【セミナーリポート】地方企業が支持され、愛され、長く売れ続けるための『ファンベース』という考え方

吉田 明生

こんにちは、ジェイアール東日本企画「キクコト」編集部です。
突然ですが、「地方の企業や自治体に今、必要な考え方は何か?」と質問したらどう答えますか?
その答えの一つが「ファンベース」なんです。

地域・地方企業や自治体の方を対象に、課題解決のヒントをお届けする「キクコト」オンラインセミナー。9月1日に開催された第2回は、スピーカーに(株)ファンベースカンパニー津田匡保社長をお招きし、地方企業が支持され、愛され、長く売れ続けるための『ファンベース』という考え方について、約1時間の講演が行われました。ライブ講演当日は、8つの自治体を含む約50の地方企業や団体の方が参加。質問なども多く寄せられ、熱のこもったやり取りが展開されました。目から鱗のキーワードの数々、ヒントいっぱいのセミナーの模様を、臨場感とともにリポートします。

●ファンベースという考え方について知りたい
●地方企業や自治体が今後どのように生き残っていくかヒントが欲しい
●ファンベースを実践してみたい
という方は、必見です!

セミナーを見逃された方のために、詳しく内容を載せていますので、

ぜひこの機会にご一読ください!

   

   

セミナー主催社のジェイアール東日本企画「キクコト」とは⇒ https://online-soudan.jeki.co.jp/



冒頭で、本セッションのファシリテーターを務めた「キクコト」の脇谷将史から、当セミナー主催者(株)ジェイアール東日本企画の紹介と、セミナー開催趣旨を簡単に説明した後、講師・津田社長が登壇。


スピーカー:株式会社ファンベースカンパニー代表取締役社長/CEO 津田匡保氏




まず、ご自身の経歴や事業紹介をする中で、地域・地方企業や自治体からの相談が最近は多く寄せられるようになったことにも言及。視聴者の耳目がより集中したところで、主題となる「ファンベースの定義」や「ファンベースの考え方」が生まれた時代背景などについて解説されました。


ファンベースとは?


津田氏曰く「『ファンベース』とは、ファンを大切にし、ファンの目線で施策を考え、もっと好きになってもらうことで中長期的に売上や事業価値を高め、ともに成長するという考え方であり、ファンを使って利益を追求するようないわゆるテクニックではない」とのこと。「だからファンを“刈り取ったり”“囲い込んだり”、ファンの嫌がるようなことはしません」(津田氏)

では、ファンとはどんな人を指すのか?について、

「いわゆる商品やサービスなどの機能だけに惹かれている人ではなく、企業やブランドや地域が大切にしている価値を支持してくれる人。大切にしている価値とは、理念やミッションなどのことです」(津田氏)

と、明確な定義づけがありました。



さらに、企業やブランドのファンというと、購買者や利用者だけを想像しがちですが、津田氏は「購買者などだけでなく関係者(取引先の会社、OB/OG、地域のコミュニティや人、地域を好きな人、パートナー企業)も含めて大きく捉えると、ファンベースとしてできることもたくさんあります。特に地域密着であれば、多くのファンを作っていけるはず」とフォロー。


なぜ今、ファンベースなのか?  

次に、なぜファンが大切なのか? その背景を4つの観点から、ひも解かれました。


①売上を支えているのは、ファンであるという客観的な事実

津田氏によれば「いわゆるパレートの法則では、2割の上位顧客(コアファン)が売上の8割を支えており、これはだいたいの業種にあてはまる通説」とのこと。

「企業が成長するには、新しい顧客を獲得しなきゃと思いがちですが、売上の8割を支えている既存顧客のライフタイムバリュー(LTV:顧客生涯価値)を上げていく、2割の顧客の底上げを図ることにも目を向けましょう」(津田氏)と、ファンベース的発想の転換を呼びかけました。




②情報過多と2極化により、新規顧客を獲得し難い時代



「ネットの普及とともに爆発的に情報量が増え、現在世界中の砂粒と同じ数の情報が流れているといわれています。我々は以前と桁違いの量の情報に囲まれていて、これまでのようなアプローチだけでは、企業が届けたい情報が生活者に届きにくくなってきた」(津田氏)と、新しい顧客の獲得が難しくなっている問題点を指摘。


また、情報の受け手の2極化が進む現状から、「自分から情報を取りに行く感度の高い人には、他の情報に埋没して届きにくく、低い人は検索もあまりしないしSNSなどの利用頻度も低い傾向があるので、デジタル手法などがなかなか通用しにくい」(津田氏)と2極のどちらにもアプローチが難しい時代と分析されました。


③情報が多すぎて選べない時代だから、類友からの言葉が効く



情報が多すぎて何を選べばいいのかわからない時代だからこそ、類友からの言葉が効くと津田氏は結論づけます。

「データが示すように、人は有名人やインフルエンサーより身近な家族や友人からの情報を信頼します。今コロナで在宅ワークをしていて、外に飲みにも行けないし家で何か美味しいものでも食べたいなと思った時にFacebookを覗くと、仲のいい友達がお取り寄せをしていて、これ美味しそう!と思って買う。『在宅あるある』ですよね」(津田氏)

友人はそんなに情報通でもないのに、なぜ友人の情報を信頼するのか?について、津田氏はシンプルに「価値観が近いから」との答え。

「その価値観の近い友人が愛用しているモノやサービスを熱をもって薦めてくれたら、私もファンになる可能性が高い。【価値観が近い×熱意のあるおススメ】これこそが“類は友を呼ぶ”最強の伝え方です。ファンは新規顧客も増やしてくれるんです!」(津田氏)と持論を展開。


④1人のファンでも、熱が伝われば、加速度的に広がる時代



ファンが類友に薦めるくらいでは、そんなに数が増えないのではという疑問に対して、「1人の熱いファンの力は馬鹿にできません」(津田氏)と一蹴。

フォロワーわずか50人(10/1現在)のある客が「美味すぎて泣いてる」とTwitterに投稿したことがきっかけで28.2万人(10/1現在)のいいねへ拡がったコロナ禍のフルーツサンド店の例をあげ、「 結果的に大きなムーブメントになったけど、最初の1人が熱いファンだったことがポイントです。みなさんがいろんな事業を立ち上げる時にも、最初の数十人にどれだけ熱いファンになってもらえるかが大切です」(津田氏)と、コアファンやファンを大切にすることの重要性を強調されました。




地方発、ファンベースのおススメ実践とは?

ファンベースの考え方を企業や地域でどう活かすかについて、2つの実践ポイントを紹介。

①自分たちの「情緒価値」「未来価値」を規定し、発信する。

「いわゆる機能価値は必要なことだけど、追いつけ追い越せですぐ他社に真似されてしまう。ホントに好きになってもらいたいのは、企業や地域が大切にしている価値、つまり情緒価値や未来価値の部分。商品やサービス以外の部分で、生活者には見えづらいですが、これらをどう伝えるのか」(津田氏)


ここで津田氏は、著書『ファンベースなひとたち』で取り上げている、今治タオルの企業事例を紹介。

「イケウチオーガニックは、2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る、というアグレッシブなビジョンを掲げて、環境に配慮したチャレンジを続けておられます。こういう話を聞くだけで、1ファンとして心が躍りますよね。まさに未来価値です。またタオル職人の方に焦点を当ててHPで紹介し、生活者に見えづらいところを見せている。ファンを呼んで会長自ら工場見学を案内したり地域をまわったり、こんなふれあいから情緒価値が生まれて応援しようという流れになる。そしてファンの人たちが、周りの類友にイケウチのタオルを紹介するなどして、ファンの基盤ができ着実に成長されています」(津田氏)

(詳細に興味がある方は、イケウチオーガニックHPへ⇒https://www.ikeuchi.org/


②イイトコロを伸ばす「ファンミーティング」の開催

もう一つの実践ポイントとして、ファンが愛しているイイトコロを知るためのファンミーティングの開催を推奨。

「悪いところの改善も大事だけど、イイトコロを伸ばすのがファンベースの基本的な考え方。イイトコロはファンが一番知っています。会社の中にいると自分たちのイイトコロにあまり気づかないので、熱狂的なファンに愛しているツボを聴く。これがファンミーティングと呼ぶ会で、ファンベース実践の第一歩です」(津田氏)


ただし、話の聴き方には細心の注意を払うべきと、秘訣の一端を伝授。

「企業側がファンに直接質問するのではなく、10人くらいの濃いファン同士で本音のトークをしてもらい、そこに寄り添って共感的に傾聴するという手法がお勧めです」(津田氏)


「やりっぱなしではなく、そのファン同士の発言をすべて記録してレビューすることが大事。ファンベースカンパニーでファンミーティングをお手伝いする際にはファンの発言を分析してファンのツボを導き出し言語化し、ファンにさらに愛される企画までやります。それくらいコアファンの声には価値があるんです」(津田氏)と、さらに踏み込んだ手ほどきがありました。


補足として、ファンミーティングはインナー効果もあると津田氏。
「自分たちがこだわって作ってきた商品やサービスについて、熱く語ってくれるファンに会うと、誰だってうれしいですよね。ファンミーティングで泣き出される社員さんもたまにいらっしゃいます」と、ファンに会うこと=社員のモチベーションアップにもつながることが共有されました。


メッセージ

最後に、困難な時代に向けて津田氏からのメッセージでセミナーは締めくくられました。

「今コロナで移動が制限され、人と人のディスタンスはできましたが、逆に以前よりも人は人を感じ、人を欲し、人を見ていると感じます。だからこそ、企業も地域も人と誠実に向き合っていくことがより重要になりました。ファンベースの考え方は、時間と手間がかかりますが、そのぶんファンとの関係も長続きします。

自分たちが提供するものが受け入れられ、愛されていることを実感できた時ほどうれしいことはないですよね? 私もそこが仕事や人生の喜びであると思っています。地道な取り組みですが、それがきっと人々を惹きつけ、たくさんの笑顔を生むと信じています。本日は、ご清聴ありがとうございました」



質疑応答

講演終了後、津田社長と弊社・脇谷によるトークセッションがありました。

その中で出た疑問、視聴者からの質問と津田社長の回答を一部ご紹介します。


Q:ファンベースの考え方を社内や上司に理解してもらうのは、なかなか大変では?

A:よく聞かれる質問です。新規顧客の獲得か、ファンベースか、みたいな二者択一ではなく両輪で回すことをお勧  めしますね。新規顧客獲得も必要なことです。ただ、既存顧客にも目を向けると新たな成長の機会も得られるということですね。既存顧客から学んだことを新規顧客獲得に活かすこともできます。いかに限られたリソースを配分していくかという考え方でいいと思います。


Q:ファンベースというとBtoCのイメージですが、BtoBでも当てはまりますか?

A:たとえば、広告やマーケティング担当者も横のつながりがけっこうあって、会社の評判は聞こえてきます。そういう意味では目の前の顧客をいかに大切にできるか、好きになってもらえるかはBtoBでも大事ですし、ファンになってもらえれば横に評判を広げてもらえますよね。


Q:漠然とした質問ですが、地方企業がアフターコロナに備えることは?

A:流れが変わる時に備えて今から準備をすることも大事だと思います。地方に以前よりも人が来にくい現状ですが、こんな時でも来てくれるファンが愛してくれている価値を知っておくとか、今後人が来る時に備えて準備しておく良い機会だとも思いますね。


Q:ファンベースにおいて、目標設定やKPIの作り方は?

A:顧客の購買データだけでなく、「好きかどうか」の感情データを合わせてみていくことが大事だと思います。今日たくさん買ってくれていても、別に好きではないかもしれない。そうすると明日には違う商品を買ってしまうこともあるわけです。なので、本当に感情で好きでたくさん買ってくれてもいるような顧客がどれくらいいるかをみておくことがビジネスの肝になると思います。ですのでファンベースカンパニーでは、感情を可視化する「ファンベース診断」、ファン度を上げる施策を打ちながらファン度もトラッキングできる「Fan道」というサービスを開発しました。特に地方企業に支持されているサービスなので興味のある方は当社のHPをご覧ください。

※ファンベースカンパニーのHPはこちら↓

https://www.fanbasecompany.com/service/index.html

 
 
Q:オンラインでのファンミーティング進行が難しく、コツを教えてください。

A:オンラインでいきなり知らない人同士で話し合えって、けっこう恐怖ですよね(笑)。だからまず緊張をできるだけ解く「アイスブレイク」が大事。簡単なクイズをやるとか、進行役の社員が自社愛をさらけ出して自己紹介するとか。あとは中継をつないで会社のとっておきの場所を見せるとかオンラインだからできることもたくさんあります。


主催社「キクコト」まとめ地方企業こそ今、ファンベースを

講演を拝聴して思ったのは、全国紙や全国ネットのテレビCMなど、大きな網で広く顧客を囲い込んでいたマス広告主流の時代には、『ファンベース』のような考え方はなかなか発想されなかっただろうなということ。しかしSNSなどのシェアコミュニケーションの隆盛で、口コミによる情報の伝播力が無視できなくなった今日、いわゆる芋づる式の優良顧客(ファン)獲得手法は今後ますます注目されるでしょう。その視点で言えば、広告の投入資金に限りがある地方企業にこそ、自らの価値を高め、身近なところから始める『ファンベース』の考え方は、非常に有効ではないでしょうか。


当社でも、ファンベースカンパニーと協業して課題解決に取り組むことが可能です。興味のある方は、当社運営の広告施策ご提案サービス「キクコトプレゼン」にお問い合わせください。

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