こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
今回のテーマは「Cookieレスの広告・マーケティングへの影響と対策」です。
Cookieレス(クッキーレス)とは、Cookieによる情報取得を規制する動きのことで、企業のマーケティング活動に大きな影響を及ぼすものです。本コラムではCookie規制の状況から、規制による具体的な広告への影響と対策について詳しく解説します。
本コラムでわかること
✓ Cookie規制の現状
✓ Cookieレスが広告活動に与える影響
✓ Cookieレス時代における広告対策
✓ おすすめの広告手法
Cookieレスに備えて情報収集しているマーケティング担当者の方に役立つコラムです。
Cookieとは
そもそも「Cookieとは何か」から解説していきます。
Cookieの概要や種類についてご存じの方はこの章は読み飛ばしていただいて、次の章からご覧ください。
Cookie(クッキー)とは、Webサイトからユーザーのブラウザに送信されるテキスト情報で、ユーザーのサイト閲覧履歴や設定情報などを保存するために使用されます。Webサイトを閲覧したり、情報を入力したりするとCookieにそれらの情報が蓄積されていきます。対象となる行動は、ページの閲覧、広告のクリック、検索のキーワード、文字の入力など、さまざまです。
例えば…
・一度使用したことのあるSNSを再度開いたときに、IDやパスワードを再入力せずにログインできた
・ECサイトから買い物途中に離れてしまったが、再訪問した際に買い物カゴに商品が残っていた
・フォーム入力の際に過去に入力した住所情報などの入力が省略できた
などはすべてこのCookieによるものです。
このようにCookieはもともとユーザーの利便性向上のために作られた仕組みです。
Cookieの種類
Cookieデータには、「ファーストパーティCookie」と「サードパーティCookie」と呼ばれる2種類があります。
◆ファーストパーティCookie(1st Party Cookie)
ファーストパーティCookieとは、「ユーザーが訪問したWebサイトのドメインから直接発行されるCookie」のことです。Webサイトの運営者が自身のサイト内で利用するために発行するもので、他のサイトを横断してトラッキング(追跡)することはできません。
前述の通り、主にユーザーが快適にサイトを閲覧できるように活用されています。
Webサイト運営側にとっても、ユーザーが1度目の訪問時には商品購入に至らなかったが次回訪問時にスムーズに購入につなげられるなどのメリットがあります。
◆サードパーティCookie(3rd Party Cookie)
一方サードパーティCookieは、「ユーザーが訪問したWebサイト以外のドメイン(第三者)から発行されるCookie」です。
複数のドメインを横断したトラッキングが可能で、ユーザーのWebサイト上の行動が計測できるのが特徴です。サードパーティCookieは、この特徴を活かしてWeb広告のターゲティングに利用されています。
例えば、ECサイトを閲覧した後に別のサイトを見ていたら、さっきECサイトで見ていた商品の広告が表示されたといった経験はありませんか?これはサードパーティCookieを活用した広告配信によるものです(ちなみにこのように表示される広告を「リターゲティング広告」と呼びます)。
Cookieレスとは
Cookieレスとは、「サードパーティCookieの取得を規制する動き」のことです。すべてのCookieに制限がかかるわけではなく、サードパーティCookieのみが対象です。
ではなぜサードパーティCookieの取得が規制されるのでしょうか。
サードパーティCookie規制の背景
一番の理由は、プライバシー保護意識が高まったことです。
Cookieにはユーザーの個人情報や趣味・嗜好、サイト上の行動履歴などが保管されています。
サードパーティCookieは、ユーザーの意思にかかわらずに行動をトラッキングすることが可能なため、同意がないまま第三者に情報が蓄積されていましたが、そのことを多くのユーザーは長年認識していませんでした。しかし近年、その問題が顕在化し「個人のプライバシー侵害につながる」とする見解が世界的に広まりました。
それを受けて、EUの「GDPR(EU一般データ保護規則)」、アメリカ・カリフォルニア州の「CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)」が施行されるなど、各国でCookie規制の流れが強まっています。
日本国内でも進む法規制
EUやアメリカの動きに追従する形で国内でも徐々に法整備が進んでいます。この2年間に大きく2つの法改正がありました。
・2022年4月施行 改正個人情報保護法
・2023年6月施行 改正電気通信事業法
⓵改正個人情報保護法
・「個人関連情報」という概念が新設。個人情報には該当しないものの、個人情報の取得につながり得る情報と定義されており、Cookieはこの個人関連情報にあたる。
・個人関連情報を第三者に提供する場合は、提供元によるユーザーへの事前の同意取得が義務付けられた。
⓶改正電気通信事業法
・一般になんらかの「オンラインサービス」を提供する事業者は規制対象に該当。
・該当する事業者がCookieデータを第三者に提供する場合、事前の通知、事前の同意取得もしくは拒否機会の提供、に対応することが義務付けられた。
プラットフォーマーの動向
国による法規制だけでなく大手プラットフォーマーも各社独自に規制の動きを強めています。
◆Google
Chrome:サードパーティCookieを段階的に廃止(2025年予定)
Google Chromeは日本国内で最大シェアを誇る(日本人の約2人に1人が使用)ブラウザです。
2023年12月に「2024年末までにChromeでのサードパーティCookieを段階的に廃止する」旨を発表。2024年1月4日から、全世界のChromeユーザーの約1%を対象にトラッキング保護機能のテストを開始していました。
しかし2024年4月23日に「業界、規制当局、開発者からの異なるフィードバックを調整することに関連する課題が継続している」ことを理由に、この延期を発表しました。この延期は実に3度目となり、一筋縄には進まない様子がうかがえます。
なおファーストパーティCookieについては、現時点で特に制限はありません。
◆Apple
Safari:サードパーティCookieを完全にブロック可能(2020年)
Safariは、iPhoneのiOSに標準搭載されているブラウザです。
Apple社のSafariでは、すでに2017年からサードパーティCookieが廃止されています。2017年にITP(Intelligent Tracking Prevention)」というトラッキング防止機能がSafariに搭載されました。
2020年9月以降は、SafariからサードパーティCookieがデフォルトで完全にブロックされています。
なおファーストパーティCookieについては、最大7利用日を経て削除されます。
◆Microsoft
Edge:有害トラッカーの規制を導入
EdgeはWindows(10以降)の標準Webブラウザです。国内シェアはChromeに次ぐ2位です。
Edgeでは既に追跡防止機能を搭載し、有害な恐れがあるトラッカーをブロックしています。すべてのサードパーティCookieが対象になるわけではないため、現状では一部のCookieへの影響に留まっているようです。
Cookieレスが及ぼす広告への影響
それではCookieが制限されると企業のマーケティングにどんな影響があるのでしょうか。ここでは主に広告領域における影響を4つご紹介します。
リターゲティング広告の配信ができない
リターゲティング広告に限った話ではなく、多くのサードパーティCookieを利用したターゲティングは大きく制限を受けることになります。
例えば、属性情報や行動履歴情報を組み合わせたデータを利用して、広告配信ターゲットを決定しているオーディエンスターゲティングがこれに該当します。特にDSP※やアドネットワークなどのサードパーティCookieをベースとしている広告媒体はターゲティングが困難になります。
※DSPについてはこちらのコラムで解説しています ↓
コンバージョン計測精度の低下
コンバージョン(CV)とは、企業側が目標として設定したアクション(商品購入、資料ダウンロード、会員登録など)をユーザーが起こすことです。このコンバージョンを正確に測定することは、デジタルマーケティングにおいて大変重要です。
Web広告のコンバージョン計測は、サードパーティCookieを利用して広告とコンバージョンの関連性を把握することで実現されています。よってCookieが規制されると、コンバージョン計測が正確に行えないケースが発生することになります。
アトリビューション分析精度の低下
アトリビューション分析とは、コンバージョンに至るまでにユーザーが接触した広告やメディアの貢献度を評価することです。
現代のデジタルマーケティングでは、1回の広告接触で即コンバージョンに至る単純なルートばかりではありません。広告接触後に自然検索で流入したり、リスティング広告の後にバナー広告にも接触したり、複数の接点を経てコンバージョンに至るケースがほとんどです。こういった多様なユーザーの行動分析、広告運用の改善にはアトリビューション分析がとても役立ちます。
しかしサードパーティCookie規制によって正確な分析ができなくなる可能性があります。
このように広告領域においては「ターゲティング」と「分析」の両面で多大な影響を受けるのです。
Cookieレス対策
こうしたCookieレスの状況下でWeb広告の成果を上げるためには、サードパーティCookieへの依存から脱却し、以下の対策を行うことを検討しましょう。
・Cookieを使わない広告手法の導入
・ファーストパーティデータの活用
Cookieを使わない広告手法の導入
ユーザーの行動データ(Cookie)に頼らないで利用できるターゲティング手法も存在します。
◆コンテキストターゲティング(コンテクスチュアルターゲティング)
コンテキストターゲティングとは、Webサイトのテキストの内容や画像などをAIが読み取り、Webサイトに掲載されているコンテンツの文脈に沿った広告を配信する手法です。
コンテキストターゲティングでは、ウェブページ内の情報を直接分析するため、Cookieによるユーザーデータは不要です。
Cookieレスであっても、自社サービスや商品に興味を持つ可能性のあるユーザーへ広告を当てることが可能です。
ファーストパーティデータの活用
規制対象となるのは、主にサードパーティCookieです。Cookieレスが進んでも自社サイトのドメインから発行するファーストパーティCookieは引き続き活用が可能ということです。よってこのファーストパーティデータをいかに有効に活用できるかがCookieレス時代の広告・マーケティングの成否を左右するポイントです。
Cookieレス時代においては、企業が自身のファーストパーティデータを活用することで、よりパーソナライズされたマーケティングを実現することが重要になります。
けれどファーストパーティデータ活用には課題も
とはいえ「それではファーストパーティデータを使いましょう」といって明日から始められるほど簡単なものではありません。ファーストパーティデータ活用には以下のような課題が存在します。
・データの収集・管理・活用にコストがかかる
・データ収集には時間を要する
・知識のある人材・ノウハウが必要
・データの規模と精度が十分に必要
・そもそも接点を持たない顧客のデータは得られない
・自社以外での行動データは得られない
…というように、活用のハードルが高いことがデメリットです。
Cookieレス時代に適応するおすすめの広告手法
上記のメリット・デメリットを踏まえて、ここからはCookieレス時代におすすめの広告手法をご紹介します。
JR東日本のファーストパーティデータを広告に活用できる「JRE Ads」
JRE AdsはJR東日本が保有する顧客データを用いて精緻なターゲティングを行えるWeb広告サービスです。
要するに、自社でデータを収集・活用するハードルが高いのであれば「まずは手軽に他社のファーストパーティデータを活用してみましょう」というご提案です。
JRE Adsは
・Suicaの移動データ(JR東日本の首都圏&東北エリア約600駅の乗降データなど)
・JRE POINT(JR東日本グループのポイントサービス)の利用履歴
・JRE MALL(JR東日本グループのECサイト)での購入履歴
・えきねっと(JR東日本の列車チケットのネット予約サービス)の列車予約履歴
などのJR東日本グループが保有する膨大な顧客データをターゲティングに活用します。
わかりやすいターゲティング例として、活用事例を一つご紹介します。
ニュース配信サービスのサブスク会員獲得のために、出張で鉄道を利用しているビジネスパーソンにピンポイントで広告訴求を図った例です。
Web上(オンライン)の行動だけでなく、新幹線改札利用などリアル(オフライン)の行動の確定データでターゲティングできることは、大きなポイントです。
この他にも、例えば…
オンライン:フィットネス、ジムなどのWeb上の行動・検索履歴
オフライン:Suicaの乗降履歴
を掛け合わせて、店舗近隣の駅・沿線利用者を狙うフィットネスジムの新規入会キャンペーンなどにも有効です。
このようにJRE Adsの活用事例は多数ございますので、JRE Adsについてさらに詳しく知りたい方はぜひこちらの資料をご覧ください。
まとめ
Cookieレスにより、企業のマーケティング、特にWeb広告施策には重大な影響が発生することはご理解いただけたでしょうか。このままCookieレスが進むと、ユーザーの属性や行動履歴を利用した広告配信が困難になり、効果計測にも制限が生まれます。
現在はCookieレス時代への移行期であり、日々さまざまな状況の変化が起こっています。プラットフォーマーの対応や法規制の動きにアンテナを張りながら、Cookieレスが本格化する前にCookieレスに備えたマーケティング体制の構築を進めましょう。
その第一歩として、手軽にファーストパーティデータを活用できる「JRE Ads」の利用もご検討ください。
「JRE Ads」にご興味のある方、もっと詳しく知りたいという方はこちらからお気軽にお問い合わせください。