能性があります。
●オフラインイベントの開催(リアル接点の創出)
推し活には、実際に現場に足を運び「推し」に対して直接応援を表現するという行動が含まれます。企業はこれを取り入れて、ファンが「推し」に対する愛情を表現できるようなイベントや特典会、展示会を開催することが効果的です。
●推しの起用タイミング
推しの誕生日や記念日、新曲のリリース時など、モーメントを捉えた広告展開やキャンペーンは、ファンの熱量が高いタイミングに訴求できるため、より効果的です。
参考事例:CLINIQUE×KEITO TSUNA 綱啓永
CLINIQUEは、ファンの熱量が高い 2023年のネクストブレイク俳優 綱啓永さんを起用したコラボキャンペーンを実施。このコラボは、両者がめざす「明るくポジティブなイメージ」が合致することで実現しました。
・綱さんの誕生日に合わせて、キャンペーン期間を設定
・期間中対象商品購入で、限定グッズプレゼント
・キャンペーン期間中、誕生日をファンと祝う企画を実施
・人数限定のオフラインイベントに、抽選で招待
・サイン入りチェキプレゼント
・限定動画配信
など、ファン心理をとらえたコラボ企画の数々で大きな注目を集めました。
企業のブランド・商品自体も、「推し」の対象になる
消費者(ファン)が自分の「推し」に対して抱く強い支持や愛情は、アイドルやアニメキャラクターだけでなく、企業が提供する商品やサービスにも応用できます。企業はこの感情を育むことで、消費者のブランドに対するロイヤリティを高め、長期的なリピーターを確保することができます。
参考事例:無印良品「IDEA PARK」
無印良品のファンコミュニティサイト「IDEA PARK」https://lab.muji.com/jp/ideapark/では、常に顧客(=ファン)の声を集め、新商品開発などに活かしています。サイトに寄せられた数多くの「リクエスト」に対して、「できました」「再販します」の形で、顧客の声を形にするなど、「ファンと一緒に作る無印良品」を実践しています。 「IDEA PARK」のサイトTOPには、以下のような文章が掲載されています。
これからの時代に向けて、みなさんの声をモノづくりにつなげる仕組みをより強化していくため、くらしの良品研究所に「IDEA PARK」を設置しました。みなさんとの対話を通してモノづくりを進め、同時に無印良品の考え方をお伝えしていきます。
無印良品ブランドを愛する(推す)ファンは、コミュニティサイトで自由に意見を投稿し、企業側はファンの声に新商品開発という形で答える。このような好循環が生まれると、ブランドは自分事となり、ロイヤリティはさらに向上するでしょう。この一連の考え方を、ファンマーケティングと呼びます。
広告キャンペーンにおける「推し活」導入事例
事例1:スシロー×おぱんちゅうさぎ
回転寿司のスシローが、「不憫かわいい」姿がZ世代を中心に人気となっている「おぱんちゅうさぎ」とコラボ企画を実施。
「おぱんちゅうさぎ」は、イラストレーター・アニメーターの「可哀想に!」さんが描くオリジナルキャラクター。2022年1月、Twitter(現X)とInstagramに公式アカウントを開設し、2コマ漫画を中心に新作のコンテンツを配信すると、Z世代を中心にファンが急増。2024年12月現在で、Xのフォロワー数は87万人を超えています。同時にキャラクターグッズの販売や個展なども、記録的な「推し消費」を生んでいます。https://x.com/opanchu_usagi_?lang=ja
スシローは、この「おぱんちゅうさぎ」のファンを対象に、さまざまなコラボ企画を実施。
・コラボメニュー
・限定コラボグッズプレゼントキャンペーン
・店内装飾、フォトパネル
・SNSキャンペーン
などにより、多くの「おぱんちゅうさぎ」ファンが来店。これまでの顧客とは異なる、新しい層(若者)を取り込むことに成功しました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000461.000049164.html
●事例2:浅田飴×千葉ジェッツ
浅田飴は下記の趣旨にあるように、落語家や歌手・声優・スポーツチームなど「声を出す」人の活動を応援する、ユニークな「推し活」を実践している企業です。
135年以上に渡り、日本の「せき・こえ・のど」を守り続けてきた株式会社浅田飴は、のどもご縁も大切に、「声」に関わる芸能やスポーツ、文化を通じて、みなさまの楽しい「声」を応援します。
浅田飴ホームページより
https://www.asadaame.co.jp/
同社は、Bリーグ千葉ジェッツのオフィシャルパートナーとして、数々のコラボキャンペーンを実施。過去にはコラボ商品の開発やプレゼントキャンペーンを通して、コラボ商品「#声炎に浅田飴」の売上の一部を、クラブ強化費として寄付するなど、見事な「推し活」ぶりを披露しています。
企業がファンと同じ目線(熱量)で「推し活」に参加する(一緒に戦う)ことで、チームのファンからも愛される企業になるという好事例です。https://www.asadaame.co.jp/news/2024-04-11.html
●事例3:LINE Xenesis株式会社×ATEEZ(エイティーズ)
付箋広告で、ファン参加による接点創出型キャンペーンを展開
LINEの暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLINE Xenesis株式会社は、「DOSI」のエンターテイメントNFTプラットフォーム「AVA(エイバ)」の広告を新宿駅および池袋駅の2箇所に掲出。広告に起用した韓国の8人組ボーイズグループATEEZ(エイティーズ)の“応援広告”という形式で実施しました。広告が掲出された駅では、ファンが付箋にそれぞれの思いを書いて貼るイベントも同時に開催。7日間で約1,200人のファンが訪れ、延べ2,000枚の付箋が集まるなど大盛況で終了しました。この様子をファンがSNSで発信し、大きな話題となりました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004466.000001594.html
【期待できる効果】
・参加型広告によるエンゲージメントの強化
・UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用による口コミ効果
・視覚的なインパクトによるSNSバイラル効果
・手書きによる感情的なつながりの強化
ファンが付箋にメッセージを書いて大型ポスターなどにたくさん貼り付ける応援広告は、・「リアルな接点創出」と「SNSの拡散」が融合した非常にユニークなマーケティング手法です。また企業のブランドや商品自体にファンがいる場合、広告プロモーションに付箋メッセージスタイルを取り入れることも十分可能です。
商品やブランドに対する顧客(ファン)の関与を深め、感情的なつながりを強化することができる「付箋広告」の実施詳細資料、以下からダウンロードしていただけます。⇩⇩⇩⇩⇩
「推し活」を取り入れた広告キャンペーンの立案は、jekiへ
既述の通り、当コラムを執筆するジェイアール東日本企画(jeki)は、応援広告の支援事業を展開しており、「推し活」ビジネスに大きな強みを持っています。推し活を取り入れた広告キャンペーンも多くの実績がありますので、興味がある方は以下から詳細資料をダウンロードしてください。また、具体的な実施をご希望の方はメールでお問い合わせください。
jeki推し活プロモーション詳細資料 推し活プロモーションの実施やご質問